igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ウルトラマンルーブが構造的に抱える諸問題

 皆さんこんにちは、igomasです。最近記事で少しずつ進めている、ウルトラマンニュージェネレーション考察記事。今回は、2018年7月より放送された6作目、「ウルトラマンR/B」の考察です。
 ルーブは、一部人気もありますが、まぁ全体としては否定的な意見が多く見られる作品で、構造的な部分や見せ方に欠陥が目立ち、放送当時から色々言われていた印象です。私igomasも同意見で、好き嫌い以前の話として、ニュージェネレーションの中では一番の問題作ではないかと思っております。今回は、ルーブの抱える問題点を、一つ一つ考えていきたいと思います。なお、本記事は否定的な内容を含みます、ご了承ください。

 

 

テーマである「家族」を描けていない

 作品というのは、テーマがなくては始まりません。まぁテーマが絶対にないといけない、ということはありませんが、作品を支える一本の強固な軸が定まっていると、作品の方向性やキャラの行動が合理性を持ちやすく、作品を良い方向に運ぶことに変わりはありません。
 今作のテーマは、「家族」であると、放送前に告知されました。ウルトラシリーズでは「家族」がテーマとなる作品は今までほぼ皆無で、発表されたときは「へぇ、家族がテーマか、新しいな」と驚いたものです。しかし、驚くと同時にかなり懸念もありました。というのも、ウルトラマンのような特撮作品にとって、「家族」をテーマにするというのは非常に大きな賭けだからです。
 怪獣特撮は、市街地や農村など、人間の居住区に怪獣が出現します。この「怪獣」という存在はかなり丁重に扱わなければならない要素で、怪獣という存在そのものが、実にファンタジックというか、元々あまり現実的でない要素なんですよね。そんな存在が、実際に現れたように撮るのが怪獣特撮の一種醍醐味であるはずです。であるならば、そこには怪獣の非現実性と人間をつなぐ、リアリティ要素が必要になってくるのです。そのためには、怪獣に対し、国が、国民が、人類がどう反応するか、というところを描かなければいけません。さらに、ウルトラマンというのは怪獣よりはるかにファンタジー路線であり、なおのことリアリティによる補強が求められます。そこで、怪獣、ウルトラマンに対する人類の反応、という役割を、防衛隊という形に与えることで、ウルトラシリーズは続けてこられました。
 それを、防衛隊を撤廃し、主人公のいる家族に焦点を当てる、というのは非常にリスキーなわけです。なぜならば、巨大生物と一般家庭をつなぐリアリティを確保するのは、至難の業であるからです。たった一つの家庭が怪獣に対して思っている思いが、国民全体、人類全体の総意とは限りません。やはり巨大生物と一家族では、スケールに差がありすぎて、無理があるんじゃないかと思っていたわけです。
 また、特撮ということを抜きにして、「家族」をテーマにした作品を考えてみると、世界にごまんとあります。家族に焦点を当てるなど、ドラマの定番中の定番であり、すでに語り尽くされたテーマです。定番といいながらも「家族」というテーマは描くのが非常に難しく、ドラマプロの制作陣をもってしても、正直微妙だな、と思う作品ばかり。こんな難しいテーマを、特に描くのに無理がある特撮畑でやろうとするのは危ない決断であります。実際制作陣も、かなりチャレンジングな仕事にしようと思っていたらしいですね。
 さて、そんなこんなで始まったルーブですが、ここで開幕早々最大のミスが起こります。それは、母親がいない、ということ。家族をテーマにすると言っておきながら、家族の大事な一員が欠けているというのはどういうことなのか。大問題です。そりゃもちろん、世の中には男手一つで育てました、みたいな家庭が沢山あるのは承知の上ですが、初めて家族を扱うのに初っぱなからそんな変化球でどうするんだと言いたくなります。そもそも、それだったら他の家族をゲストで出すなどして、母親のいる家庭との対比をちゃんと描くとか、そういうことをしなければいけません。「家族」というのは、本来父、母、子によって構成されるものであるはず。「家族」を描きたいなら、父、母、子、全部描ききるべきです。
 しかも、この家庭には湊アサヒという、正体がクリスタルの妹がいます。こんな家庭を示されて誰が共感するのでしょう?まだ母親がいない家庭というのであれば現実にもいますが、家族の一人がクリスタルです、って家庭があるわけないでしょう。「家族」というテーマは語り尽くされたテーマだ、と先程言いましたが、ルーブ制作陣もそれを気にして、新しい家族の描き方をするために、今までにない家族構成にしようとでも思ったのでしょうか。もしそうならそれは逃げです。語り尽くされたテーマを自ら選んだのですから、家族構成がありがちになってもそれは仕方がないじゃないですか。その分キャラクターで魅せればいいだけの話。
 結果、家族をテーマにするのに、父一人子三人うち一人クリスタルという、前代未聞の家族構成が誕生してしまったわけです。家族、というのは視聴者にとって最も馴染み深い部分でありますから、視聴者の共感を得なければならないわけですが、家族構成の時点ですでに誰からも共感されない下地を作ったのは大きな問題。
 兄弟を描くのであれば、兄弟喧嘩もあっという間に終わったり(しかも、兄弟が対立していた根本的な原因は解決されないまま)しないで描いてほしいし、仲直りの仕方も、やる気の出し方も全部妹任せで、丁寧に書こうという姿勢が感じられなかったのは残念なところ。それから家族、がテーマになるということは当然主人公たちの普段の服装は隊員服ではなく私服になるわけですが、私服がいつもと違う回でも変身バンクではいつもの服、と、ここら辺の雑さも駄目なポイント。家族を描くなら、一般人に焦点を当てるなら、色んな私服のパターンで変身バンクを取っておくくらいの配慮はできないのでしょうか。
 父親というのも、イマイチ描けていたとは言い難いです。湊ウシオに焦点を当てた話というのはほとんどなく、メフィラス星人回ぐらいなものでした。家族4人なのにどうして1話だけなのか。その1話ですら、父親としての良さというより、湊ウシオの良さみたいな話になっていて、微妙。他の話でも父親らしさというのは一応散見されはするのですが、丁寧に家族を書こうという思いがあるならもっと父親らしいシーンを描けたはず。親はちゃんと描かないと。子供に焦点が当たりすぎると、それはもはや子供たちの物語で、家族の物語ではなくなってしまうのですから。
 後半になってようやく母親が登場するのですが、時すでに遅し。かなり終盤に入ってしまっていて、美剣サキをもっと描かないといけない、アサヒの正体をもっと言及しないといけない、っていう大事な大事な部分で母親が数話を全部持って行ってしまい、ルーブの大事な部分を描く余裕がなくなってしまっていました。それなら母親最初から出してたら良かったのに、後半になってから焦らなくても良かったのに、と思わざるをえません。
 結局、家族を全然描ききれなかったものだから、最後の最後になって、「これは、俺たち兄弟の物語、これからは、家族の物語」と、作品のテーマはやっぱり家族じゃありませんでした発言で、土壇場の逃げを発動。これには唖然として開いた口が塞がりませんでした。
 家族、というところで補足すると、この当時アニメのグリッドマン放送にあわせて、電光超人グリッドマンが全話放送されており、そこで非常にうまく「家族」が描かれていたんですよね。電光超人グリッドマン自体は、家族がテーマ、というわけではないのですが、主人公三人に藤堂武史の四家庭、それぞれの家族の形が秀逸な描かれ方をしていました。この「家族」を見事描ききった作品を再放送している横で、「家族」をテーマにした現行作品が全然描けていないのを見ると、情けなくて仕方がありませんでした。

 

愛染マコトの扱い

 ルーブ批判で一番言われているのは、愛染マコトの扱いですね。今作は、前半は愛染マコト、後半は美剣サキと、メインヴィランを途中で変えています。愛染マコトはオーブが大好きで、オーブがらみの内輪ネタが多く、オーバーリアクションな感じで、とてもコメディチックなキャラクターでした。対して美剣サキはロッソとブルにまつわる、物語全体にまつわる敵で、兄がロッソとブルの前任者でルーゴサイトの攻撃により亡くなった、という暗い過去を持つ、どちらかというとシリアスなキャラクター。美剣サキと湊アサヒの関係が描かれ、湊アサヒに物語の焦点が当たっていく上でのキーパーソンでもありました。
 愛染マコトの批判として、「内輪ネタが過ぎる」「だいぶ後半まで登場しすぎ」「何のためにいたのかわからない」といった意見が見られます。内輪ネタが過ぎる、というのは、オーブ関連のことですね。オーブネタに尺を取りすぎて、ルーブならではのものが見られなくなったこともあり、内輪ネタが多すぎるとよく批判されてますね。愛染マコト、オーブネタに極ふりするのは、個人的には別にまぁ面白かったのですが、考えてみると、愛染マコトが敬愛するウルトラマンがオーブである必要なかったですよね。別に他のウルトラマンに置き換え可能ですし。ネタにしやすかったから、という理由だけで入れたのならちょっと甘いです。オーブネタを入れるなら、もっと根幹部分でオーブネタを使わないと。フレーズだけとか、表面だけすくっても、上手いネタにはなりません。そもそも、むしろ物語構造上、過去ネタを入れるべきはルーブよりジードであり、前作であれだけ過去ネタを入れないようにしようとして今作で過去ネタを入れすぎるのは、どういう心の変化があったのでしょうか。
 だいぶ後半まで登場しすぎ、という面に関してですが、これは視聴者のウケが良すぎた、というところの影響も多少あるのかもしれません。ないのかもしれません。細かな撮影スケジュールを知らないのでこればかりはなんともいえませんが、ともかく愛染マコトが人気であったことは事実でしょう。物語上あまり関わりの少ない愛染マコトがキャラが立ってて、物語上重要な美剣サキがさほどキャラが立っていない、というのは難しいところ。美剣サキは、コメディ色の影響で、キャラが立っていないというか、キャラがぶれすぎた、というのもあるかもしれません。謎の存在、とするならもっと強敵感を出すとか、なやめる人、とするならそこの魅力をもっと出すとか、美剣サキをもっと丁寧に描けていれば話は変わってきたのでしょうが、愛染マコトのキャラが強すぎて、しかも登場も後半まで倒れ込んできて、ずっと愛染マコトに引っ張られすぎていたように思われます。
 何のためにいたのかわからない、について。とにかく色々と荒らし回って去っていった愛染マコトですが、結局のところ彼との戦いで湊兄弟が得たものはほんのわずかで、物語を大きく動かすにはあまりに本軸のストーリーラインに絡まなさすぎた、という問題もあるでしょう。あれだけ引っかき回して、「君たちはウルトラマン失格だ」とかなんとか誤った価値観で兄弟を否定しておきながら、結局最後までその価値観は歪んだままで、彼が真に望むウルトラマン像を全く実現しないままフェードアウトしてしまいました。ファンによく期待される、最後に出てきて改心し一人のウルトラマンとして共闘するとかいうシーンが有るか否かは、見せ場云々の問題ではなく、彼の存在意義に関わる問題だと思うのですが。本軸に絡めば、十分レギュラーキャラとしての本分を果たせたかもしれませんが、本軸に絡まないのなら1話のゲストを数話薄くのばして登場させたのと何ら変わりません。
 これはまた別記事で、ニュージェネレーション悪役考察としてまとめますが、愛染マコトって、数話登場した割に全然書ききれてないんですよね。彼が自信をチェレーザだと名乗る回の監督コメントにて、監督が「かなり尺を使って愛染マコトをしっかり描いた」とおっしゃっていましたが、まるで描けていません。そもそもチェレーザがオーブに対してなぜそこまで偏った愛の仕方でいるのか、そんな根本的なところを抜かしているようでは、しっかり描いたとは言えないでしょう。悪役の話になると止まらなくなるので、この辺で…

 

ウルトラマンってそもそも何なの?

 24話での迷言「俺たちはウルトラマンだから、この星に生きとし生けるもの、全ての命を救うのが使命なんだ」に代表される、ウルトラマンだから、ウルトラマンってのはこういうものだ発言。作品構造上色々な問題が凝縮されているのが、この部分です。いやそもそもあなたたち、ウルトラマンの何を知ってるの?湊兄弟って、他のウルトラマンに会ったことないよね。オーブのこと、愛染マコトの曲がりに曲がった解釈をちょっと小耳に挟んだくらいだよね。ウルトラマンを何も知らない人にウルトラマンのなんたるかを語られても、という感じが否めません。なんとなく小耳に挟んだ情報からウルトラマンってのはこういうもんだと自分のウルトラマン像を押しつけるのは、他でもない愛染マコトと同じです。せめてそこは「ルーブだから、俺たちだから」で貫き通すべきで、過去作で視聴者の頭の中にあるウルトラマン像に頼る演出はいかがなものか。

 

怪獣の扱いの雑さ

 本作における怪獣は、いわゆる召喚獣という扱いで、都合の良いときに呼び出して、自分のやりたいことができたらすぐ引っ込める、みたいな扱いをされていました。そもそも召喚獣ならなんでもいいわけで、なんかとりあえずスーツあるからこいつ、感が否めませんでした。その怪獣ならではの攻撃法、というのも描写しきれておらず、特撮面でも非常に難ありの今作。本作で特撮が光るところと言われて思いだすのは、駐車場とか、セットにうつる看板とか、炎上しながら走る車とか、そういうものばかりで、怪獣の直接的な特撮で良かった、みたいなところがなさ過ぎるんですよね。
 召喚獣として、振り切った面白さを突き詰めればそれはそれでよいとは思うのですが、全然そんなこともなく、その雑さは加速度を増していきます。特に酷いのはゴモラ回で、いきなり実は地球には怪獣がいて、とかやられても唖然とします。召喚獣ばかりつかって都合の良いときだけ一回普通の野良怪獣も出しとくか、という意図が見え見えで、ゴモラが可哀想で仕方がありません。
 極めつけは対怪獣拘束システム。これはもう、なんだって感じですよ。これがあることによって、劇中に登場する全ての怪獣、ウルトラマンの格が大幅に下がり、その巨体だけで脅威のはずの怪獣、ウルトラマンが、描写によりその脅威を増すどころか脅威度が0に下落するという稀有なケース。ルーゴサイトも結構長いこと拘束されていて、ラスボスの面子丸つぶれです。ウルトラマン関係で言うと、湊母が変身できなくする装置をさらっと開発していたりして、人間の技術で途端に止まるウルトラマン、怪獣、ほんと見ていてつらいです。

 

最後に

 色々と問題点を書いていきましたが、ルーブ、良いところもあります。様々なところで書いてはいますが、まず客演ウルトラマンとして最適であること。話し方の個性は結構確立できているので、客演時のやりとりは映えますし、ちょっと緩いムードを作り出すことができます。他のウルトラマンと実際ふれあっていけば、どんどん魅力的なキャラになっていくと思います。
 愛染マコトのキャラに埋もれがちですが、湊アサヒの変顔芸も結構光るものがあり、そういう所々での魅力ってのはある作品だとは思います。怪獣の造形で言うと、グルジオキングがなかなか好みで、描写面でも、爪をこすり合わせるときの音とか非常に気に入っています。
 今回は構造的な問題をかいつまんで説明させていただきましたが、あくまでこれは一個人の意見であり、皆さんはどう考えていらっしゃるのか気になる部分ではあります。是非コメント残してみてください。
 それではこの辺りで、igomasでした!