igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ウルトラマンゼロに学ぶ息子設定

 皆さんこんにちは、igomasです。今回は、前回記事で予告させていただいた、ウルトラマンゼロに学ぶ設定論シリーズ第一回となっております。

igomas.hatenablog.com ウルトラマンゼロは、M78星雲ウルトラの国に現れた超大型の新人で、かれこれ10年以上にわたって大活躍を見せるウルトラマンであります。新作ウルトラマンテレビシリーズ(後のニュージェネレーション)が始まるまでの間も、ウルトラマン列伝、新ウルトラマン列伝の番組進行役や、映画、オリジナルビデオ作品、ショートアクションドラマなど、様々なメディアでの活躍を続け、円谷という会社をずーーーっと支え続けてきた存在であります。そんな事情もあって、私igomasも非常に愛着のあるキャラで、円谷のキャラクターの中でも一目置いています。

 ウルトラマンゼロは、ウルトラ50年以上の歴史をこれでもかと詰め込んだ、設定のオンパレードみたいなウルトラマンで、他キャラとの関わりがまぁ多いんですよね。それが非常にファンに受けたこともあり、近年ではウルトラマンに設定を盛り込みまくることが、一種ブームとなっています。

 それにしても、さすが長きにわたって、たった一人で円谷を支え続けたゼロ。格が違います。彼の誕生に至るまでに、ものすごい熱量が込められており、それゆえ設定などの描かれ方も、他のウルトラマンとは雲泥の差。本当に、愛されているキャラなんですよね。

 ということで、ウルトラマンゼロと後続のウルトラマンたちを比べてゆき、近年のウルトラマンが抱える「設定マシマシによってかえって自分の首が絞まる問題」を、できるだけ丁寧にひもといてゆこう、というわけです。それでは、やっていきましょう!

 

ウルトラマンゼロの設定その1:息子設定》

 ゼロの最も重要な設定は、「セブンの息子」であることでしょう。この息子設定は、近年の作品だとジードやタイガで使われ、息子設定の原点とも一見思えますが、考えてみれば息子設定が一番最初に使われたのはそう、ウルトラマンタロウですね。

 ウルトラマンタロウは宇宙警備隊大隊長ウルトラの父を父に持ち、ウルトラの母含め、タロウ一家がたびたび登場しました。タロウが近年の息子作品と根本的に異なるのは、父親がかなりの話数かけてじっくり語り尽くされたキャラではない、ということ。タロウのキャラクター像を描きながら、ウルトラの父ウルトラの母のキャラクター造形も行っていくことで、キャラブレを防ぐことができました。近年のウルトラマンは、父親のキャラが確定しているために、ちょっとそのキャラがしなさそうな行動をさせてしまうと、途端にキャラブレ甚だしくなります。これが、難しいところなのかもしれません。

 ゼロは、セブンの息子です。セブンというと、レオの師匠として厳しい面があったりしましたが、ウル銀でも、息子に対して甘やかすのではなく、厳しく接する姿が描かれていました。その他言葉の端々から、セブンらしさも見せてくれていて、ちゃんとセブンの息子、という要素を描けていると思われます。ゼロというウルトラマンの造形も本当に素晴らしく、近年まれに見る、欠点のない完璧な造形に思われます。セブンを彷彿とさせるスラッガーやアーマー、カラータイマーその一つ一つが、セブンの息子らしさに繋がっており、秀逸であります。またゼロは、後のベリ銀でのセブンとの共闘や、ダークロプスゼロ外伝でのにせウルトラセブンとの戦い、さらにはオーブファイトのキングジョー戦など、何度も何度も丁寧に息子設定をいかした演出を重ねています。この辺りが、後の息子設定作品と大きく一線を画するというか、上手い部分ですね。

 ジードは、闇のウルトラマン、ベリアルを父にもつウルトラマンでした。ベリアルというキャラは非常に扱うのが難しいキャラで、というのも劇中で大きな変化が起こりすぎているからであります。初登場のウル銀では、たった一人でウルトラの星光の国を壊滅させ、ギガバトルナイザーを用い100体怪獣を復活させます。この100体の怪獣は、半ば強制的に操っていました。ゼロに敗北してからは、100体の怪獣を合体させベリュドラとなりますが、怪獣の反逆にあい制御がきかず敗れます。次のベリアル銀河帝国ではワンマンから転身し、部下を引き連れ巨大な帝国をつくり、宇宙を支配していきます。このときにはすでに、部下から信頼を集めるカリスマ的存在へと成長し、ゼロを苦しめます。ゼロファイトになると、ダークネスファイブという部下ができて、以降ウルトラマン列伝、新ウルトラマン列伝番組ないでは、コミカルな面も見せるようになってきました。このように、ベリアルはいくつもの側面を持った非常に重厚なキャラ造形をなされており、このベリアルを父に物語を展開するというのは、少し難しいことに思えました。実際、ジードのメイン監督である坂本監督(ウル銀の監督)も、どちらかといえばウル銀のころのベリアルを描いていた印象で、さすがに今までのベリアルの物語すべてを踏襲したベリアル像は描き切れていなかったように思えます。ベリアルの息子、という要素をどうさばくかですが、ジードはどうも、ベリアルがどの程度悪なのかを理解しないまま戦っており、少しくらい小耳に挟んではいるのでしょうが、「どれくらい脅威か本人が分かっていない」のでは、その強大なる悪からの脱却というところで盛り上がりが薄れてしまいます。もちろんベリアルの息子という境遇ながらも、常に明るくふるまう主人公像は確立しており、その辺りの、ベリアルの息子としての描写はなされていましたが。ジードの息子設定は難しいところで、またどこかで語りたいですね。

 続いて、タイガ。タイガは、タロウの息子でありました。タイガは劇中での「タロウの息子」描写が非常に乏しく、というか皆無で、タロウ怪獣もわざと登場させないようにしているそう(しかしサメクジラは登場するという…徹底するならそういうところは徹底してほしいものです)。近年の息子設定が一番崩壊してしまったのはおそらくタイガかなと思っています。父が別にタロウでなくてもよい、となってしまうと、強固なアイデンティティがまるでなくなってしまい、本当にただ空中に浮いた「設定」だけある、ということになりかねません。いろいろな感想記事を見ていると、「視聴者は、タイガをタロウの息子として見ていて、タイガという一人の独立した戦士として見ていない」という指摘がありましたが、本来息子設定とはそういうものであり、息子設定が上手く活用されるのではと変な期待を抱かせるくらいなら、設定だけの息子ウルトラマンを無闇に作ってほしくない、というのがファンの正直な意見ではないでしょうか。「あぁ~あのウルトラマンに息子ができる時代になったか、感激」と思って蓋を開けてみれば、親子にさほど共通点がないってのはちょっと悲しすぎやしませんか。

 このように見ていくと、少なからず息子設定の描写は年々無理がある方向へちょっとずつ進んでおり、翻ってみるとゼロはほんと丁寧に丁寧に、これでもかと何度でも息子設定の補強に望んでいるといえるでしょう。ジードは父親をすでに倒してしまったので、ベリアルを復活でもさせない限り息子設定補強がしづらいというのは難しいところ。タイガは、映画も残っていますから、どんどん息子設定を活かす方向に持って行ってほしいところです。

 というわけで、息子設定に関しての考察でした。近年、各々のウルトラマンが関連しあうようになってきて、非常に多彩なキャラをもったウルトラマンが、多数登場しています。その息子を生み出してしまえば、父親のキャラ・かつての活躍・思想全部ひっくるめてその新キャラに落とし込まなければならず、時代が進めば進むほど、息子設定というのは難しくなってくるのかもしれません。皆さんはどう考えますか?

 それでは、また次の記事でお会いしましょう、igomasでした!