igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ウルトラマンゼロに学ぶデザイン論

 

 私のパソコンには、書きかけの記事が山のように溜まっておりまして、書き始めようと思ったものの続きを考えあぐねて出していない記事や、そもそも記事を書くまでの作業量の多さに疲弊して途中でリタイアした記事など、その内容は様々ですが、最近時折そうした記事を掘り起こしては、少しずつ書き足すということをしています。今回はその一つ。

 以前、ウルトラマンゼロについて触れ、彼がいかに「設定」の優れたウルトラマンであるか、という記事を出したことがありました。今回はその第二弾。ウルトラマンゼロの「デザイン」の素晴らしさについて、語っていきたいと思います。

 

igomas.hatenablog.com

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 なお、私igomasは、特にイラスト関連のプロというわけでもありません。ほんとド素人なので、あまり詳しいことは語れていないとは思いますが、素人目に見ても、ウルトラマンゼロがどれだけ秀逸なデザインかということが伝われば、幸いです。

 ゼロは、時代を変えたウルトラマンの一人、と賞されることが多いですよね。10年以上前の初登場時から、人気はかなりのものでしたが、今現在に至ってもその人気は衰えておらず、日本のみならず中国や、世界でも大人気のウルトラマンの一人です。初代ウルトラマン、平成最初のウルトラマンティガ、という錚々たる「時代の節目を担った大御所」と並んで扱われることも、最近ではたびたびあります。本記事では、この二人のデザインと合わせて見ていきたいと思います。

 初代ウルトラマンは、かの有名な成田亨氏によってデザインされ、原案ではシンプルさを追求した造形となっていました。この原案は、現在我々がよく目にする「ウルトラマン」のそれではなく、カラータイマーや、目の部分のスーツアクター用の覗き穴などは、描かれていませんでした。現在各所で予告編が公開されている、「シン・ウルトラマン」の造形が、現在最もこの原案に近いデザインとなっています。

 先程、原案にカラータイマーや、スーツアクター用の覗き穴はなかった、と言いましたが、これらはスタッフによって追加された要素であります。もちろん、単体作品として見れば、カラータイマーや覗き穴など、シンプルからかけ離れたものを追加するのは野暮だったのかもしれません。しかし、その極限まで追求されたシンプルさに、アクセントとしてのカラータイマー・覗き穴が追加されたことが、ウルトラマンというキャラクターを魅力的にみせたのも確かで、思うにこれがなければ、今ほどのシリーズ化には至っていなかったのではないか、と思えるほどに革新的でありました。

 全ての原点にして頂点。今でもなお魅力を欠かないそのデザインは、後世に多大な影響をもたらしました。大きな要素としては、昭和ウルトラマンの全ての体色が、赤と銀で構成されていることが挙げられます。またゾフィー、ジャック、ウルトラの父ウルトラの母ウルトラマン80などにはモロにそのデザインが参考にされています。

 シリーズが続くにつれ、当初は、ウルトラマンウルトラセブンは、別世界の存在、ということになっていましたが、やがて設定が変わってゆき、各作品のウルトラマンたちは、皆M78星雲ウルトラの国出身の兄弟(先輩後輩みたいな関係)であるということになっていきました。

 この、ウルトラマンに始まる昭和ウルトラシリーズで定着した、「体色は赤・銀からなる」「皆が同じくM78星雲」という二大前提を覆したのが、平成初のウルトラマンウルトラマンティガであります。ティガは、そもそもM78星雲出身のウルトラマンではなく、体色も、赤・銀だけでなく、紫が使われています。また、タイプチェンジ能力を持ち、赤と銀のパワータイプ、紫と銀のスカイタイプへと変化します。ティガは今現在においても、全ウルトラマンの中で最もイケメンと名高いウルトラマンで、昭和ウルトラマンらのフォーマットをやや崩しながらも、その特徴は捉えていますね。頭部の凹凸は一見複雑なようで、シンプルさを保った洗練されたデザインになっています。三色を使えば、二色の場合と異なり、全体的にごちゃっとした印象を与えてしまいがちですが、ティガはそれを実にシンプルな形で、違和感なく落とし込んでいるのが上手いですね。また特筆すべきはカラータイマーのデザインであり、それまでのウルトラマンとは一線を画す斬新かつシンプルなデザインがなされました。また、胸部のプロテクターのデザインも秀逸であります。ここから、ウルトラマンに赤・銀以外の色を使い、出身を独自設定とし、形態変化を行わせるのが主流になっていきました。

 ティガにおいても、その基本は変わっていません。一見どれだけ複雑なように見えても、実はそのデザインは、いたってシンプルなもの。ごちゃごちゃと無駄なパーツを付け加えるのではなく、よりシンプルに、よりスタイリッシュに表現する。これこそが、デザインの極致なのかもしれません。

 さて、本題です。その昭和テイストと、平成テイストを実に巧く融合させて出来上がったのが、そう、ウルトラマンゼロであります。ゼロは、ウルトラセブンの息子であり、彼のデザインはセブンに由来しています。つまり、昭和ウルトラマンの流れをくんでいるわけですね。それでいてまた、体色は赤・銀・青で構成されており、三色構成なあたり、平成ウルトラマンの流れをもくんでいると言えましょう。ゼロが凄いところは、この三色の纏め方で、銀色のラインに新しさを見いだしながらも、あくまで赤と青の配色は、シンプルさを突き詰めたデザインだということ。昭和世代・平成世代どちらにも懐かしさを持たせつつも、どこか新しさもある、そしてその上で全体のバランスはシンプル。まさにウルトラ40年の歴史の集大成とも言えましょう。

 また、セブンのアイスラッガーが、頭に二つついているという、普通にデザインすればかなりダサくなってしまいかねない「ゼロスラッガー」を、本当に上手く落とし込んでいるのも評価が高いですね。飛ばし方も、アイスラッガーの昭和バトル漫画を彷彿とさせる直球アタック、ではなく、回転しながら飛んでくる平成少年漫画チックなものに変更されていますし、時代のニーズに合った戦い方に落とし込んでいるのも、実に素晴らしい。

 他にも、注目すべき点として、初期のゼロには形態変化が登場しないということも挙げられましょう。他の形態を考えれば、ある程度他の形態との兼ね合いもかんがみてデザインしなければなりません。近年のタイプチェンジウルトラマンであるオーブ、ジード、ゼットなどは、他の形態とのバランスを考えなければならず、どうしても他形態との差別化や親和性をもたせるため、諸々の制約が出てきてしまいます。それを、ゼロは基本形態にとどめたことで、真に洗練されたデザインを、とことん突き詰めることができた、というのもあるのかもしれません。

 また、時代が進むにつれデザインが複雑化しているかというと、そういうわけでもありません。ゼロが初代ウルトラマンやティガと異なる点がもう一つ。冒頭で示した、スーツアクター用の覗き穴が、視聴者に見えないように隠されている、ということです。一つ複雑なデザインが足されれば、それまでの複雑なデザインを一つ消す。そうやって突き詰めていき、秀逸なデザインというものは完成していくのかもしれませんね。

 ということで、以上、各時代の転換点となった3人のウルトラマンのデザインを、見ていきました。やはり洗練されたデザインには、「シンプルさ」が大事なようですね。足し算をしていくのではなく、引き算をしていく。その中で、キャラの持つ要素(カラータイマーや体色)を根本から見直し、時には前提を覆すような突飛なアイデアを見出して、それをデザインに落とし込む。これが上手くハマると、とてつもない神デザインになるのでしょうね。

 近年のウルトラマンも、確かにデザインは素晴らしいものばかりです。しかしながら、シンプルさと反対に、色々つけまくったデザイン、細かく走るラインなど、付け足すことで生まれるカッコよさ、が追求されているように感じます。最近は形態変化もたくさんありますから、その兼ね合いも考えねばならず、厳しいところなのでしょう。そういう意味でも、ウルトラマンゼロは、時代に恵まれたデザインであったと言えるかもしれません。