igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

2020年悪役グランプリ

 皆さんこんにちは、igomasです! ついにやってきました! 2020年悪役グランプリ!

 この企画は、1年の中でメディアを問わず、映画、ドラマ、アニメ、漫画、ゲームなど、様々な「作品」でigomasが出会ってきた個性豊かな悪役たちを振り返る企画です。そして最後にはその1年で最も輝いた、グッときた悪役を紹介する企画となっています。

 さて、2020年の総括記事を2022年に書くという、とってもとっても今更感のある記事ではありますが、一応毎年恒例ということで記事にしたいと思います。あまり間を空けずまた2021年版も出そうかなと考えていますので、そちらもお楽しみに!

 それでは、2020年の悪役たちを、振り返っていきましょう!

 

↓昨年度の記事はこちら

igomas.hatenablog.com

 

(注)なお、企画の関係上、様々な作品のネタバレを含みますので、ネタバレが嫌だという方は適宜読み飛ばしてくださいませ。

 

 

《2020年を振り返って》

 2020年は、まさに激動の1年でありました。というのも、新型コロナウイルス感染拡大により、外出自粛がはじまり、ドラマや映画の制作においても多大な影響が出た年でありました。また、映画館に足を運ぶことが難しくなってきたことで、映画自体の公開数もかなり減り、長らく続いていたMCU作品も、1年ほどの空白期間を迎えることとなりました。

 以上のような事情もあり、2020年はどちらかといえば、新作をたくさん見るというよりかは、見逃していた過去作品を見返す機会が多かった1年であったな、と感じます。自分が今まで知らなかった世界をのぞけたのは良いことですが、やはり新作が減ったのは非常に残念。

 さて、1月には2019年に見る予定で見逃していた作品をいくつか視聴。映画賭ケグルイであったり、ブラックパンサーであったり、諸々のゲームであったり。賭ケグルイは、個性豊かな登場人物らがギャンブルでのし上がっていく学園ドラマでありますが、映画版では新キャラを多数交え、好き放題暴れていましたね(笑)

 ブラックパンサーには、人気の高い悪役、キルモンガーが登場。壮絶な過去を持ち、黒人が虐げられてきた歴史を変えるため、たとえ大勢の犠牲を伴うとしても戦う、という悪役。悲しい過去を背負い、共感を呼ぶような、まさに悪役の教科書みたいなキャラクターでしたね。

 何気にしっかり通しでは見ていなかった仮面ライダーディケイドも視聴。ディケイドや世界にとって、とっても迷惑なやつであり続けようとするラスボス、スーパーアポロガイストさんの、強いんだけどちょっと抜けてる感じが結構クセになりました。前作仮面ライダーキバの怪人、ファンガイアの女王と結婚したことで、ファンガイアの力を得て強化、という展開も好み。既に登場した要素同士を組み合わせるの、結構好きなんですよね。

 ディケイド最終話付近で登場した、剣崎一真ブレイドキングフォームも、かなり好み。これまでのシリーズの主人公が、最新作に敵として立ちはだかる、というのは粋な展開で、ディケイドを圧倒する姿は圧巻でした。

 さて、特撮界でも大きな動きがありました。2020年の特撮と言えば、忘れちゃいけない、ゼロワンとウルトラマンZ。仮面ライダーゼロワンは、まぁストーリー自体かなり構造的に無理があり、破綻も多かったですね。本ブログでも色々と問題点を指摘しました。物語そのものだけでなく、悪役自体もかなり酷いものが多く、天津垓はここ数年でダントツで酷い出来の悪役でありました。うむむ、残念!

↓ゼロワン総括記事はこちら

igomas.hatenablog.com

 

 ウルトラマンZは、まぁ手放しに褒められる作品ではないものの、こちらは制作陣の熱意・覚悟がところどころで伝わってくるなかなかの良作でありました。やや感想記事が残っているので、こちらも続きを書いて終わらせたい所存。作品としては良いところも多いものの、メインヴィランセレブロは、ちょっと悪役としての魅力が薄すぎて、今回は上位には入ることが出来ませんでした。

 ドラマ、今日から俺は!!は、千葉の高校を舞台としたヤンキーの日常・バトルを描いた物語。パンチやキックの一つ一つのエフェクトにかなり力が入っていて、バトルシーンはとても楽しく見させていただきました。また、それぞれの登場人物が非常に個性豊かで、バトルだけでなく日常パートも十分楽しめました。悪役も個性豊かで、それぞれバトルの戦闘スタイルが異なっているのも、良い味を出していました。

 SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜は、超能力保持者たちの起こす事件に果敢に挑む警察官らの奮闘を描いた物語。基本的には1話完結型ですが、物語が進むにつれて、SPECホルダーらの秘密組織や公安零課の暗躍が紐解かれてゆき、黒幕に近づいていく展開はアツく、見れば見るほど世界観に引き込まれました。超能力を使ったバトルも見応え抜群です。

 魔法少女まどか☆マギカも、名作と名高い一作で、今更ですが視聴。オープニングの明るい雰囲気から一転、3話で話が大きく動き、ただの魔法少女アニメとは一線を画すストーリー展開でありました。正直私は、既に第1話の時点で結構伏線が張り巡らされていることに気付いてしまい、だいたい最終話までの展開が読めてしまったので、制作陣の思惑通りとはいかなかったものの、しかしかなり楽しませていただきました。オープニング曲の歌詞の真の意味が分かったときの鳥肌は凄まじいものでした。エンディングテーマ曲もかなり好み。

 ドラマSPECに登場した公安零課の津田助広と、まどか☆マギカキュゥべえ、そしてウルトラマントレギアの3体に関しては、記事で色々と考察していますので、よければそちらも是非是非

 

igomas.hatenablog.com

 

 2018年悪役グランプリの第1位、「フレームワーク内に登場するレオポルドフィッツ博士」を輩出した、マーベルのドラマシリーズ、エージェントオブシールド。シーズン6でも、なんとレオポルドフィッツ博士が再登場! 制作陣、さてはめっちゃこのキャラ気に入っているな(笑) 相変わらず魅力たっぷりの悪役でシビれました。シーズン6では他にもダヴ・キャメロン演じるルビー・ヘイルなど、個性的なヴィランが多数登場しました。

 スーパー戦隊シリーズは、特捜戦隊デカレンジャー以外殆どちゃんと見たことがないのですが、今回、海賊戦隊ゴーカイジャーを視聴。かなりドハマリしました。海賊と戦隊という相反する要素を上手くまとめ上げており、ストーリーの展開もお見事という他ありませんでした。また本作は、過去シリーズのレジェンドキャラが大集合するというお祭り作品。私はスーパー戦隊シリーズには疎いので、視聴後に毎回元ネタを調べていたのですが、そんなところまでオマージュするのかという徹底ぶり。過去作オマージュお祭り作品としては、これ以上ない出来なのではないでしょうか。悪役も魅力たっぷりで、かなり推せる一作です。

 ソードアートオンラインアリシゼーションWar of Underworldでは、過去作に登場したキャラたちが大集合し、まさに総決算とも言える大作になっていましたね。個人的に好みの悪役はヴァサゴ。躊躇のないクズっぷりが逆に光っていました。どんなに攻撃を喰らっても倒れない執念深さも素晴らしい悪役でした。物語構成としては、尺の都合上か、ダークテリトリーのキャラたちを詳しく描けなかったのが若干の痛手でありましょうか。

 半沢直樹(第2シリーズ)では、これまた個性豊かな悪役が多数登場。一時期は半沢直樹だけで悪役グランプリを開こうかと思っていたほどです(笑) 作品としては、第1シリーズに比べエンタメ寄りに走ったことで、物語がやや粗雑になってしまった感がありました。

 帝一の國は、高校の生徒会長選挙を巡る熾烈な争いを描いた作品。本人たちは至って真剣なのですが、端から見ているとなんだか馬鹿らしいところもあって、コメディ漫画としても秀逸。どんな逆境に遭っても、あらゆる手を使って駆け上がっていく帝一の姿は清々しく、思わず応援したくなる主人公でありました。

 そして年末には、前々から見たいと思っていたトランスフォーマー最新作、バンブルビーを視聴。トラヴィス・ナイト氏のトランスフォーマー愛溢れる一作でありました。構図も、割と全体をしっかりと映す、ゆったりとした構図が多く、マイケル・ベイ版とはまた違った魅力がありました。悪役としては、メインのシャッター・ドロップキックより、ブリッツウィングの方を推したい気持ち。造形やトランスフォームの描写、強者感など考えると、かなりブリッツウィング、良かったです。

 

 ということで、以上、2020年を振り返っての感想でした。ここから、2020年で私igomasが最も感銘を受けた、グッときた悪役を1位から3位まで発表したいと思います。

 

<2020年悪役グランプリ:トップ3>

 さて、トップ3の発表です。昨年は、最後の最後まで3位が決まらなくて、急遽ダークナイトというダークホースを投入する暴挙に出ましたが、今回はしっかり、3位まで埋まりました。

 2020年という激動の1年を征した至極の悪役たち、第3位から発表です!

 

 

同率第三位 「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」より地居 聖/ 「今日から俺は!!」より月川

 

 なんとビックリ、悪役グランプリ初、まさかの同率三位です! 普段はこういうことはしないのですが、どちらとも決めがたい名悪役だったので、両名ともグランプリ受賞としました! まぁ、どちらも演じているのが城田優さんということで、同率でもいいかなと(笑)

 

 SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜連続ドラマ版のラスボスを務めるのが、地居 聖(ちい さとし)。主人公、当麻の元カレとして登場し、当初は元カレらしく当麻のことを分かったふうな口を利きながら、当麻に軽くあしらわれる人物でした。しかし話が進むにつれて、物語に深く関わってくるようになります。

 一方その頃当麻は、人の数万倍のスピードで動くことの出来る青年、一 十一(にのまえ じゅういち)率いるスペックホルダー軍団の陰謀を追っていました。どうやらニノマエは当麻に相当な恨みがあるらしく、対立を深める2人。最終決戦では当麻の奇策によりニノマエは敗北。毒に侵された状態で、後は死を待つのみとなります。

 とそこへ現れるのが、地居 聖。彼は、記憶を改竄する能力を持っており、ニノマエの記憶を書き換え、当麻への復讐心を植え付けていたのでありました。実際はニノマエは当麻の実の弟であり、両者に諍いはありませんでした。地居は姉弟を戦わせて楽しんでいる、いわば愉快犯のような男だったのです。そして当麻の記憶も書き換え、地居がまるで恋人であったかのように改竄し、近くでずっと観察していたのです。

 最も賞賛したいのは、地居がラスボスだと分かっていく展開。最終話の前で、ニノマエが自分の母の記憶を部下に消させ、ニノマエと母との関係を断つことで母に危害を与えまいとするシーンがありました。ここで初めて、記憶を改竄する能力者がいる、ということが当麻より前に、一足先に視聴者に提示されるのです。

 そして、そのニノマエの部下に過ぎなかった男が、実は部下どころか事件を裏から操っていた黒幕だった、と持っていくわけですね。この種明かしが非常に上手い。あえて先に能力者の存在を提示しておくことで、「あぁ、そういえばそんな能力者いたな、え、あれが地居だったの!?」と納得させた上で驚かせることが出来るわけです。実際、地居が能力を使っているシーンを既に見ているので、視聴者としても、ネタばらしの時点で、ニノマエと当麻の記憶が改竄されている、という設定がすんなり入ってくるのです。

 そして、ニノマエの記憶は完全に改竄されたものであり、実は当麻の弟だったと明かされ、つまり前回あれだけニノマエが母を事件に巻き込むまいと母の記憶を改竄したのに、そもそもその「母」は本当の母でもなんでもなく地居が用意した別人だったと発覚。前回ニノマエが母親を巻き込むまいとする展開であれだけ感動したのに、それすら地居の手のひらの上だったのか! と視聴者のヘイトも買えるわけです。悪役としてはとても上手いヘイトの買い方。素晴らしい。

 そして、元カレとして登場していた地居が、黒幕として姿を現し、豹変する様子も見ていて気持ちが良い。当麻をボコボコにしはじめ、こいつ能力だけじゃなくてフィジカルも結構強いのか! と驚かされます。最終決戦でも能力なしにフィジカルで十分戦えており、能力に頼ってばかりのひ弱な悪役でなかったのも評価が高いところ。ラスボスに相応しい強敵でありました。

 

 そして、今日から俺は!!連続ドラマ版のラスボスを務めるのが、月川。ヤクザの人間で、開久高校にて失墜した相良が頼った男。第1話の最後にも少しだけ登場していましたね。そのときから大ボス感を漂わせていましたが、最終話にてようやく登場です。 初登場時には利き手を使わず圧倒する姿を見せました。これまでのはあくまで高校生のお遊び、ここから先は本当にヤバイよ、という絶望感を与えてくれる、よい悪役でした。こんなのどうやって勝てるの? と思わせてくれるいいキャラしてましたね。

 最終的には三橋の奇策により、銃を撃とうとしたところに灯油をかけられ、なんともアッサリ敗北。最初の強面から一変、灯油をかけられ反撃されたらすぐ負けてしまう負けの潔さも結構好き。短い登場時間の中でしっかり印象を残せる、良い悪役だったなぁとしみじみ。

 

 両者とも、物語全体を通しての大ボスではあるものの、最終回になってようやく満を持しての登場。短い登場時間の中で悪役としての魅力を出し切って、印象を強く残せるのは、ひとえに演じていらっしゃる城田優さんの演技の圧倒的カリスマ性にあるのでしょう。

 優しい役、恐ろしげな役、負けるときのヘタレな感じ、全部リアルに演じ分けられるからこそ、短い時間で濃密にキャラを描けるのだと思います。

 

第二位 「映画 賭ケグルイ」より、歩火 樹絵里

 

 賭ケグルイは、ギャンブルですべてが決まる私立百花王学園を舞台に、蛇喰夢子がギャンブルでのし上がっていくお話。原作でも様々なギャンブルが紹介され、相手のズルを見破り攻略した上でギャンブルで勝っていく様は痛快。

 劇場版でも、様々な「ギャンブル」が登場し、個々のキャラが各々の戦術で勝ち上がっていく様が大変面白かったです。ギャンブルの攻略の仕方にもキャラの性格が出るの、良い作劇ですよね。

 で、今回の映画は、ギャンブルによって虐げられてきた人々を解放し、ギャンブル制度を打破することを訴える組織、ヴィレッジの登場から物語が始まります。生徒会の策略によりヴィレッジ殲滅作戦が決行されると、彼らは歩火 樹絵里(あるきび じゅえり)を筆頭に立ち上がる、というお話。

 生徒会のヴィレッジ殲滅作戦は、学校全体を巻き込んだ大規模ギャンブル。歩火 樹絵里はここで優勝することで、ヴィレッジ存続を生徒会に確約させようと奮闘するのでした。

 しかしながら、最終決戦にて、歩火 樹絵里の本性が発覚。彼女は生徒会長に心酔しており、最終決戦にてわざと敗北することで、ヴィレッジや生徒会に反する者たちを全員つるし上げ、生徒会長に献上しようとしていました。

 歩火 樹絵里の真の狙いが分かるネタばらしの際の、演じる福原 遥さんの熱演は見事なものでした。福原 遥さんは、可愛げのあるお淑やかなキャラを演じられることが多かったので、こんな役も出来るのかと驚かされました。元から目が大きい方なので、目を大きく見開くとより狂気感も出ますし、なにより賭ケグルイの世界観に合っていました。目の下の赤いアイラインも、目の生々しさというか、狂気を伝えるのに一役かっていて、ビジュアルも見事。白地の服に「ミケ」と書かれた札をつけた弱々しい感じから一転、白地の服はどこか恐ろしげな狂信的な聖女風ですし、首からかかった札もジャラジャラと恐怖感を煽ってきます。悪役として、ビジュアル演技力申し分なく魅力が溢れていました。

 最終的には、「負けようとしている相手に勝ってもつまらない」「ギャンブルでわざと負けるなんて、ギャンブルに対する冒涜」という考えから、ギャンブルで「あえて負ける」作戦に変更した蛇喰夢子の奇策により、あっさり敗北。最終決戦前から歩火 樹絵里の策略に気がついていた夢子は、負けた際のペナルティのこともしっかり考えて対策しており、無事事なきを得たのでした。

 このアッサリ退場感も好き。夢子の機転により、それまで夢子&鈴井VS歩火&村雨だった構図が、夢子&村雨VS歩火&鈴井に変わるという構図も見事。あっという間に学園最強ペアを相手に立ち回らねばならなくなった歩火が不憫でなりません。鈴井とのコントも非常に面白く、自分が一つ一つ積み上げてきた作戦がいとも簡単に崩れ去ったときの絶望した顔は、悪役の散り際としても見事でした。

 とにもかくにも、監督、脚本、美術さんなどなど、そして福原 遥さんが凄すぎた、そんなすべてが上手くマッチした、良い悪役でありました。

 

第一位 「海賊戦隊ゴーカイジャー」より、バスコ・タ・ジョロキア

 

 2020年、文句なしの第一位に輝いたのは、スーパー戦隊シリーズ35周年記念作、海賊戦隊ゴーカイジャーから、バスコ・タ・ジョロキア。他者を大きく引き離し、ダントツの一位でした!

 本作は、宇宙海賊として旅をしていた、キャプテン・マーベラス率いるゴーカイジャーが、たまたま地球を訪れた際、宇宙帝国ザンギャックと交戦したことをきっかけに、ザンギャックから地球を守るヒーローとして戦うことになるお話。

 それまでは、地球をスーパー戦隊が守っていたものの、宇宙帝国ザンギャックとの戦いで、レジェンドヒーローたちは既にスーパー戦隊の力を失っていました。彼らからヒーローとはなんたるかを伝授され、少しずつ成長していく主人公たち。レジェンドヒーロー登場回では、オマージュが上手くはまっていて、ストーリー構成自体もかなり良い作品です。本作はレジェンドヒーローたちから、スーパー戦隊の大いなる力を、ひとつずつ引き継いでいく、というのがメインの流れとなります。

 そこへ、第三勢力として現れるのが、バスコ・タ・ジョロキア。宇宙帝国ザンギャック公認の私掠船、フリージョーカーに乗り活動する海賊で、かつては赤き海賊団にてマーベラスと旅をしていた仲。「何かを得るためには何かを捨てなきゃ」が口癖で、その言葉通り、お宝を独占するために赤き海賊団を見捨て、マーベラスの師であるアカレッドを死に追いやった男。マーベラスにとっては因縁の敵なのです。

 久方ぶりにマーベラスの前に現れたバスコは、マーベラスを「マベちゃん」と呼ぶ飄々とした雰囲気で登場。バスコも、マーベラスと同じく「宇宙最大のお宝」を狙っており、マーベラスらに宣戦布告。すでに大いなる力も集め始めている様子。

 今作ゴーカイジャーで主人公たちは、ゴーカイチェンジといって、過去のレジェンドライダーたちに「変身」することができます。それに対しバスコはラッパラッターというラッパのアイテムを吹くことで、レジェンドライダーたちを自身の部下として「召喚」することができます。どちらも使うのは共通のアイテム、レンジャーキー。ゴーカイジャーとバスコとは、大いなる力だけでなく、レンジャーキーも奪い合う仲なのです。

 ヒーローがヒーローたる要素のひとつとして、「自己犠牲」の精神があると私は考えています。自分が盾になってでも、弱き者を助け悪を挫く、それこそが、ヒーロー性のひとつだと思っています。ゴーカイジャーはその意味で、レジェンドの肩を借りながらも、自分の身を挺して戦っている一方、バスコはレジェンドの力を利用することしか考えていない。この対比が、ヒーロー性と、悪性との上手い対比になっているのがお見事。

 最初に登場した際、バスコはゴーカイジャーの見たことのない、強力なレンジャーキーの数々を集めており(いわゆる追加戦士枠のレンジャーキー)、それらを召喚してきます。金銀に光るレジェンドヒーローたちの強さに圧倒され、完全なる敗北を喫するゴーカイジャー。今まで集めたレンジャーキーも、すべて奪われてしまうのでした。

 あらゆる星を支配する宇宙帝国を相手に、大立ち回りを演じるだけあって、歴代とは比べものにならないほどのポテンシャルを持ったゴーカイジャー。これまで殆ど苦戦という苦戦もなく、かなり快勝続きで来ていたところ、このバスコの絶望感はかなりのものでした。

 なんとか士気を取り戻し、機転を利かせたゴーカイジャーの活躍によって、一旦は敗北し、レンジャーキーもゴーカイジャーに奪い返されてしまうものの、倒れることなくアッサリ逃亡。この余裕の強者感も、なかなかに凄まじいものでした。

 その後も何度も登場し、卑劣な手を使ってはレジェンドヒーローの大いなる力を強引に奪い取ろうとしますが、何度もゴーカイジャーに阻まれます。しかし何度負けても意に介することなく、余裕の表情を見せるバスコ。それどころかどれだけ持っているんだというくらい大量のレンジャーキーを召喚して、何度もゴーカイジャーを苦しめてくるのです。

 召喚系の敵って、殆どの場合没個性的に描かれることが多く、戦闘シーンの見栄えが悪くなりがちなのですが、バスコの召喚するレジェンドヒーローは少し違っていました。戦闘スタイルや表情に、どこかバスコの倫理観が垣間見え、「バスコの召喚する敵」としてのアイデンティティを確立していたのは、評価したいところ。

 また、バスコには子分がいて、それが宇宙猿サリー。手にシンバルを持った猿のキャラクター。このサリーもなかなかフィジカルが強く、また頭も切れるのです。猿の惑星しかり、トイストーリー3しかり、マーベルのヒットモンキーしかり、猿は人間に最も近い種であるがゆえに、人間に反旗を翻してきそうなイメージがあるのか、猿のキャラクターってちょっと恐怖感を抱かせますよね。またシンバルを持った猿の人形って、どこか恐ろしいイメージを持っている方も多いと思うのですが、そういったイメージを合わせて、上手く強敵感を醸し出しているのも上手いところ。

 逃亡の際には、サリーのお腹の中にいる巨大戦闘疑似生命体(ロイド)を「いらっしゃいませぇ~」といって召喚し、去って行きます。このロイドたちのネーミングセンスや、腑抜けた感じも緩さがあって好きですね。ロイドたちは特に喋ったりするわけではないので、なんというかこう、ご当地ゆるキャラみたいな推したくなる要素が詰まってます(笑)

 レジェンドヒーローがいかに作戦を張り巡らせても、バスコはさらにその上を行く策士でありました。ゴーカイジャーがレジェンドの力を借りても、基本善戦することはなく、紙一重での勝利が殆どなのも、悪役としての魅力が高まる演出。

 バスコはほんと色んな要素が好きで、まずは名前。海賊戦隊ということもあって、ヴァスコ・ダ・ガマとタバスコとジョロキアを組み合わせた名前になっています。名付けのセンスがほんとピカイチすぎる。ちなみに初登場が15,16話なのですが、これはヴァスコ・ダ・ガマが15,16世紀に活躍したことをもじっているのか、果たして。

 それから服装が、いかにも海賊風なデザインながらも、バスコ特有の緩い雰囲気を併せ持っているのも素晴らしい。またバスコの海賊帽が、キザな悪役にありがちな「長い前髪」の役割を果たしており、本当にビジュアルに無駄がありません。

 

 と、色々と暗躍してきたバスコですが、第31話にて、恐怖の正体が明かされます。いわゆる怪人態であり、アカレッドも恐れた真の姿。あまりのオーラにマーベラスの攻撃はまったく通じることはなく、それどころか規格外のスピードから放たれる斬撃に、まったく為す術なく大敗北。

 これまで自身は戦うことなくレジェンドヒーローを召喚するだけであったことから、本人はそこまで強くないのかなと思っていたらとんでもない。作中1、2を争うフィジカルの強さを誇る、ラスボス級の強敵でありました。初登場回の絶望感も凄まじかったものの、それを遙かに上回る絶望感。もうこんなの、どうやって勝ったらいいんですかってレベルで圧倒的でした。デザインも、恐ろしげな顔や、赤い目、肩や膝のドクロなど、恐怖心を煽りつつ格好良くまとめています。

 その後、バスコに対抗するために、ゴーカイジャーはゴーカイガレオンバスターを開発するのですが、結局最後までバスコには通用しませんでした。強すぎ。

 そして決戦の時。バスコはついに、お腹の中の巨大戦闘疑似生命体(ロイド)が尽きた宇宙猿サリーを用済みと銃で攻撃。ゴーカイジャーはサリーを自身の船、ゴーカイガレオンに引き入れ介抱します。当然の如く、それはバスコの罠であり、すべてはサリーを敵の懐に潜り込ませるため。サリーは寝ている隙をついて、ゴーカイジャーのレンジャーキーを盗み出します。

 しかし、ゴーカイジャーの優しさに触れたサリーは、彼らに心を許します。ついには相棒にまで見限られたバスコ。本作始まってようやく、不利な立場に追い込まれたかと思いきや、そこまですべて計算尽くで動いていたバスコ。サリーに「お守り」として渡していたペンダントにはなんと爆弾が仕込まれており、躊躇なく爆殺。ゴーカイジャーもそれに巻き込まれ、敗北。バスコはゴーカイジャーの船、レンジャーキー、大いなる力その全てを手中に収めるのでした。

 それまでは、戦闘中ダメージを受けそうになるサリーを庇ったり、心配したりと、相棒のサリーにだけは心を許しているのかな?と視聴者に思わせておいてからのこの仕打ち。バスコのクズっぷりを巧みに描いており、秀逸。

 サリーのペンダントに仕掛けられた爆弾により、サリーに最も近い場所にいたキャプテン・マーベラスは大負傷。残りの5人、ジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧でゴーカイガレオンを奪還し、バスコに挑みます。しかし、5人がかりでもまったく刃が立ちません。

 そこへ現れるのが、キャプテン・マーベラス。このカットが本当に格好良い。身体中に傷を負って、立つこともやっとなのに、それでも立ち上がる。まさにヒーローそのもので、本当に格好良かったです。

 宇宙猿サリーは死の直前、マーベラスを庇って、できるだけマーベラスが負傷しないようにしていたのでした。自分の心配よりも、マーベラスの心配をした、そんなサリーの思いが、マーベラスの心に火をつけたのです。

 最終決戦、マーベラス、バスコ、ともに片手に剣、片手に銃での激突。バスコ怪人態の、剣と銃のデザインもかなり好きですね。ヒーローとして覚醒したマーベラスはバスコにも肩を並べ、一進一退の攻防が繰り広げられます。そして両者の武器が弾き飛ばされ、そこでマーベラスが2本の剣を、バスコが2丁の銃を手にするのが秀逸すぎる展開。

 先程述べた、ヒーローとしての自己犠牲の象徴が剣であり、自分では手を下さない悪性が銃に現れているのです。そして、マーベラスはバスコの足を自分の足で押さえつけ、そこに剣を上から突き刺します。自分の足を犠牲にバスコの動きを封じるという、なんとも豪快な奇策。そして両者は最後の一撃を互いに放つのです。

 両者は倒れ、先に立ち上がったのはバスコ。バスコの放った銃弾はマーベラスの心臓に直撃していました。再起不能だろうと笑みを見せた瞬間、立ち上がるマーベラス。彼の胸には、かつてバスコが「お守り」としてサリーに渡したペンダントが。そう、銃弾はペンダントに当たって、マーベラスを守っていたのでした。運命に見放され、自分の敗北を悟るバスコ。マーベラスに受けた傷は深く、そのまま地面に倒れ伏すのでした。この散り際の表情も、見事。演じた細貝圭さんには、本当に感謝しかありません。

 こうして、バスコとの永きにわたる戦いは幕を閉じました。

 

 私がバスコという悪役を、他の悪役に比べ抜きん出て評価しているのは、彼がただただ魅力溢れる悪役であるだけでなく、この作品になくてはならない存在だったからなのです。

 悪役とは本来、何のためにいるのか、ということを、以前書いた記事がありました。

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 悪役が存在する理由、それは、主人公にとって、大きな壁となる存在を用意することで、敵を乗り越えた際の主人公の「成長」を描くことができるからなのです。主人公の成長のために、主人公が主人公であるために、悪役は機能しているのです。

 たとえば、バスコが「何かを得るためには何かを捨てなきゃ」というスタンスなのに対して、マーベラスは「欲しいものは何が何でも手に入れる」「両方欲しいなら、どちらかを捨てるのではなく、両方手に入れる」「それが海賊だ」というスタンスを貫いていました。マーベラスの、海賊として、そしてヒーローとしてのキャラづけに、バスコは一役かっているのです。

 また、マーベラス含めゴーカイジャーのキャラたちは、過去の悲惨なトラウマから、抜け出せないでいます。ゴーカイジャーの物語は、その過去に囚われることから脱却し、主人公らが前へ歩き出す物語でもあるのです。マーベラスにとって、重い影となっていたのは師匠、アカレッドの存在でした。彼の存在が、マーベラスにどこかキャプテンとしての覚悟を失わせていた。偉大なアカレッドがずっと心の中にいるせいで、そしてそのアカレッドを自分の弱さにより守れず失ったせいで、自分に自信を持てず、また仲間を信用できないでいたマーベラス

 そんな彼が、バスコとの決戦を通して、仲間を信じ、そして自分自身を信じ、そしてアカレッドから脱却するのです。バスコに対峙した際、マーベラスは、自分の夢を阻む者は、バスコであろうと、ザンギャックであろうと、そしてアカレッドであろうとぶっ潰すと宣言します。それこそが、マーベラスの成長であり、覚悟なのです。

 マーベラスという1人の男の成長のために、バスコは立ちはだかるべくして立ちはだかった壁なのです。悪役は、ただ魅力を持たせ、暴れさせておけばいいなんて存在ではありません。悪役はあくまで、作品構造としては、主役を引き立たせるためにある。作品の軸を、物語の進路をより確実にするための、いわば補強材なのです。バスコの素晴らしいところは、悪役としての魅力に溢れるだけでなく、バスコの悪性がそのままマーベラスのヒーロー性を際立たせる役割を果たしていることにあるのです。

 

 ところが、これで終わらないのがバスコ。バスコが真に素晴らしいのは、死んだ後なのです。

 バスコを撃破した後、ゴーカイジャーはついに、全てのレンジャーキー、そして、34の大いなる力を使って、「宇宙最大のお宝」を手に入れます。宇宙最大のお宝は、なんと、「宇宙を丸ごと作り替えることができるデバイス」でありました。まさかのトンデモチートアイテムだったのです。

 宇宙最大のお宝を使えば、自分たちの過去のトラウマをなかったことにできる。宇宙帝国ザンギャックに滅ぼされた人々を、救うことができる。そんな画期的なアイテムの登場に、ゴーカイジャーの面々は一度は喜びます。しかし、宇宙最大のお宝には重大な欠点がありました。それは、「宇宙を作り替えるのと引き換えに、全てのスーパー戦隊の命が奪われ、その存在もなかったことにされる」というもの。

 地球を守ってきたスーパー戦隊全ての命と引き換えに、宇宙を作り替える。まさにバスコの信念である「何かを得るためには何かを捨てなきゃ」が、バスコ死してなお、現れるのです。バスコを倒してなおゴーカイジャーに立ち塞がる、究極の選択。まさに概念バスコともいえる局面に、ゴーカイジャーは立たされるのです。

 そんなおり、地球にはついに業を煮やしたザンギャックの主力大艦隊が押し寄せ、地球は今にも滅びる寸前。最初はスーパー戦隊の命を賭けることに反対していた地球人の鎧も、苦しむ人々、先輩レジェンドヒーローたちからの「自分たちは犠牲になっても構わない」という言葉に、宇宙最大のお宝を使おうと言います。

 しかし、ゴーカイジャーはそれに反対。ザンギャックの攻撃に苦しみながらも、それでもスーパー戦隊を信じる地球人の思いに心打たれたのです。地球の人間にとって、スーパー戦隊は希望なのだ。どんなに絶望しても、諦めない心をくれる、希望そのものなのだ。そのことを、ゴーカイジャーは尊重しようとするのです。

 そして決心するのです。自分たちの力だけで、宇宙帝国ザンギャックの本部大艦隊をうち沈めるということを。勝ち目のない戦いだと分かっていても、なにかを犠牲にすることなく、叶えたい未来は全部この手で叶えてやるのだと。ゴーカイジャーこそ、ザンギャックに多くのトラウマを植え付けられ、苦しい思いをしてきたはずなのに、それでも彼らは前に進もうと決心するのです。この、マーベラスだけでなく、ゴーカイジャー全体としての「成長」に、概念バスコが携わっているのですから、本当に見事と言うほかありません。

 宇宙最大のお宝を破壊して、颯爽とザンギャックの前に立ち塞がるカットは本当に最高すぎて鳥肌が立ちました。海賊であり戦隊である、真の意味での海賊戦隊となった彼らは、もはや敵なし。絶望的な状況だけど希望しかない50話のカットは、いやはや素晴らしいなと感じましたね。

 そして最終回。ザンギャックとの戦いにより、既にゴーカイジャーの船、ゴーカイガレオンは沈んでおり、他の巨大メカも全て倒された危機的状況。そこで最後の作戦に使われたのが、バスコの船、フリージョーカーだったのです。

 敵のアイテムが、意外な形で死後もなお重要な活躍を果たす、というこの展開が、本当に最高。振り返ってみれば、ザンギャック最強格の戦士ダマラスも、バスコのサポートがなければ勝てていなかったでしょうし、フリージョーカーなしには、ザンギャックの首領のところまでもたどり着けていなかったでしょう。バスコ自身はまったく手助けしているつもりはないのに、そして最初から最後まで改心などせずクズを貫き通していたのに、要所要所でゴーカイジャーの助けになっていた、というこの絶妙なポジションが、とてつもなく好み。

 生前だけでなく、死後でさえこれほどの影響力を持ったキャラというのは、なかなかお目にかかれるものではありません。これほどのストーリー構成力を持った監督・脚本陣、そしてこれほどまでに魅力溢れるバスコを演じきった細貝圭さんには、本当に本当に、本当に頭が上がりません。最高の悪役をありがとう、そう言いたい。

 ということでバスコ、堂々の第一位でありました!

 

《まとめ》

 ということで、2020年悪役グランプリでした! 今年は割とあっさりした記事になるかな、なんて思っていたのですが、いざ書いてみるとバスコ熱が凄すぎて、記事の半分のバスコに使っていました(笑) 数えてみると、バスコだけで7000字書いているという。それほどに、自分にとっては影響力の大きなキャラでありました。

 では、また2021年悪役グランプリもお楽しみに! igomasでした!

 

《ノミネート作品》

マインクラフトダンジョンズシリーズ(ゲーム)
スパイダーマン(ゲーム)
ブラックパンサー
映画 賭ケグルイ
仮面ライダーディケイド
劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー
仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド MOVIE大戦 2010
仮面ライダーゼロワン
ウルトラマンZ
今日から俺は!!(ドラマ)
SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜(ドラマ)
魔法少女まどか☆マギカ
エージェントオブシールドシーズン6
海賊戦隊ゴーカイジャー
スーパーマリオサンシャイン
ソードアートオンラインアリシゼーションWar of Underworld

ソードアートオンライン(第1期)
半沢直樹(第2シリーズ)
ドクターYシリーズ1~5
リーガルV
ポケットモンスター(アニメ)
ダンボール戦機ウォーズ
Alan Becker氏の動画シリーズ
帝一の國(漫画)
スパイファミリー
ウルトラギャラクシーファイト
ウルトラマングレート
バンブルビー(映画)