ポケモン対戦に特化したゲーム、ポケモンチャンピオンズのスマートフォン版がリリースされた。これにより、今までポケモン対戦をしたことがない人も手軽にポケモン対戦ができるようになり、新規プレイヤーが爆増した。そんな中、Twitter(現X)にて、ダメージ計算の是非が多数議論されている。
ダメージ計算とは、自分のポケモンの技で相手にどのくらいのダメージを与えられるか、逆に相手の技のダメージで自分のポケモンがどのくらい削られるかを計算する外部ツールである。これにより、相手の技で自分のポケモンが倒れるかわからないという不安定な状況を回避することができたり、相手ポケモンの育て方を分析することができる。ポケモン対戦は、手計算や電卓をするのが難しい複雑な計算式のもとに成り立っており、こうした短時間でダメージ量を算定できるツールは、大変便利だ。他方、外部ツールを用いること自体が他のゲームでは珍しいため、新規勢からは違和感が拭えないようだ。それで、ダメージ計算の是非について様々な議論がなされているわけである。
本記事では、そのようなダメージ計算論争について、考察していきたい。
まず、ダメージ計算論争をTwitterで議論することが、悪手である。Twitterとは、各々が思ったことを口々に呟くツールであって、基本的には、他人の話を聞かない人が集まった無法地帯である。
ダメージ計算論争においては、様々な論点が存在する。①対戦中に、ゲームの内部データを読み込んでダメージ計算をすることが、公式から禁止されているか、②対戦中にダメージ計算ツールを用いることが、公式から禁止されているか(ここから派生して、公式大会ルールとの異同はどのように考えるべきか)、③対戦外でダメージ計算ツールを用いることが、公式から禁止されているか、④公式から禁止されていないとしても、対戦外または対戦中にダメージ計算ツールを使うことはマナー違反ではないか、⑤公式から禁止されていないかつマナー違反ではないとしても、外部ツールであるダメージ計算ツールを使うことはそもそも不健全ではないか、⑥そもそもダメージ計算ツールを使えば対戦に勝てるのか、などである。上記のような様々な論点があることを念頭に置かず、何の論点について話しているのか明示しないまま呟く人がいたりする。 また先述のとおりTwitterでは、基本的には各々が文脈を無視して返信するため、たとえば①について議論している人の呟きに対して、③について返信する人が出てきたりする。したがって、Twitterの議論は殆どが不毛なものである。なお、私はTwitterを非難しているわけではない。Twitterとはそもそも、そうした他人の話を聞かない自分語りや、噛み合ってない会話を楽しむSNSだからだ。
次に、ダメージ計算についてあれこれ議論したところで、何も結論は変わらない。今ダメージ計算ツールを使っている人は、誰が何と言おうがこれからもダメージ計算ツールを使うだろうし、ダメージ計算ツールを使わないと主義を固めている人はこれからも使わないだろう。では、何のために彼らは議論しているのだろうか、甚だ謎である。
以上が、Twitterの議論を見て私が感じたことである。
せっかく①〜⑥の論点を挙げたので、これらについて私見を述べようと思う。
①対戦中に、ゲームの内部データを読み込んでダメージ計算をすることが、公式から禁止されているか
利用規約を見る限り、禁止されていると思われる。
②対戦中にダメージ計算ツールを用いることが、公式から禁止されているか
利用規約を見る限り、禁止されていないと思われる。
②’公式大会ルールとの異同はどのように考えるべきか
公式大会ルールでは、スマートフォンの利用が禁止されている。したがって、ダメージ計算ツールも実質的に利用できなくなっている。もっとも、公式大会ルールは文字通り、公式大会のルールであって、これを自宅でのんびりやるポケモン対戦に当然には適用される類のものではない。公式大会ルールと普段の対戦でルールが異なっても、何の問題もないと考える。
③対戦外でダメージ計算ツールを用いることが、公式から禁止されているか
禁止されていない。ダメージ計算はあくまで手計算、電卓での計算を簡略化するものであり、ダメージ計算論争は、対戦中の時間的制約の中で人力を超える方法を使ってよいかということにその発端がある。時間的制約のない対戦外でダメージ計算を用いることには何の問題もないと考える。また、参考として、公式大会でも事前にダメージ計算をすることが禁止されているわけではない。
④公式から禁止されていないとしても、対戦外または対戦中にダメージ計算ツールを使うことはマナー違反ではないか
当然、マナー違反ではない。ポケモン対戦は、長い年月をかけて公式とプレイヤーによって形作られていった一つの文化である。そして、ダメージ計算はポケモンプレイヤーによって一般的に使われているツールである。ダメージ計算を使える、ということは、もはや当たり前のルールと化している。郷に入っては郷に従え、の言葉の通り、ダメージ計算を使うことに何の問題もない。海外の人が日本に来て、「蕎麦を音を立てて啜るのはマナー違反だ!」と言ってきても、いや日本では長年そうしてきましたけど?嫌なら自分の国に帰ってください、となるのと同様、文化に適用できないのであれば自分の好みに合ったゲームをしてください、としか言いようがない。
なお、ポケモン対戦というものはそもそも命中不安技、状態異常や急所など、運が絡む不確定要素があまりに多く、ゲーム性として優れたものとはいえない。長期的な目で見ると実力はそれなりに出やすいゲームではあるが、ぶっちゃけ対戦上位勢の構築記事を見ても、「このポケモンは命中不安技をたくさん当ててくれて本当に偉かった」「低いレート帯の人としか当たらなくてレートが盛れなかった」と書いていることが多く、じゃあ最後の最後は結局運じゃん、と思うことはままある。その不完全さを、初心者や実力で負けている人にも勝ち筋がある面白い要素、と捉えるか、どんなに実力があっても運負けを誘発する面白くない要素と捉えるかは、人それぞれである。将棋とか、より実力が出やすい公平なルールはいくらでもある。もっと良いと思うゲームが他にあるなら、そちらをした方が心の健全に繋がる。それで対戦人口が少なくなっても、それはポケモン対戦というゲームの性質上仕方のないことだと考えている。
⑤公式から禁止されていないかつマナー違反ではないとしても、外部ツールであるダメージ計算ツールを使うことはそもそも不健全ではないか
不健全である。そもそもゲーム内で完結せず、外部ツールを用いなければ対戦が成り立たないというのは不健全である。ここまでポケモンプレイヤーの中でダメージ計算ツールが普及している現状、本来であれば、公式がゲーム内にダメージ計算ツールを組み込むのが健全であろう。
⑥そもそもダメージ計算ツールを使えば対戦に勝てるのか、
ダメージ計算を上手く使える人(相手のポケモンの育て方まで分析してそこから自分の戦術を構築する人)もいれば、ダメージ計算を使うのが下手な人(相手の攻撃を耐えるかどうかだけ計算して結局戦術に反映しない人)もいる。ダメージ計算が使えても、素早さ関係やタイプ相性などの他の対戦知識がない人もいる。また上述の通り、命中不安定技、状態異常、急所などの不確定要素もある。したがって、ダメージ計算ツールを使っても対戦に勝てるとは限らない。
ということで、ダメージ計算論争についてのあれこれでした。