2015年7月から22話に渡って放送された、ニュージェネレーション第三作目となる「ウルトラマンX」。主人公の大空大地がユナイトして変身するウルトラマンが、ウルトラマンエックスです。このエックス、大地とよく喋る饒舌なウルトラマンなのですが、実は自分の出自に関する情報は一切明かしておらず、巷では無愛想な宇宙人として知れていますw
さてこのウルトラマンエックスですが、大地と出会う第一話以前に、その存在が「無」である怪獣、グリーザとの戦いでその姿を保てなくなってしまっていました。このグリーザという怪獣がもう最強と言っていいくらいの強敵で、グリーザの無のエネルギーの余波(ダークサンダーエナジー)だけで怪獣が凶暴化するほど。存在が無なので、こちらの攻撃は当たらないのに、グリーザの攻撃はこちらに届く、という、ニュージェネレーション屈指の強敵です。ウルトラマンエックスは、この接触もできないような怪獣に体当たりをして、太陽に突き落とすという偉業を成し遂げました。まぁ、結局その影響で、地球にいた怪獣が目覚めるなんてことも起きてしまい、エックス自身も実体を保てなくなったわけですが、とにかく長きにわたってグリーザの活動を止めたエックスはほんと凄い。
てなわけで、ウルトラマンエックスって、グリーザを太陽に突き落として弱体化する前は、実はめっちゃ強かったんじゃないか、という話はまぁちらほら見る議論ではあります。この話に終止符を打つべく、ここにちょっと書いておこうかな、というのが今回の記事の趣旨です。
結論から言いますと、ウルトラマンエックスって、別にウルトラマンとして強い部類に入るわけじゃ無いと思うんですよね。ただ、相性的な面でグリーザに有利という意味で、グリーザ討伐に適任だったのかな、と。
まず、ウルトラマンの強さ議論って、強ければ強いほどいい、みたいな考えがあって、自分の好きなウルトラマンが強いって言いたい、って人時々見かけるんですが、ウルトラマンの魅力って別に強さじゃないよねと。もちろんヒーローものとして、前のヒーローより強いよって言いたくなる気持ちも分からなくはないけれど、弱いウルトラマンが弱いなりに苦悩したり、自分の戦闘スタイルを高めようとしたり、弱いゆえの見せ場ってあるじゃないですか。そういうウルトラマンの方が、ストーリーに重厚感ができて面白くなる印象なんですよね。そういう意味では、自分の好きなウルトラマンが描写として強かろうが弱かろうが、推しポイントってのはいくらでもあるよなと。ですからまず、ウルトラマンエックスが弱いって言ったからってエックスが嫌いなわけではないという補足はしておきます。強さが好みに直結しないよねって話は、どこかでしておきたかったので……
さてその上でエックスの劇中描写をじっくり見てみると、サイバー化から復活し、大地を離れ一人のウルトラ戦士として活躍するようになってからも、特にめっちゃ強いとかいう描写はなく、強さとしては普通に見えるんですよね。ここで出てくるのが、先程の「相性」という議論。グリーザは虚無であり、通常の手段では倒せない相手だったが、唯一グリーザを倒せる武器、エックスラッガーを扱えるウルトラマンがエックスただ一人であったために、彼が適任としてグリーザ討伐に当たっていた、と考えると、辻褄が合うわけです。
エックスってウルトラマンは、そう考えると相性で語れるシーンがたくさんあるんですよね。例えば、モルド・スペクターの一件。ジュダ・ギナ・モルド、何度でも復活するグア軍団の首領を二度と復活できなくしたのは、劇中でも語られた通り、エックスの力によるものでした。思えばウルトラファイトビクトリーでジュダはビクトリーに敗れたものの、復活を阻止されたわけでもなく、完全敗北とまではいかないわけで、エックスがいなければ、完全に倒すことは出来なかったでしょう。
後の戦いであるウルトラギャラクシーファイトも、ウルトラダークキラーが「二度と復活できない」と言われていましたが、モルドの一件を見るに、これにもウルトラマンエックスの力が関わっていたんじゃないかと思うんですよね。最後にギンガが巨大ダークキラーに突っ込むとき、エックスの力も借りているので。そう考えるとエックスは、復活系怪獣の復活阻止という役割において、めちゃくちゃ相性のいいウルトラマンなのではないか。
相性、という話でもう一つ話しておきたいのが、ザイゴーグのお話。個人的に、ザイゴーグの劇中描写って、最強怪獣ってほど暴れてないな、と思ったんですよね。一方セリフでは、エックスらからもかなりの脅威として見なされている。ここにも、相性論を持ち込むとわかりやすいと思うんです。ザイゴーグは、変身アイテムであるエクスデバイザーを腐食させる能力を持っていました。ここから考えるに、エックスというサイバーウルトラマンにとって、ザイゴーグという怪獣は致命的に相性の悪い相手なのではないかと。
そう考えると、テレビ本編のグリーザとの戦いは「最強の敵だが奇跡的に相性のいい相手との戦い」であり、映画の戦いは「絶望的に相性の悪い相手との戦い」として綺麗に差別化出来るのではないかな、と思うわけです。
エックスは割と弱いかも知れない。でも、エックスだから倒せる敵だっているし、大地と戦い終え強くなった後なら、相性の悪い相手でさえも倒せるようになった、なんて話の展開、いいと思いませんか?モンスアーマー(特にガーゴルゴン戦)の使い方など、思い返せばエックスは「相性」が戦闘においてキーとなるウルトラマンだったのかな、と。
というわけで、ウルトラマンXという作品は特に、相性で見るとまた一つ面白い見方が出来るんじゃないか、というお話でした。それではまた、どこかで……!