igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

「たくさんいる」系の悪役

 皆さんこんにちは、igomasです。悪役好きとして、今日も悪役考察に励む日々。普段は、別段一人一人の悪役を詳しく語るということはないのですが、今回はちょっと特別。というのも、最近コロナ自粛期間中、幾つかの作品を視聴しまして、たまたま偶然、そのとき見たまったく別の作品に登場するそれぞれの悪役が、同じ能力を使っていることに気づいたんですよね。それが、「たくさんいる」能力。同じ顔、容姿を持つ悪役が複数存在し、それぞれが同じバックアップデータを共有している、というタイプの悪役。一体倒してもまた同じ敵がもう一体現れ、際限なく戦わねばならないという悪役ですね。

 もちろん、私igomasがたまたま再放送で見た、という以外には、元々の放送時期も、放送形態もまるで違う作品同士なのですが、こういう偶然の一致って面白いな、と思ったので、記事にしてみました。果たして無尽蔵に現れる敵は、いかにして倒されるのか。

 なお、本記事は、『ウルトラマンタイガ』の裏設定、『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』、『魔法少女まどか☆マギカ』のネタバレを含んでいますので、ご了承ください。

 それでは、やっていきましょう!

 

 

 

ウルトラマントレギア

 ルーブ劇場版の『セレクト!絆のクリスタル』、『ウルトラギャラクシーファイト』、『ウルトラマンタイガ』にて登場。いずれもメインヴィラン(黒幕)を務めた、M78星雲出身の悪のウルトラマンです。

 ルーブ劇場版で一度、タイガにて二度、ウルトラマンの活躍で、盛大に爆発四散したトレギアですが、なおもタイガ劇場版の『ニュージェネクライマックス』にて登場し、タイガを苦しめる予定(コロナのため公開延期となりましたが、先日公開日が発表されましたね)。

 一体全体、彼はどうして生き残っているのだろう? と、視聴者の皆さんも気になっていたと思いますが、その謎はウルトラマンタイガのスピンオフ小説、トレギア物語/青い影にて明かされます。

 実は、トレギアは毎回死んでおり、平行世界に複数存在するトレギアが、バックアップデータをもとにつながっていたとのこと。ですから、厳密にはルーブ劇場版、タイガ前半~中盤、タイガ終盤のトレギアはそれぞれ別人物であり、タイガ劇場版のトレギアも、また別人である、ということらしいですね。

 トレギアは内に邪神を封印しており、その一体がタイガ劇場版登場予定のグリムド。邪神の力を使って戦っているために、本人のフィジカルはそこまで高くないそうです。戦闘スタイルが独特で、気まぐれで光線を避けたり光線に当たってみたり、フィジカルで攻撃することが少なく普段は敵の攻撃をよける程度で、光線だけ放って戦闘を終わらせたりとか、爪を立てて威嚇してみたりとか、そういう「鍛えたウルトラ戦士」のイメージと異なるのは、邪神の技由来で、死んでもバックアップがある故なのかも。まぁ、そこはテレビ本編でちゃんと描いて欲しかったところではありますが…

 さて、そんなトレギアですが、ルーブ以前から、暗躍していたことが判明。ウルトラマンオーブ劇場版、『絆の力、おかりします!』にてオーブを苦しめた悪役、宇宙魔女賊ムルナウ。物体を宝石に変える能力を持ち、ダークリングの闇の力でその力をさらに増幅させ、地球の全てを宝石に変えるという計画を進めていた敵でありますが、そもそも彼女に、物体を宝石に変える能力を与えたのが、他ならぬトレギアということ。

 それから、ルーブテレビ本編のラスボス、ルーゴサイト。宇宙に害をもたらす存在を排除する、いわば宇宙の白血球のような存在であったルーゴサイトですが、何者かによって遺伝子操作され、暴走。美剣サキとその兄弟をはじめとする、多くの人々、数々の惑星を葬ってきた怪獣でありますが、その「何者か」が、つまりトレギアであります。

 と、このように、オーブ映画、ルーブ本編、ルーブ映画、ウルトラギャラクシーファイト、タイガ本編、タイガ映画と長きにわたって暗躍してきたトレギア。倒しても倒しても現れるトレギアを、どう倒すか、というのが問題になるわけですが…それは、公開予定のタイガ映画にて明かされるのかもしれません。一つは、トレギアが光墜ちする、という展開。闇(というか、本人は虚無を求めているわけですが)の戦士であるトレギアが、最終的に再び光を信じ、光の巨人として更生するという説。そしてもう一つは、力の源である邪神を倒してしまえば、無力化できる説。まぁ、ぱっと思いつくのだとこれくらいでしょうか。正直、本編ではなんのバックグラウンドも行動理念も語られていないので、倒され方を拘る必要はないのですが、とはいえ悪役の散り際は一つの見せ場でありますから、どんな最期になるのか気になるところ。そもそも、タイガ劇場版が悪役としての最期でない可能性もありますが。

 

津田助広

 続いては、『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』というドラマから。SPECは、特別編や映画、スピンオフも作られた大人気シリーズで、まぁ説明もいらないかもしれませんが、通常では考えられない特殊能力(SPEC)による犯罪捜査を行う、未詳事件特別対策係(通称:未詳)の活躍を描く物語。

 本作に登場するSPECホルダーの一人である津田助広(つだすけひろ)。警視庁公安部公安零課(通称:アグレッサー)の中心人物。未詳をおとりにSPECホルダーを秘密裏に隔離・処分する存在。SPECホルダーを次々と権力を笠に殺害した点では、許されざる敵ではあるものの、SPECホルダーによる反乱を止めるため、一般市民の平和を守るためやむなしの行動であったと考えれば、完全な絶対悪ではないのかも。

 彼もまた、殺されても、パブリックドメインとして、同じ顔の男が存在し続けるという仕組みになっています。さて肝心の倒し方ですが、彼の場合は、他二例と異なり、たかだか地球上にしか存在しないということですから、割としらみつぶしに倒していけばいつかは倒せるのかもしれません。実際、ニノマエによって殆どの津田助広は倒された模様。しかし、倒しきったと思っても実はしぶとく生き残っていたり、なかなか侮れない敵であります。正直私igomasもまだドラマ版しか視聴していないので、今後説明や、新たな攻略法なども加えられるのかもしれませんが。

 

キュゥべえ

 『魔法少女まどか☆マギカ』に登場し、主人公まどか達を助ける、いわば魔法少女に仕える精霊のような存在。少女たちに、魔法少女の力を与える存在であり、魔法少女として戦って貰うお礼に、何でも一つ、少女の叶えたい願いを叶えてくれます。表情がいつも変わらず、口を動かさずテレパシーで会話する。

 その正体は、文明を高度に発達させた地球外生命体。母星から遠隔操作を受けて行動する生体兵器。正式名称をインキュベーターという。その星では感情というものが存在せず、彼らは極めて論理的思考のもと動いている。少女の願いを叶える代わりに、その少女の身体を屍(ゾンビ)とし、少女の精神を小さな小瓶に隔離。少女の身体をゾンビ化させ、精神体のみの存在にさせたことで、けがをしてもすぐに回復することが出来るようになる故、キュゥべえ自身は非常に良い取引だと考えているらしい。魔法少女はやがて絶望に飲み込まれ魔女と化し、その時に放出される膨大なエネルギーが宇宙のエントロピー問題を解決し、宇宙の存続を長持ちさせる。彼らの目的はつまりは、地球人の少女を名ばかりの契約を使って殺害し、絶望させ、化け物になったところで放出されるエネルギーを回収することにある。それでいて本人らに悪意の自覚がない。まぁ纏めてしまうと、自覚がない詐欺師。

 また、彼らは母星から操作される、いわば出来の良いラジコンのような存在であるから、倒されてもまた別のキュゥべえを使って行動すれば足り、無尽蔵に現れ続ける。物語内の地球では、宇宙に進出する技術が開発されていないので、彼らの母星に乗り込んでキュゥべえを倒すことも不可能。というわけで、かなり厄介な悪役なわけです。

 最終的な倒し方として、アニメ最終回で実際なされたのは、宇宙の法則・概念そのものを書き換えることで、キュゥべえの行動理念・目的そのものを無為にしてしまう、というもの。これにより、キュゥべえが滅んだわけではないものの、その悪事の連鎖を終わらせることには成功しました。こちらも、劇場版未視聴ゆえ、まだ倒し方として秘策はあるのかも。機会を見つけて見てみたいものです。

 

「たくさんいる」系の悪役はなぜ存在するか

 というわけで、「たくさんいる」能力を持った悪役三名の紹介でした。さて、再放送を含めると、ここ最近でこの能力を持つ悪役が立て続けに三名発生しているのは、果たして偶然の産物でありましょうか? まぁ、偶然なんでしょうが(笑)、うがった見方をすることもできます。というのも、今のご時世だからこそ、この能力がチョイスされたのではあるまいか、と。「たくさんいる」敵への恐怖というのは、現実世界でいうところの、ウイルスに対する恐怖と似ています。無尽蔵に、倒しても倒してもなお、しぶとく生き残るものに対する畏怖、それを作品で表す際に、「たくさんいる」能力は有用なのではないでしょうか。

 作り手が紡ぎ出す作品は、たとえ現実世界とはまるで離れた独自の世界観を持っていたとしても、主人公の性格・思想、悪役の形態を考える際に、そこに読者が、視聴者が共感できるリアリティを出すために、現実世界を参考にするのは自然の理。「たくさんいる」悪役は、では現実世界の何に着想を得たのかといえば、それはウイルスなのかもしれません。昨今、コロナウイルスにより外出自粛となる事態が起こっているからこそ、こういうタイプの悪役は、視聴者にも重く受け止められることでありましょう。まぁそれが、皆でコロナウイルスに立ち向かっていこうというメッセージを含んでいるとまでは言いませんが、何かしらの思いを我々に抱かせることは間違いないでしょう。「たくさんいる」系の悪役は、時事的にも、非常にタイムリーな考慮材料であると思った今日この頃でした。

 さてそれはそれとして、私igomasがどうしても気になるのは、「たくさんいる」系の悪役を出すには、作り手としてリスクが高すぎないかということ。「たくさんいる」系の悪役は、無尽蔵に増え続けるわけで、その無尽蔵を大きく超える力(たとえばキュゥべえであれば、いっそのこと彼らの母星に乗り込んで制御装置を破壊し尽くすとか)を導入しなければ、倒すことが出来ない存在であります。それは、作品に甚大なパワーインフレをもたらし、作り手にとってはかなり損になることが多いのです。この問題を回避するため、「たくさんいる」系の悪役は、作品の最後を締めくくるラスボスポジションになることが多い印象ですね。また、「たくさんいる」系の悪役を描く際の弱点は、「たくさんいる」という能力そのものが強力なアイデンティティとなってしまい、それに満足してキャラ描写を怠りがちになってしまうということ。作り手からすれば、細心の注意のもと作り上げていかねばならないキャラであり、非常に手の付けがたい悪役なのです。もし、悪役初心者の作り手の方々が悪役を考えるとき、「たくさんいる」系の悪役に取り組むのはおすすめしません。それほどに、難しいジャンルなのです。今回紹介した3作品は、そんな扱いづらいキャラを扱おうとしたそれだけでも、素晴らしいことだと思います。

 「たくさんいる」系の悪役。キャラは立つけど扱いづらい、絶妙なバランスの上に立つタイプの悪役。皆さんも、キャラの能力ごとに、その作品における役割を見いだしてみてはいかがでしょうか。意外と、面白い発見もあるかもしれませんよ。

 それではまた次の記事でお会いしましょう、igomasでした!