igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ロキとギャラファイ、比べてみた

 皆さんこんにちは!igomasと申します。先日、マーベルシネマティックユニバース略してMCUの最新作、ドラマ『ロキ』が最終回を迎えました。私自身、マーベルのファンということもあり、MCUは全作品チェックしているので、今作も当然の如くチェックしておりました。せっかくなので総括記事を書いてみたいと思います。本ブログでMCUを扱うのは何気に初でしょうか。

 

*注:これ以降はMCUドラマ『ロキ』のネタバレを含みます。『ロキ』未視聴の方は、まずDisney+で全話見てから読むことを強くオススメします。MCUってそもそも何?と思った方は、アイアンマンやアベンジャーズなどを見てから、ドラマを見ることをオススメします。

 

 さて、今回私がロキを本ブログで扱おうと思ったのには訳があります。というのも今作、ウルトラマンの新作である『ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀』と非常に比べがいがあるんですよね。『ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀』については、Chapterごとに記事をまとめてありますので、ぜひ読んでみて下さい。

igomas.hatenablog.com

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 『ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀』(略してギャラファイ)と『ロキ』には非常に似通った点があります。中でもかなり似ているな、と思えるのが以下の二点。

 

・どちらも『通常あるべき時間軸を離れた存在』が登場する。

《ギャラファイ》

 アブソリュートタルタロスなる人物が、過去へ行き、過去を改変。通常あるべき人生から道を外した『平行同位体』なる存在を生み出し、彼ら『平行同位体』を引き連れ光の国に攻撃を仕掛けてくる、という物語。

《ロキ》

 通常あるべきタイムラインから道を外した存在『変異体』を剪定する謎の組織TVA。彼らに捕らえられた『変異体』のロキは、自らが生き残るため、そして他の『変異体』を救うため、TVAに立ち向かう、という物語。

 

・完結しない

《ギャラファイ》

 アブソリュートタルタロスが人質をとる。光の国がピンチになって終わる。そして最後に続編製作発表がなされる。

《ロキ》

 恐るべき敵、カーンがTVAを一瞬のうちに掌握する。全宇宙がピンチになって終わる。そして最後に続編製作発表がなされる。

 

 以上を見ても、この2作品がとても似通っているのはおわかりでしょう。一応補足しておきますと、これは何もロキがギャラファイをパクったわけでは決してありません。むしろギャラファイがロキ(というかMCUそのもの)を丸パクリしたという点だけはご承知下さい(笑)

 まぁそんなわけで、ギャラファイもかなり物議をかもしましたが、今作ロキも、その結末は賛否両論。色々な意見が飛び交っています。かくいう私は、ギャラファイ完結時にはかなり激怒しましたし、未だにギャラファイはひどいシロモノだったと思っています。

 そんな私は、今作ロキをどう思っているかと言われれば、案外良い作品だったんじゃないかな、と思っています。もちろん、手放しに褒められる作品かと言われればそうではありませんが、しかしギャラファイに比べれば差は歴然。ロキはしっかりと一つの作品として成立していた、と私は考えています。

 今回は、私がなぜギャラファイを否定していながら、作品の構造としては似ているロキを推すのか、について話していけたらと思っています。

 

 まず、「なぜロキとギャラファイはどちらも、『通常あるべき時間軸を離れた存在』を取り扱っている作品なのに、両者で評価に差が出るのか」についてお答えしていきたいと思います。

 それは、至極簡単な話で、製作陣が設定とどれだけ向き合ったかの差であります。本来の時間軸からかけ離れた存在が、元の宇宙にどれだけの影響を及ぼすのか、どれだけの脅威になりうるのか、という点を、ロキは実に慎重に描いてきました。

 ロキという作品において、『変異体』を除去しないことによる損害は甚大です。『変異体』の存在は、新たな宇宙を生み出し、宇宙間で存亡を駆けた大戦争へと発展します。現に最終回にて、ロキは宇宙の分岐を無数に生み出してしまい、宇宙存亡の危機に陥ってしまいます。無数のカーンがマルチバースに溢れ出し、そのうち一体は一瞬のうちにTVAという組織を掌握してしまったのです。ロキは、『変異体』一人発生するということがいかに重大な問題か、ということに真摯に向き合っていました。

 翻ってギャラファイ。アブソリュートタルタロスは過去へ行き、ベリアルやトレギアの人生を変えてしまいました。そしてベリアル・トレギアを引き連れ現代に帰ってきます。このとき、アブソリュートタルタロスの向かった過去の世界からは、文字通りベリアルやトレギアの存在が一部抹消されたことになります。タルタロスの行った世界では、第一次ベリアルの乱や、タイガとトレギアの戦いなど、起こっていないことになるわけです。ゼロが活躍することも、ジードが生まれることもなかったはずなのです。タルタロスの通った宇宙というのは混沌に包まれるはずであり、『人(ベリアル)が一人いなくなった』というレベルの問題ではないのです。宇宙がまるごと作り替えられてしまったと言ってもいいくらい、大惨事なはずなのです。しかし今作、そういった問題には全く触れていません。風呂敷を広げるだけ広げて何の抑えもしていないのが、ギャラファイであります。結局ギャラファイは、過去改変、宇宙変革という、決してテキトーに描いてはいけないこのテーマを扱っていながら、全くその設定を活かしきれずに終わってしまいました。そもそもアブソリュートタルタロスが劇中通してやったことといえば「ユリアンを人質にとった」だけ。そんなこと、過去に行かなくたってできます。今作における『平行同位体』の重要性はゼロと言っていいでしょう。重要なテーマを扱っておきながら、描き方は実に杜撰であったといえます。

 また、『変異体』であるロキと、『平行同位体』であるベリアル・トレギアとでは、描写もかなり異なるということも抑えておきたいですね。どちらも、「本来自分が歩んでいたはずの未来」を見ることになるのですが、その過程が両者では全く異なります。

 ロキは、全編通してあくまで、自分の人生は自分で決めるというスタンスを取っており、実際彼は、自分の意思で自分の未来の映像を見ています。彼は自分でTVAの機械を動かし、自分の見たいだけ、じっくりと、自分の人生を見ていっていました。そして、TVAの言っていたことに嘘はないのだと確信するとともに、精神的に大きな成長を遂げるのです。

 一方でベリアル・トレギアは、突然干渉してきたアブソリュートタルタロスから、強制的に自分の未来の姿を見せられます。それを見て、全く疑うこともなく、二人はホイホイタルタロスについて行くのです。それからのベリアル・トレギアは、まるでタルタロスに従順な犬の如く、言われるがままに従う存在に成り下がります。ギャラファイのベリアル・トレギアは、絶えず他者の意思で動く傀儡と化しており、全くキャラに魅力がなくなってしまっています。折角の『平行同位体』という、調理次第で面白くなりそうな素材が、没個性的になってしまったのです。

 『変異体』と『平行同位体』とで、キャラの描写にも大きな違いがあったことが、理解いただけたかと思います。

 

 次に、「どちらも話の途中で完結してしまったじゃないか」という点。一見納得してしまいそうな意見ですが、少し考えてみれば分かるはず。ロキとギャラファイとでは、途中で終わった時に受ける思いは、まるで違うはずなのです。

 ロキでは、先にも述べましたが、終始「ロキの精神的な成長」を描いていました。自分勝手で横暴なあの「アベンジャーズのロキ」が、ダークワールドやラグナロク、インフィニティウォーでの出来事を受け止め、自分の弱さと向き合う第一話。変異体のシルヴィと触れ合うにつれ、次第に人のことを思いやれる人物になってゆく第三話。その後も少しずつ、ロキは成長してゆき、最後には自分を第一に考える利己主義的な立場から脱却。自分の置かれている状況、何をすべきかを客観的に判断し、自分の思いを差し置いてまで、より被害を少なくしようとするようになりました。最終的な彼は、もはやヴィランのロキではなく、まったくもってヒーローのロキ。彼の精神的な成長が、じっくりと丁寧に6話分かけて描かれたといってよいでしょう。

 一方でギャラファイ。第一部の主人公リブットは、精神世界で「なんか覚醒したっぽい」描写を入れた、程度の描かれようで、最終的にリブットを代表するあの武器も、ただのパワードとグレートからのもらいものだったという雑さ。第二部は……言わずもがなベリアル・トレギアの魅力を大幅に削ぐ演出の酷さ。第三部では、黒幕から真相を教えてもらうだけの話を描いて終わり。各部の主人公らは、精神的に成長したとは言えませんし、そもそも魅力がありません。唯一テレビシリーズから成長したといえばタイガでしょうが、「ヒロユキなしでトライストリウムに変身する」という、描くべき成長を本編で描けていないので、これもほぼ無為に期してしまいました。

 つまり、ロキとギャラファイ、両者は完結を待たずして途中で終わったことには違いないのですが、ロキが「ロキの成長」という大きなものを残した一方で、ギャラファイには何も残らなかったというわけです。ギャラファイは、正直この話まるごとなくても良かったんじゃなかろうか?と思われても仕方ありませんが、ロキはそうはなりません。ロキ、シルヴィ、TVA職員らの精神的な変化は、次作に向けて大きな布石となったはずです。

 それだけでは納得しない方もおられるでしょうから、もう一つ、二作が大きく違うポイントを示したいと思います。それは、「悪役の脅威」の差であります。

 ロキでは、征服者カーンが満を持して登場。宇宙は彼の意思のまま。ロキがサノスを倒す宇宙、アスガルドの王になる宇宙、どんな宇宙でも作り出せるという驚異の存在。これまであれほどMCU世界を混乱に陥れてきたインフィニティーストーンですら文鎮扱いの組織、TVA。最終話に登場した一人目のカーン(ヒーフーリメインズ)の死後無数に現れ、あっという間にTVAを支配してしまったカーン。とにかく視聴者をヒヤヒヤさせる、今までとは桁違いの上位存在カーンのオリジンとしても、非常に良く描かれたドラマでありました。

 一方アブソリュートタルタロスは、強者の凄みも一切なく、第一話から普通に登場。ウルトラマンレジェンドを前にあっさり逃げだし、ジョーニアスとは互角。自分に有利な空間の中でゼロと戦い吹き飛ばすも、ゼロのカラータイマーを点滅すらさせられない始末。作品通してやったことはユリアンを人質に取ったことだけ。やったことだけで言えばこれまで登場したポッと出の怪獣や宇宙人でもできるくらいの規模。

 カーンほどの脅威であれば、一作に収まらないだけのポテンシャルを持った敵でありますから、続編に続くというのも十分分かりますが、アブソリュートタルタロスには、2作に渡って活躍するほどの魅力や脅威はありません。

 ロキの批判のほとんどは、「まぁでも、カーン相手なら多少は仕方ないか」で済んでしまうほどに、カーンの影響力は絶大なものでありました。悪役の脅威の違いもまた、この「途中で終わった論争」に対する一つの答えなのではないでしょうか?

 

 ということで、以上ロキとギャラファイを比べてみました。ロキとギャラファイ、物語や設定は似ていても、製作陣の思いや描写の丁寧さの点で、二つは大きくかけ離れています。描写というものがいかに大事か、痛感させられる比較でしたね。

 さて、ロキはギャラファイと比べたら、比べものにならないくらい良いということをこれまで述べてきました。ではロキは手放しに賞賛できるくらい、出来の良い作品か、と言われると、それはう~んと首を捻ってしまいます。確かに、ロキの精神的な成長、カーンの脅威という上記の点で丁寧な描写の目立つロキですが、だとしても、視聴者に多少不満の残る内容ではあったかと思います。

 ということで次回、ロキという作品をさらに深掘りしながら、考察を進めていきたいと思います。本記事とはまた毛色の違った記事になると思われますので、お楽しみ下さい。それでは、また次の記事でお会いしましょう、igomasでした!