igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

MCUマルチバース解説Ver.1.0

 皆さんこんにちは!igomasです。

 ロキシーズン2、ザ・マーベルズが公開され、更なる盛り上がりを見せるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)。フェーズ4以降、マルチバースの概念が導入され、様々な宇宙のお話が展開されています。本日は、そんなマルチバースについて解説・考察していきます。どんな人でも、これだけ読めば全部わかる、そういう記事にしたつもりです。

 なお、今後MCU作品が新たに公開されていくたび、本記事はブラッシュアップされていくかと思われます。そのため、まずはVer.1.0としてお送りしたいと思います。

 それでは、さっそくはじめていきましょう!!

 

注) 本記事には、MCU作品のうち、『ロキシーズン2』までの作品についてのネタバレを含みます。また、映画スパイダーバースシリーズについてのネタバレも含みます。ご注意ください。

 

 

序章:マルチバースサーガとは

 まず、MCUというものについての大枠をザクッと纏めておきたいと思います。基本的なことはもう分かっているよ、という方は、第1章まで飛ばして大丈夫です。

・マーベル(MARVEL)とは

 MARVELとは、海外の漫画出版社、マーベルコミックスのことです。マーベルコミックスは、アイアンマン、スパイダーマンキャプテンアメリカ等のヒーローを主人公としたコミックを出版しています。日本でいう、週刊少年ジャンプを想像して貰えれば分かりやすいでしょう。ジャンプは、ワンピースやナルトなど、様々な主人公の漫画を出版していますよね。それと同じく、アイアンマンが主役のコミック、スパイダーマンが主役のコミック、などなど色々な作品を出版しているというわけです。

 MARVELがジャンプと異なるのは、それぞれのコミックが同じ世界観の中で起こっているということです。たとえば、ワンピースの舞台とナルトの舞台が同じ地球上にあって、ルフィとナルトが街でばったり会う、なんてことはないわけですよね。しかし、MARVELではそれが起こりえます。MARVELでは、我々の生きているこの地球とほぼ同じ地球が舞台になっています。スパイダーマンがニューヨークの街で敵と戦っている最中、ばったりアイアンマンと遭遇して助けてもらう、なんてこともあるわけです。

 我々の生きているこの地球とほぼ同じ地球、と言ったように、MARVEL世界では、我々の地球とほぼ同じ事象が起きています。スパイダーマンオバマ大統領と共演していますし、9.11同時多発テロの際にはヒーローが市民の救助にあたりました。キャプテンアメリカ第二次世界大戦の頃出版されたコミックのヒーローですが、実際コミック内で日本兵やドイツ兵と戦っています。だいたいのイメージは掴めたでしょうか。

 なお、スーパーマンバットマンといったヒーローは、MARVELではなく、DCというコミック出版社が出しているキャラクターです。ジャンプにコナンが登場しないのと同じように、MARVELにスーパーマンが登場することは基本ありません。

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)とは

 MCUとは、そんなMARVELの出版するコミックを、実写映画化した作品群です。具体的には、2008年に公開された『アイアンマン』を第1作目として、2023年現在まで続く作品シリーズです。MCUの特徴として、コミックの世界観をそのまま映画化している、という点が挙げられます。つまり、色んなヒーローを主人公とした映画があって、そのすべてが同じ世界観の中で起こっているということです。

 たとえば、アイアンマンが主人公の『アイアンマン』、キャプテンアメリカが主人公の『キャプテンアメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』、スパイダーマンが主人公の『スパイダーマン:ホームカミング』など様々な作品があって、その世界観はすべて同じということです。実際、『スパイダーマン:ホームカミング』には、アイアンマンやキャプテンアメリカがひょっこり登場します。

 なお、MARVELのコミックを実写映画化した作品は、なにもMCUに限られません。X-MENシリーズや、ファンタスティック・フォーなど、MCUとは別の作品シリーズです。

 ポイントはひとつだけ。MCUは、同じ世界観の中で起こっている』ということです。

 MCUX-MENシリーズの関係は、いわばワンピースとナルトの関係だと思ってください。まったく別の世界のお話なので、たとえばX-MENのキャラ、ウルヴァリンなどがアイアンマンに出たり、アイアンマンがX-MENの映画に出たりということはありません。X-MENの世界で地球が滅んでも、MCUの世界の地球が滅ぶことはありません。まったく別の世界観のお話なのですから。

 ちなみに、スパイダーマンは映画が3,4種類くらいあります。すべてスパイダーマンというコミックを実写化した作品ですが、MCUの世界観の中で起こっているのは、MCUスパイダーマンのお話だけということになります。ややこしい~

・フェーズとは

 MCUは、あまりに作品数が多いので、作品群ごとに一定の区切りが設けられています。

 2008年公開の『アイアンマン』から2012年公開の『アベンジャーズ』までの6作品を、フェーズ1と呼びます。その後、2013年の『アイアンマン2』から2015年の『アントマン』までがフェーズ2、2016年の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』から2019年の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』までがフェーズ3、2021年の『ワンダヴィジョン』から2022年の『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』までがフェーズ4。現在はフェーズ5となります。

 いくつかの作品をまとめた区切りがあるんだな~、くらいに思って貰えれば十分です。

マルチバースサーガとは

 フェーズ1からフェーズ3までが、インフィニティサーガ。フェーズ4からフェーズ6までがマルチバースサーガと呼ばれています。

 インフィニティサーガとは、6つの強力な石、インフィニティストーンを巡るお話で、最終的には6つの石すべてを集め、宇宙の生命の半分を消滅させようとするサノスと、アベンジャーズの死闘が描かれました。本記事では、ほぼこのインフィニティサーガの話は出てきません。ぜーんぶ忘れてオッケーです。

 さて、ようやくマルチバースサーガのお話です。

 マルチバースサーガとは、別々の世界観をもった世界が衝突する、というお話です。つまり、上で言った『MCUは、すべて同じ世界観の中で起こっている』という前提が崩れます。以下、詳しく解説しますね。

 読者のあなたの人生には、これまでも、そしてこれからも、様々な選択がついてきます。もしあなたが別の高校に通っていたら、もしあなたが教師になることを選んでいたら、もしあなたが別の人と結婚していたら。人生においてもし、別の選択をしていたら、そんな『もしもの世界』『可能性の世界』を、パラレルワールドと呼びます。マルチバースは、この、パラレルワールドのことだと思ってください。

 もしもアイアンマンが誕生していなかったら、もしも悪者なサノスがいいやつになったら。ドクターストレンジが闇の魔術に魅了されてしまったら、可能性の世界は無限に広がります。

 そして、想像を膨らませてください。もしもアイアンマンが存在せず、代わりに地球を守るヒーローとして、X-MENが存在する世界だったら……そう、そんな世界がもうあるじゃないですか。MCUとはこれまで世界観を共有してこなかった、もしもの世界、X-MENの映画シリーズが。

 想像してください。もしもMCUとはまったく別の、スパイダーマンが存在する世界だったら……あるじゃないですか、他のスパイダーマン作品が。

 このように、これまでMCUと世界観を共有してこなかったありとあらゆる実写映画を、MCUとは異なる世界、可能性の世界、パラレルワールドとして位置づけたのが、マルチバースサーガなのです。

 さらに、もっと想像を膨らませてみてください。そもそもその世界が3次元の『実写』世界じゃなくて、2次元の『コミック』の世界だったら?『アニメ』『ゲーム』の世界だったら?こう考えていくと、原作コミックやアニメ、ゲームですら、可能性の世界、マルチバースとして数えられてしまうのです。

 そして、もう一つ大事なことがあります。それぞれの世界で、必ずしも時代が同じわけではないということです。想像してみてください、もしも地球が誕生するのがもっと早かったら? その宇宙では、人間が早くに誕生し、早くに進化を遂げ、今は2099年かもしれません。他の地球は、今より未来の地球かもしれないのです。

 地球が誕生するかどうか、それもまた”選択”のひとつなのです。選択の数だけ無数に世界がある。そう考えていただければと思います。宇宙によって時間の流れが違う、というのは、今後の話を理解する上でかなり重要ですので、覚えておいてくださいね。

・アースとは

 マルチバースサーガでは、様々な世界観をもった宇宙が登場します。あまりにもたくさん宇宙が出てくるものですから、ややこしくて仕方がありません。

 そこで、それぞれの宇宙ごとに、通し番号というのがあります。それがアース番号です。MCUでこれまで語られてきた世界は、アース616と呼ばれています。他に、『ドクターストレンジ:マルチバースオブマッドネス』で出てきた宇宙は、アース838です。

 MCUスパイダーマン、トムホランドが演じているあのスパイダーマンは、アース616のスパイダーマンと呼ぶわけです。

・インフィニティサーガは忘れてください

 インフィニティサーガでも、別世界のようなものが出てきました。ドクターストレンジに登場したミラーディメンションやダークディメンション、アントマンに登場した量子世界などです。

 しかしこれらは、マルチバースではありません。すべて同じ世界観(アース616)の中にある場所です。混乱しないようにしましょう。

 まとめると、インフィニティサーガまでに登場した『別世界っぽいもの』は全部マルチバースではありません。忘れてください。

・変異体(ヴァリアント)とは

 マルチバースに存在する、同一人物のことです。今この記事を読んでいるあなたにとって、もしも教師になった世界のあなたは変異体ということになります。同様に、アース616のスパイダーマン(役者:トムホランド)にとって、それ以外の実写映画化のスパイダーマン(役者:トビーマグワイア、アンドリューガーフィールド)は、変異体ということになります。

・序章のまとめに代えて

 マルチバース(多元宇宙)とは、ユニバース(単一宇宙)の対義語です。

 マーベル・シネマティック・ユニバースMCUは、これまで世界観を共有したただひとつの世界でした。しかしこれからは、世界観を共有していない、別の宇宙が絡んでくるのです。それが、マルチバースサーガなのです。

 

第1章マルチバースの誕生(ロキシーズン2)

 マルチバースがいかにして誕生したのか、ロキシーズン2最終話を紐解きながら、考察していきたいと思います。この章は、かなりロキシーズン2を好意的に解釈したものになります。今後のMCUの作品次第では、記事に変更が入るかもしれませんが、今のところかなり納得感のある考察なのではないかと思います。

・在り続ける者(He Who Remains)とアライオス

 昔々、宇宙は単一宇宙ではなく、多次元宇宙でした。それぞれの宇宙は、別の宇宙があるなどつゆ知らず、それぞれ独自に暮らしていました。いわば、交わることのない平行な世界が複数ある、そんなイメージ。

 アース616にて、31世紀。ある男が、マルチバースの存在に気付き、マルチバース間を移動する装置を発明しました。後の在り続ける者、He Who Remainsです。それとまったく同じ時期、複数のアースの彼の変異体が、マルチバースの存在に気付き、同様の装置を作りました。ちなみに、先程も言ったように、マルチバースによって時間の流れは異なります。ですから、『同じ時期』の別の宇宙が、どれも31世紀とは限りません。ともかく、同じ時期に、彼らは交流を開始したのです。

 最初は友好的に接していた彼ら。それぞれの宇宙の知識や技術を共有し合い、協力していました。しかし、彼らの中には邪悪な心を持ったものが大勢いました。邪悪な変異体らは、新たに見つけた宇宙を自ら征服しようとしはじめたのです。

 邪悪な変異体が、積極的にあらゆる宇宙に攻め込んだのは言うまでもありません。しかしそれだけでなく、友好的な変異体すらも、自らの宇宙を守るため、防衛のために仕方なく、他の宇宙を消し去ることだってあったでしょう。そうなれば、友好的な変異体も邪悪な変異体も関係ありません。宇宙間の全面戦争が勃発しました。

 選択の数だけ宇宙がある。可能性の宇宙、マルチバースは無限に広がり続ける、と言いました。しかし、彼ら変異体の脅威はその増え続けるマルチバースをも上回っていました。マルチバースの数だけ彼らの変異体がいる。つまり、新しいマルチバースが生まれてもすぐ、彼ら自身の手によって、その宇宙は終わりを告げるのです。

 彼ら変異体により、新たな宇宙が増えるスピードより、減るスピードの方が格段に速くなっていきます。こうして、全てが破壊されそうになったのです。

 彼らこそが、後のマルチバースサーガのラスボス、征服者カーンです。

 その頃には、それぞれの宇宙が、カーンの作った装置によって結びつき、無数のマルチバースが、まるでもつれあった糸のように、ぐちゃぐちゃに絡み合っていました。もはやこれをほどいて元に戻すのは不可能にも思えました。

 さて、カーンの最初の変異体、在り続ける者(He Who Remains)は、ある生き物と遭遇しました。時空を食い尽くす怪物、アライオスです。在り続ける者はアライオスを操り、すべてのマルチバースを喰らい尽くし、その宇宙が初めからなかったことにします。残ったのは綺麗な一本の糸、アース616でした。こうして、多元宇宙間の戦争は終わりを告げるのです。その一本の糸こそが、神聖時間軸であり、マーベル・シネマティック・ユニバースなのです。

・TVA

 在り続ける者はこの戦争で、自らアライオスを使って戦っていただけではありません。あらゆる多元宇宙のメンバーを集め、TVAという軍隊を作り上げていました。共に軍を指揮していたのは、ラヴォーナ・レンスレイヤーでした。在り続ける者はTVAの職員に、アライオスの欠片を小型デバイスに閉じ込め、TVA職員に武器として配っていました。これが、砂時計のような小型デバイス、リセットチャージです。これを別の次元に配置すると、爆弾のようにその次元を喰らい尽くしてくれます。また、TVAに与えられていたもう一つの武器が、剪定棒、タイムスティックです。この棒により剪定されると、アライオスのいる虚無空間に送られ、あとはアライオスが食べてくれるという算段です。

 TVAの職員は、タイムドアを通って、時間軸のあらゆるポイントに現れ、様々な宇宙を滅ぼして回りました。

 また、在り続ける者は、TVAの支援AIとして、ミスミニッツを作成します。在り続ける者はこのAIに意思を与え、自分で自分をアップデートできるようにします。こうしてミスミニッツはどんどん人間味を増していき、最終的には在り続ける者に恋心を抱くのでした。

 かくして在り続ける者はアライオスとTVAを用い、戦争に勝利します。戦争終結の直前、在り続ける者はプロトコル42を発動。TVAの全職員の記憶を消し、自らは時間と隔絶された場所、時の終わりの城にて、誰にも知られることなく、一人で暮らすこととなります。彼にはまだ大仕事が残っていました。

 多元宇宙をすべて喰らい尽くせば、それでもう安全というわけではありません。選択の数だけ、可能性の数だけマルチバースは生み出される。新たな選択により、アース616から新たなマルチバースが生まれるのです。まるで枝のように伸びるそれは、放っておくとそのうちまた絡み合い、各宇宙で再びカーンが生まれ、全面戦争に突入です。だから、その枝を、剪定する必要があるのです。

 そこで、記憶を消されたTVAは、新たな役割を担うことになります。アース616に生きる者の新たな選択により、新たな分岐が発生することを止めるのです。リセットチャージと剪定棒を手に、分岐を剪定していくのです。

 何を神聖時間軸(アース616)として、守り続けていくのか。その選択はすべて、在り続ける者の手にかかっています。在り続ける者は、自分の存在が知られ、時の終わりの城に何者かが乗り込んで来て殺され、守るべき神聖時間軸を定める者がいなくなり、再び全面戦争がはじまることを恐れたのかもしれません。あるいは、自らの保身のためだったのかもしれません。ともかく、何か理由があって、在り続ける者はTVA職員の記憶を消したのだと思います。以降TVA職員には、タイムキーパーという名のロボットを通じて、命令を下していきます。

 なお、TVA職員は記憶が消される前の自分のことは何も覚えていません。ですから、TVA職員は、自分たちがはじめからTVA職員として生み出された存在だと思い込んでいます。そして、タイムキーパーを神と崇め、その指示通りに動いているのです。

 ミスミニッツだけは記憶が消されることなく、在り続ける者と共にTVAを陰ながら運営していました。そうしてどんどん恋がつのっていったようです。

・TVAの時間の流れ

 TVAの時間の流れは、現実世界の時間の流れとはまったく異なります。たとえばあなたが全11話の連続ドラマのDVDを買ったとしましょう。その連続ドラマは回想シーンなどが一切無い、時系列順で進んでいくドラマだと思ってください。あなたはそのドラマのDVDを、再生したり巻き戻したりして、どのシーンもいつでも見ることができます。

 ドラマの中では、第1話から第11話になるにつれ、時間が過ぎていきます。しかしリモコンを握るあなたは、どの話数を見ても良い。10月1日に第11話を見て、10月2日に第5話を見たとしても、ドラマの話数とは関係なく、10月1日の方が過去です。

 全11話のドラマの時間の流れ方が、MCUでいうアース616の時間の流れ、ドラマを見ているあなたの時間の流れが、TVAの時間の流れだと思ってください。

アース616の中では、紀元前1000万年が過去、31世紀が未来です。しかし、TVA職員が、10月1日に31世紀の分岐を剪定し、10月2日に紀元前1000万年の分岐を剪定したとしても、アース616の年代とは関係なく、10月1日の方が過去です。

 これ以降、前者をMCU時間、後者をTVA時間と呼び統一することにします。TVAの時間の流れの考え方は、今後に向けてここで抑えておいてくださいね。

メビウスとラヴォーナ

 TVAのハンターとして働いていたメビウスとラヴォーナ。ある日、変異体を剪定するため現場に向かったメビウスは、無邪気に遊ぶ8歳の少年を殺すことを躊躇し、剪定をとどまります。時間軸が分岐し変異体が増殖、ハンターが2人死亡します。

 最終的に変異体を代わりに剪定したのは、メビウスの同僚、ラヴォーナでした。ラヴォー名は大出世して判事になり、メビウスは捜査官になります。メビウスはこの剪定という重荷を背負うことを、心に決めるのでした。

アベンジャーズエンドゲーム

 さて、時が経ち(TVA時間)、新たな分岐が発生します。それは、アベンジャーズエンドゲームのお話でのこと。

アベンジャーズエンドゲームでは、サノスに消された宇宙の半分の生命を取り戻すため、アベンジャーズがタイム泥棒作戦により様々な時代に赴き、インフィニティストーンを集め始めます。

 2012年、『アベンジャーズ』のニューヨーク決戦にて、スペースストーンの入った立方体のテッセラクト、マインドストーンの入ったロキのセプター、このふたつを手に入れようとするアベンジャーズ。しかし階段を降りるハルクの妨害により、アイアンマンがテッセラクトを落としてしまい、回収できなくなる。ここまでは神聖時間軸で予定されていました。

 しかし、そのテッセラクトを使ってロキが逃げることは、予定されていませんでした。ロキは新たな分岐を発生させたとして、TVAに捕まる事になってしまうのです。

ロキシーズン1

 在り続ける者は、長きにわたり神聖時間軸の管理をしてきましたが、彼もかなりの老体。時間の管理をし続けることに疲れてきます。そこで、自身の後釜として分岐を剪定し、神聖時間軸を守り続けてくれる人物を探します。

 選ばれたのは2人。エンドゲームの一件で逃げ出したロキ(変異体L1130)と、女性版ロキことシルヴィでした。シーズン1で、ロキはTVA職員のメビウスと協力し、シルヴィの事件を追い、その中でシルヴィに恋心を抱きます。そして、TVAのタイムキーパーがただのロボットであることを看破した2人は、剪定棒によって虚無へと向かい、他のロキ変異体の助けを借りつつ、アライオスを沈め、時の終わりの塔へたどり着きます。そこで、在り続ける者と初対峙するのでした。

 在り続ける者にとっては、彼らのうち、どちらが欠けても駄目でした。2人揃ってこそ、任せられたのです。実際、シルヴィはTVAを深く研究し、TVA壊滅の糸口を掴みましたが、それを実行に移せたのはロキがいたからです。また、シルヴィの生命を操る力がなければアライオスを操ることは出来なかったでしょうが、そのトリガーとなる恋心を抱かせるのはロキにしかできませんでした。そして何より、神聖時間軸を任せるには、個人的なことにとらわれず常に大局を見ることのできるロキが必要でした。

 在り続ける者はこれまでの経緯を2人に聞かせ、神聖時間軸の管理を任せようとします。在り続ける者(カーン)は、簡単に言えば「未来が見える能力」を持っています。時間を自由自在に操ることができる、それがカーンの力です。その力を使って、在り続ける者はこれまで神聖時間軸を決めてきました。しかし、ある「境界線」を越えてからは、その先の未来を見通すことが出来なくなってしまいます。「境界線」を越えたとき、無数の分岐が一挙に発生し始めます。いち早く剪定しなければ再び無数のカーンが生まれ、全面戦争に突入してしまいます。在り続ける者は2人に、自らのタイムパッドを渡すのでした。

 しかしシルヴィは、これまでTVAから逃げ隠れて生き続けなければならなかったその復讐として、在り続ける者を殺害しようとします。これに対しロキは、神聖時間軸の管理を諦めれば、カーンの変異体が解き放たれ全面戦争に突入し、宇宙が消滅することを恐れます。二人は対立し、戦闘に。シルヴィは在り続ける者のタイムドアを使ってロキをTVAに送り返した後、在り続ける者を刃で殺害。在り続ける者は「近いうちに会おう」と言い残し、まるで死ぬことが大したことではないかのように振る舞い、死んでゆくのでした。

 時間軸は無数の分岐を繰り返し、もはや収集のつかない状態になるのでした。

・ワンダ&ヴィジョン最終話

 これまでは、神聖時間軸という、在り続ける者がしいたレールの上でしか、人は行動することが出来ませんでした。無数の選択によって「もしもの世界」「可能性の世界」が生まれることはなかったのです。選択をすること、つまり「自由意志」が認められていなかったのです。

 境界線を越えた後、無数の分岐が発生しました。自由意志が発生したのです。では、この「境界線」を越えた後、最初に自由意志を発現したのは誰だったのでしょうか。

 それは、ワンダ&ヴィジョン最終話のワンダと考えられています。ワンダは最終話にて、アガサハークネスと魔女対決をします。アガサハークネスは、他の人の魔力を吸収する力を持っており、ワンダはその力のすべてを吸い取られそうになります。

 しかしワンダは逆転。ルーン文字を用いてアガサハークネスの魔術を封じ、逆にアガサハークネスの魔力を全て吸収してしまいます。そしてワンダはついに、スカーレットウィッチとして覚醒するのでした。

 この、ワンダがスカーレットウィッチになった瞬間、天気は晴れなのに、雷の音が鳴っていることに気付いたでしょうか。そしてこの雷の音は、ロキシーズン1で「境界線」を越えたシーンでも鳴っているのです。

 「あなたはとんでもないことをした」「あなたは何を解き放ったのかわかってない」アガサハークネスの反応からは、本来起こってはならないことが起きた、そんな恐怖感がうかがえます。ワンダが、境界線を越えた直後、最初に自由意志を発現した人物なのかもしれません。いやむしろ、ワンダこそが、この「境界線」を破り無数の分岐を生み出し、混沌をまねく原因となった人物なのかもしれません。だからこそ、ワンダ&ヴィジョンが、マルチバースサーガの最初の作品になっているのかも、しれませんね。

・在り続ける者と時間織り機

 ロキシーズン1の最後で、在り続ける者は、シルヴィに刺されて死にました。もちろん、これで終わるわけはありません。彼は、自分が生き残るための計画を既に立てていました。その鍵となるのが、TVAの中枢を担う巨大な装置、その名も「時間織り機」です。

 時間織り機は、分岐して無数に広がったマルチバースの糸をたぐり寄せ、編み上げ、一本の糸にして安定させる装置です。表向きの役割は、あらゆるマルチバースの調和を保ち、平穏を守る、そんな装置でした。しかし実際の役割はその真逆。時間織り機は、実は神聖時間軸を守るためのただの安全装置でした。

 無限に増え続けるマルチバースの糸は、いずれ織り機では処理できないほど膨大な量に増えます。そうなると織り機は過負荷状態になり、強制的に神聖時間軸以外の時間軸を消し去る「フェイルセーフ・モード」へと移行するのです。

 簡単に言えば、時間織り機は、マルチバースが増えたことを感知して、マルチバースを一斉消去するための巨大爆弾だったのです。

 残念ながら、この織り機の爆発を止めることはできません。たとえロキシーズン2第4話のように、織り機の処理速度を上げようとしても、マルチバースの無限に増える速度にはかないません。どうあがいても、織り機は過負荷状態になり、過負荷状態を検知すれば、織り機は爆発します。マルチバースが解放された時点で、神聖時間軸以外の時間が消し飛ぶことが決まっているのです。ちなみに、このフェイルセーフ・モードは神聖時間軸(アース616)以外の空間はすべて神聖時間軸の脅威と見なし、強制的に消し去ります。ですから、アース616を外部から管理するTVAもその例に漏れず、消去されることになります。在り続ける者は、自らが作ったTVAすらも犠牲にして、神聖時間軸を守る装置を作ったわけです。

 時間織り機は、様々なマルチバースのうち、神聖時間軸(アース616)を主軸として編み上げています。時間織り機は、常に神聖時間軸を固定し、他のマルチバースから守り続けていたのです。時間織り機がなくなれば、いずれマルチバースの糸同士が衝突して、先述のマルチバース戦争が起こり、アース616が消えてしまいかねないのです。

 在り続ける者は、ロキにこの時間織り機の重要性を分かってもらい、ロキが自らの意思で、在り続ける者に代わって神聖時間軸の守護者になることを望んでいました。だからあえて自分が殺されて、その後の世界をロキに見せたのです。

 在り続ける者の作戦はこうです。①ロキに時間移動の力を与える。②自分が死んだ後の世界を見せ、織り機の重要性をロキに理解してもらうとともに、在り続ける者を殺したのは失敗だったと悟らせる。③ロキが時間移動の力を使って、在り続ける者が殺されるのを阻止しに過去にやってくる。④自分は生き残って神聖時間軸も守られる。

 特に②は作戦の根幹です。織り機の重要性をロキに理解してもらうためには、「織り機の処理速度を上げても織り機は爆発する」ことを実演して、ロキに「結局他の時間軸を剪定する他ない」と絶望させなければなりません。つまり、織り機の処理速度を上げられるだけの技術者が必要になります。

 ロキシーズン2は、この在り続ける者の作戦にそって物語が進んでいます。さっそく第1話から振り返ってみましょう。

・1度目の時間移動

 第1話は、作戦の①、在り続ける者がロキに時間移動の力を与えるための計画です。

 在り続ける者のタイムパッドを使ってシルヴィが作ったタイムドアを通って、ロキはTVAにもどされます。そして、そこがTVA時間でいう”過去”のTVAであることに気付きます。同時に彼の身には、時間移動(タイムスリップ)現象が起こっていました。

 思うに、在り続ける者が、自分のタイムパッドに細工して、”過去”のTVAにロキが移動するように仕掛けていたのでしょう。そしてロキが過去に移動すれば、タイムスリップ現象が起こるということまで計算ずくだったのでしょう。

 ロキはメビウスを頼り、TVAの機械系を管理する、O.B.(ウロボロス)を尋ねます。ウロボロスは「TVAでは時間移動は不可能」と言います。時間の概念の外にあるTVAで、普通タムスリップは起こりません。ここでいう「時間」とは、MCU時間のことを表します。先程の「ドラマとリモコン」の例えで説明してみましょう。たとえば皆さんがテレビドラマを見ているとき、バックトゥーザフューチャーのように、ドラマの中のキャラがタイムスリップをすることがありますよね。でも、だからといってそれを見ている我々が、現実世界でタイムスリップをすることは不可能ですよね? 同様に、TVAはMCU時間を外部からコントロールすることはできるけれど、TVA時間の中でタイムスリップをすることはできないのです。

 しかし、現実にロキは時間移動を繰り返しています。解決策としてO.B.が提案したのは、ロキが自分を剪定して、一度時間と空間の糸から自分を引き剥がした後、メビウスが時間織り機にセットした時間オーラ抽出機を使って、(TVA時間の)”今”にロキを引っ張ってくるというもの。メビウスは皮膚が剥がれそうになり、ロキはスパゲッティ化の危険がありましたが、2人とも無事作戦を成功させ、ロキの時間移動は元に戻ります。

 この時点で既にロキは時間と空間の糸から引き剥がされた特異な存在になっていたのだろうと思います。だから、ロキは後に2度目の時間移動をすることができたのでしょう。

・ビクタータイムリ

 在り続ける者の作戦の②を実行するためには、織り機の処理速度を上げるための技師が必要でした。そこで在り続ける者がウロボロスと合わせて用意したのが、カーンの変異体の一人、ビクタータイムリーでした。

 ここで、公式からあがっているひとつのショート動画を見ていただきたいと思います。

Marvel Studios’ Loki Season 2 | Butterfly Effect - YouTube

 簡単に言えば、ちょっとの分岐イベントを加えるだけで、蝶が怪獣に進化してしまうほど歴史に影響が出る、という動画です。わずかな変化を加えるだけで、その先の世界がまったく別の世界になってしまうという、バタフライ効果の説明ですね。重要なのは、分岐イベントによって、「蝶が怪獣になった」ということです。

 在り続ける者はこの現象を応用したのです。つまり、適切な時間に、適切な分岐イベントを生じさせることで、「カーンでない者がカーンになる」のです。彼は、神聖時間軸の1868年にいたビクタータイムリーという青年を、「窓からTVAガイドブックを投げ入れる」というごく簡単な分岐イベントによって、カーンの変異体へと変化させたのです。

 こういうカーンの増やし方もあるのか、とかなり驚かされたシーンでしたね。

 さて、紆余曲折あって無事ビクタータイムリーを仲間に引き入れたロキたちは、ビクタータイムリーとウロボロスを協力させ、時間織り機の処理速度を上げてもらいます。

・2度目の時間移動

 しかし、ビクタータイムリーとウロボロスが処理機倍増装置を作ったときには、時既に遅し。織り機が過負荷状態になり、爆発してしまいます。TVAは消滅しますが、1度目の時間移動で時間と空間の糸から引き剥がされたロキだけは消滅せず、再び時間移動の力を手にします。

 ロキはなんとか時間移動を制御して、時間織り機の爆発をなかったことにできないか、と考えます。ロキは別アースの、在り続ける者によってTVAに引き抜かれる以前のウロボロスに出会い、彼からヒントを得ます。簡単にいえば、織り機が爆発したときにいたメンバーをダウジングマシン代わりにして、ロキが時間移動することで、織り機爆発の時点にピンポイントで移動することができるのではないか、という作戦です。

 ロキはあらゆるアースを駆け巡り、在り続ける者に引き抜かれる前のTVA職員たちを探し回ります。織り機爆発によってあらゆるアースは消滅中なので、残された時間はほとんどありません。すべてのアースが消滅し、すべての変異体である元TVA職員たちが消滅しかける最後の瞬間、ロキはシルヴィから言われた言葉を思い出します。ロキが本当に守りたいのは宇宙ではなく、TVAの仲間達との思い出だったのです。ロキは仲間のことを思い、ついに時間移動の制御に成功します。

・ロキの過去移動

 時間移動の力を制御したロキは、織り機の処理速度を上げる作戦を成功させようと尽力します。何世紀にもわたる時間移動の努力の結果、織り機の処理速度を上げる作戦は成功します。しかし、先述の通り、織り機の処理速度を上げたところで、織り機の過負荷状態は避けられず、結局織り機は爆発してしまいます。

 ロキは絶望し、在り続ける者の作戦通り、在り続ける者の死の直前まで、タイムスリップすることになるのでした。そうしてロキは、在り続ける者のしいた道を歩かされただけだったと気付きます。

 在り続ける者を殺し、マルチバースが広がるのを放置すれば、織り機が過負荷状態になり爆発。結局神聖時間軸以外のマルチバースは消滅し、その上ロキの大事な仲間であるTVA職員も消滅してしまいます。

 TVA職員を守るために、在り続ける者を生かし、マルチバースを剪定し続けるか、それとも在り続ける者を殺し、TVAも失い、マルチバースも消滅するか。どちらを選んでもマルチバースは滅びます。それならTVAを救うため、ロキはマルチバースを剪定するしかない。これが、在り続ける者の計画でした。

 ここで、ロキは第3の選択肢を提示します。時間織り機を破壊してはどうかと。たしかに、時間織り機を破壊すれば時間織り機が爆発することはなくなり、TVAは消滅せず、マルチバースも消滅しません。考え得る限り最高の手段にも思えます。

 しかし、時間織り機を壊すというのは、そう簡単な話ではありません。先程言ったように、時間織り機は主軸として神聖時間軸(アース616)を編み上げ、神聖時間軸を常に見張っている、そういう装置です。時間織り機が破壊されれば、神聖時間軸がもはや特定できなくなり、マルチバース間の衝突により消えてしまうおそれがあります。そうなれば、我々が見てきたMCUのあの宇宙、すなわち、アイアンマンから始まり、アベンジャーズが結成され、サノスを打ち倒したあの宇宙そのものの存在が消えてしまいかねないのです。当然、ロキの生まれ故郷たるアスガルドや、兄のソーの存在すら抹消されることになります。

 また、当然ロキシーズン1で言ったように、マルチバースが解放されるということは、無数のカーンが誕生するということです。そして、最悪の場合、マルチバース間戦争が起き、すべての宇宙が滅ぶ可能性があります。時間織り機の爆発は、マルチバースを消滅させるとはいえ、神聖時間軸だけは残る、そういう機能がありました。しかし、マルチバース間戦争が起これば、もはやひとつの宇宙も残らない、もっと酷い事態になりかねないのです。

 ロキは悩み、時間移動を使って、シルヴィやメビウスに助言を求めます。彼らの口から出た言葉はロキには意外な言葉ばかりでしたが、しかしとても納得のいく言葉ばかりでした。「安らぎなんてない。どの重荷を選ぶかだ」「時には破壊することも必要、もし破壊したものよりもっといいものを作り出せるなら」。ロキはついに、時間織り機を破壊し、神聖時間軸の平穏に区切りをつけることを決心します。

ロキシーズン2最終話

 時間移動を完全にものにし、時間織り機の放射線にも耐えるロキ。彼は時間織り機を破壊し、マルチバースを解放します。しかし、解放されたマルチバースの糸は、時間織り機によってまったく編み上げられていない、実に虚弱な状態。糸がほころんで今にも消えてしまいそうになります。

 ロキは、自らの魔力をマルチバースの一本一本の糸に送り込み、マルチバースが消滅するのを防ぎます。そうしてロキは、時空の裂け目から、時の終わりの城へと消えてゆくのでした。

 マルチバースの糸は、実に弱々しく、一度ロキが手を離してしまえば、すぐほころんで消滅してしまいます。だからこそ、ロキはありとあるマルチバースを片時も手放すことなく、魔力を送り続ける人柱とならざるを得ませんでした。

 時の終わりの玉座で、独り寂しくたたずむ彼は、しかしどこか満足げな表情で、マルチバースを守り続けるのでした。その様子はさながら、世界樹ユグドラシルのように、綺麗なものでした。

 こうしてMCUの世界に、ついにマルチバースが誕生したのです。

・ロキのその後の課題

 時間織り機が壊れ、マルチバースの糸が虚弱になった今、ロキが魔力を流し続けなければ、マルチバースは存続することができません。しかし、時間織り機に代わる、何かマルチバースの糸を編み上げる装置が作られたならば、マルチバースの糸は補強され、ロキを解放することができるでしょう。

 シルヴィがマルチバースをたぐり寄せるロキを見て、「チャンスをくれてる」と言います。これはもしかしたら、「時間織り機が壊れ、次の装置が作られるまでの間、ロキが人柱となってマルチバースをつなぎ止め、マルチバース宇宙に自由選択をさせるチャンスをくれてる」という意味なのかもしれません。シルヴィは時間織り機にかわる、新たな装置を作る旅に出るのかもしれません。

 TVAは、これまでマルチバースを消滅させるため、変異体を剪定していましたが、これからはまったく別の仕事が待っています。あらゆるマルチバースを消滅させんとする征服者カーンを、倒す任務です。

 

第2章 To be continued…

 

いったんのまとめに代えて

 さて、アントマン&ワスプ クアントマニアや、ドクターストレンジマルチバースオブマッドネスなどなど、マルチバースのお話はまだまだ語りきれませんが、いったんここでペンを置きたいと思います。ここから先はMCUマルチバース解説Ver.1.1で追記していこうと思います。

 

 ドラマロキについては、全体を通して、かなり辻褄の合う考察になったのではないかと思います。ドラマロキの部分についても、今後情報が解禁され次第、修正が入っていくかもしれません。こういう考察も考えられるんじゃないか、こういう考察を見つけた、などなどコメントしていただけると、有り難いです。

 それでは、また次の記事でお会いしましょう、igomasでした!

 

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