igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ウルトラマンジードで開けた、宇宙人論

 最近進めているニュージェネレーション考察。今回は、2017年7月より放送されたジードより、近年の宇宙人の扱いについて語っていきたいと思います。ジードは、かのベリアルの息子という出自という設定をメインに押し出し、運命に立ち立ち向かう、常に明るい少年、朝倉リク(ジード)を主人公とした作品でした。
 今作には防衛隊は登場せず、代わりに宇宙の秩序を守るAIBという組織に、地球人の愛崎モアが所属している、という作りでありました。テレビ本編、劇場版では主に彼らが、地球で犯罪行為を働く宇宙人を取り締まり、追放しています。
 今作に登場する宇宙人の多くが、このAIBに所属する者か、AIBに追われる者として登場します。今作から(正確にはオーブ劇場版からですが)、宇宙人のほとんどが私服を着ている状態がデフォルトになりました。もう私服の宇宙人が出てきても気にしないって人は多いんじゃないでしょうか。不法滞在をしている、細々と暮らしている、といった宇宙人の生活感も、今作で方向性が決まり、つづくルーブ、タイガにも踏襲されています。
 この記事では、そうした、「ウルトラ作品における宇宙人の扱いの変化」を取り上げてみたいと思います。

 

グッドポイント

 そもそもなぜこのような、私服を着た宇宙人が多くなったのか、ですが、それはおそらくスーツの持ちの問題からでしょう。撮影に使われるスーツは、やはり消耗品であり、何度も使っているとスーツがクタクタになって、テレビで使えないほどになってしまいます。しかし、頭や手足の先だけであれば、スーツとして使えるな、というものも沢山あるわけです。宇宙人は怪獣に比べるとアクロバティックに動くことが多いですが、頭や手足の先だけ使うなら、何の問題もないでしょう。スーツが消耗しても、私服を着せておけば宇宙人は割と使い回しがきくわけです。
 これにより、胴体部分がだめになった宇宙人のスーツも、劇中で使えるようになり、宇宙人をわんさか登場させることが可能になりました。これまでの作品では宇宙人が大勢一堂に会するって描写が出来なかったので、良い画が撮れますね。
 また、怪獣のスーツで駄目になったものも、頭部だけ借りてきてちょっと手間を加えるだけで、新宇宙人として登場できるようになりました(クラカッチ星人、ガルメス人、ドーブル星人など)。
 個々の宇宙人に、近年名前がつくことが多いですが、これにより同じ宇宙人の見た目でも差別化が可能になりました。さらに、着ている私服が変わると別の人物だとわかりますから、個々に名前が違う最近の状況と実にマッチしているといえるでしょう。

 

バッドポイント

 これらの長所がある一方で、この「宇宙人の描き方の変化」には問題点も残っています。
 まず、昭和宇宙人と平成宇宙人(厳密にはティガ~メビウス期の宇宙人)で扱いに格差が起きているということ。人気のある昭和宇宙人は、スーツを新規造形してでも全身で登場させますが、平成宇宙人は、新たに作り直すということもなく、消耗するだけの扱い。全身で残っているのはスラン星人くらいになりました。
 そもそも、宇宙人を全身で造形せず、私服着せとけってのはどうなの?という意見もあるでしょうね。全身に工夫の凝らされた、数々の素晴らしい造形の宇宙人を見てきた古参ファンからすれば、私服の宇宙人というのは違和感の塊で、どうもしっくりこないのは当たり前なのかもしれません。ウルトラ50年の歴史においてほぼ初めてみたいな試みですから、そんな私服宇宙人を受け入れる方向にすぐ頭がシフトするはずもなく。古参ファンほどすんなりと受け入れがたいものがあるでしょう。
 それから、これはネット上で提示されていた意見でありますが、「宇宙人らしさ」がなくなったこと。宇宙人とは、元来地球人の理解の範疇を超えた存在であるはずで、最近の宇宙人はどうも生活感と良いしゃべり方といい、地球人に非常に似通った生活スタイルになってしまった、そのため宇宙人としての魅せ方ができなくなってしまっている、というものでした。確かに、そういう問題点もあるとは思います。ジード劇中でいうと伏井出ケイやゾベタイ星人といった、地球人と見分けのつかない宇宙人も、宇宙人らしさが無くなっていることに拍車をかけているのかもしれませんね。
 あと、お手軽スーツ改造でわんさか宇宙人が作れるようになった&人間の見た目の宇宙人大量追加により愛着が失われたのか、宇宙人に焦点をしっかり当てた話ってかなり少なくなりましたね。オーブのババルウ星人回とかはそうですが、個々の新宇宙人に焦点を当てることは皆無になったし、新怪獣はスーツ全身作るのに、新宇宙人をスーツ全身で作ろうってこともなくなりましたね。新宇宙人が全く作られず、宇宙人は全て過去の遺産に頼っているのはそれはそれでどうなのか。最近の宇宙人事情は、巷でよく騒がれている『過去ウルトラマンに頼りすぎ』より酷い状況になってますね。

 

最後に

 以上、今回はウルトラマンジードあたりから顕著になった、宇宙人の扱いについて考察していきました。まぁここまで確立されると近年の宇宙人描写もこれはこれであり、とは思いますが、私igomasは未だに慣れていません。とはいえ、長所短所様々あるものの、私服宇宙人というアイデア自体は円谷の生存戦略として理にかなっており、伸ばしていってほしいところ。これからこの宇宙人の見せ方がよりブラッシュアップされ、巧い魅せ方ができるようになってくればいいですね。それではまた、次の記事で!