igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ウルトラマンZ第5話感想 デッドリー・ジャグリング

 皆さんこんにちは、igomasです。ウルトラマンZ第五話感想、やっていきましょう!

 

 

第一の劇薬

 作品を見る前に、今回の注目ポイントを。第五話では、ついにジャグラスジャグラーが登場します。4年前のウルトラマンオーブのメインヴィランですね。

 普段私igomasは、作品構造論を持ち出して、作品を評価する際の一助としていますが、今回のジャグラーは、作品構造論では語れない、いわば劇薬のような存在であります。その存在一つで、作品の形態を大きく変えてしまうのが、劇薬。上手くはまれば作品全体の良さをグッと数段階上へ押し上げるものの、使い方を誤ると作品全体の構造を崩してしまいかねないという、非常に扱いの難しい存在です。

 そんな大きな影響力を持つ存在ですから、作品構造論などという細かいことはいちいち言っていられません。前回の感想記事で、登場人物同士の関係を描けるかが大事だとか、監督間で連携がとれているかが大事だとか、色々言いましたが、今回に関してはそんなことはどうでもいいのです。 どれだけ作品構造が上手かろうが、劇薬の扱いに失敗しては元も子もありませんから。第五話に限っては、製作陣は、劇薬の扱いというその一点に、全神経を集中して取り組むべきでありましょう。

 果たしてゼット製作陣は、この扱いの難しい劇薬を、上手く作品に落とし込めたのか、というのが、今回の注目ポイントです。それでは、第五話本編を、見ていきましょう!

 

第五話

 北米・アラスカ山脈にて、地を裂き現れる冷凍怪獣、ペギラ。スーツは、ウルトラギャラクシーファイトに登場したものでしょうね。

 近年では、氷属性の怪獣は、吹雪の描写など、特撮にお金がかかりすぎるということで、なかなか登場しなかったのですが、冒頭のこのシーンでは久しぶりに氷属性怪獣らしい特撮が見られましたね。冒頭数十秒のみ、という事情もあってか、CG技術の発達によるものかは分かりませんが、久しぶりの氷原特撮で、非常にわくわくしました。

 一方、ハルキとオオタユカ隊員は、アラスカで発見された古代石器について語り合っていた。単なる杭にしか見えない、と言うハルキに対し、「まじ信じらんねぇ」という顔で、こんな加工技術この時代じゃあり得ない、ものすごい発見だよ! とつっこむオオタユカ。それぞれのキャラを織り交ぜながら新武器を作品に関わらせる、自然な見せ方。

 寒そうな様子のナカシマヨウコ隊員に、だじゃれを言いながらアッサムティーを勧めるヘビクラ隊長。なにげに、ジャグラーにはコーヒーのイメージが強いので、ここの紅茶推しには若干違和感。ヘビクラ隊長のだじゃれを経てのストレイジ4人の反応はとても自然で、四話分で築き上げてきたキャラ描写が、しっかり生きています。

 市街地に突如雪が降り始め、見上げると空に怪獣が、というこの辺りの見せ方も好み。ペギラが市街地に登場し、OP。マジャッパかわいい(笑) あと、OPにてウインダムのシーンが追加されましたね。

 ペギラに対抗するため、ウインダムが出撃。このウインダム出撃は、かなり手が込んだカットでしたね。第二話でのセブンガー出撃とはまた違った味を出してきて、さすが辻本監督。なにげに前回触れませんでしたが、主人公らが普段過ごす部屋と特空機格納庫が隣り合わせになっていて、ウインダム出撃を眺めるヘビクラ隊長が映える映える。

 場面変わって、吹き飛ぶ車w 前回に引き続き、辻本特撮は車が飛びますねぇ。飛ばされた車が宙を舞い、地面に激突。ペギラに踏み潰されると、なかなか凝った特撮。車のルームミラーに、ちらりと物が見えたりするのも芸が細かい。やたらゆったりと長めにこのシーン撮ってるな、と思いましたが、これは「超低温になると無重力状態になる」ことを表しているとか。ペギラの冷凍光線をかわすウインダム、強い。

 ペギラと例の古代石器が、どちらもアラスカ由来であることから、両者に関係があるのではと疑うオオタユカ。古い文献の記述を発見し、例の古代石器はペギラを封印するものではないかと推測。古代石器がある、研究所が危ないと告げるオオタユカ。いくら古い文献にそれっぽいことが書いてあるからと言って、ペギラと古代石器を強固に結びつけるにはまだ早いのでは、と思いましたが、その研究所が避難場所になっている、というフォローが入ります。次に怪獣に狙われるかもしれない場所が避難場所になっているなら、確証がなくても危ないと考えるのは、当然のことですものね。この辺りのフォローは、実にしっかりやっています。

 ペギラの進行を食い止めるため、ハルキの援護射撃とウインダムで、協力してペギラを攻撃。しかしペギラの冷凍光線はあまりに強く、ナカシマヨウコ隊員がピンチに。ヘビクラ隊長も現場に向かいますが、オオタユカに「ここは頼んだ」と言った直後、不適な笑みを浮かべています。

 「ヨウコ、退避して! これ以上は危険!」と言うオオタユカに対し、「ここで引くわけにはいかない。あの怪獣を食い止めてその間に一人でも多くの人を、助けないと。それが私の仕事だから!」と答えるナカシマヨウコ隊員ですが、どうもナカシマヨウコの仕事観が、唐突ぎみ。これがまだ正義を守るヒーローとしての発言なら分からなくもないのですが、「それが私の信念だから!」ではなく「それが私の仕事だから!」と言っている辺り、仕事人間としての発言という感が強く、過去4話を見るに、ナカシマヨウコ隊員に、強く優しいしっかり者の上司、というイメージはあるものの、仕事人間というイメージまではないために、やや唐突に思えてしまいます。先程の「勘弁してよ私冷え性なの」発言のゆるさも相まってか、一見ヒーローっぽいことを言っているのに、なんだか劇的に見えない、という事態に。

 ナツカワハルキはゼットに変身し、援護しようとするも、そこに背後から現れる、ジャグラスジャグラージャグラーはハルキからゼットライザーを奪い、去って行く…

 これ、隊長が、死にかけの隊員と自分の楽しみを天秤にかけ、自分の楽しみを取った、ということになるのですが…? 困惑が止まらない。

 ジャグラーに逃げられ、周りに誰もいないのに一人、「ゼットライザーを、ゼットライザーを返せぇ!」と叫ぶ主人公。隊長に見捨てられ、死にかけるヨウコ。「ゼットライザーを返せぇ!」と叫びながら、蛇腹の道をさもかっこよさげな感じで降り、そのまま元の場所へ戻ってくる主人公。なんだかとても、残念なことに…このシーン、公園の遊具でバタバタ遊んで帰ってきた子供の図を思い出して、正直ちょっと、ダサい。

 隊長に見捨てられ、死にかけのヨウコを見て、自分の無力感にさいなまれるハルキ。死にかけてもなお諦めず、「絶対に守る…みんなを…それが、私の仕事だから」と力を振り絞ろうとするも、もう体力は残っておらず、手をだらりと垂らすナカシマヨウコ隊員。その声を聞いて、ハルキは、「そうだ、まだ何か出来るはずだ。俺だってパイロットじゃないか」と、セブンガー格納庫に向かうハルキですが……いやその前にあんた、銃持ってるんだからまずそれで戦えよ、と。まだ出来ることがあるはず、戦わなきゃ、という強い情熱はあるのに、銃じゃ太刀打ちできないから(ヨウコ先輩死にかけだけど)一旦この場は離れて、セブンガーで出撃するか、と、妙にその思考は冷静で、まぁどんなときでも冷静な判断が下せるのは戦闘員として良い心構えではあるのですが、ハルキのイメージと妙にずれ、気になるところ。

 一方ジャグラーは、蛇心剣の力を使い、ウルトラゼットライザーから、ダークライザーを生成(複製)。そんな簡単に複製できるなんて、ウルトラの国のセキュリティも甘いな、とか色々思うところはあるのですが、なにより、おいお前部下見捨てて何やってんだよ、というのが気になって、そんなことを言っている場合ではないダークライザーにゼットンパンドン、マガオロチの怪獣メダルが既にセットされており、まぁ、色々と察しました。

 無茶な戦いであったとしても、ナカシマヨウコを助けるため、セブンガーで出撃するハルキ。「このペンギンやろー」は笑いましたw どう見てもペンギンには見えない(笑) 建物の中から倒れるペギラを見る特撮。最近ではよく見ますが、こういう建物の中からの特撮は割と好み。

 強敵ペギラに対し、なかなかセブンガーが善戦しており、さすが主人公、なんやかんやでやるときはやる。ここのセブンガー戦闘シーンは、素直にかっこよかったですね。オオタユカに「ハルキ早く脱出して!(じゃないとお前も二の舞になるぞ)」と言うのに対し、「ヨウコ先輩はギリギリまで諦めなかった。人々を守るためには、自分の身をかえりみない、それがプロだ!俺も、俺もプロでいたいんです!」と答えるハルキ。これも、先程のナカシマヨウコのセリフについてと同様ですが、あまりにハルキの仕事観が唐突。この発言も、「それが戦士だ!」とかならまだ分かるけど、「それがプロだ!」は仕事人としての側面が強く、さすがにハルキにはそんなイメージが皆無なので(というか普段からプロ意識が低いので)、ものすごく唐突。「俺も、俺もプロでいたいんです!」はそもそも話の本筋がズレていて、人々を守りたいから戦い続けるのではなく、プロでいたいという願望からだだこねて帰還しない、という側面が出てきて、その発言はいいのか主人公。

 結局のところ、この「自分を犠牲にしても、人々を守るため立ち向かう。それが自分の仕事だから!」という考えは、あまりに唐突すぎて、むしろ出さなくて良かったのでは、と思うところ。また、そうしたプロ意識をもつ隊員たちを束ねる隊長本人が、自分の楽しみのために部下(他者)を犠牲にしているため、大変説得力がないと同時に、とてもヘイトが溜まります。

 セブンガーの背後から射出される炎でウインダムの氷を溶かし、ハルキはジェットパックで直接ウインダムの中へ、と、ここで唐突なアイゼンテックw このシーン、「人々を守りたいんです!」と言った直後なのに、セブンガーを放棄して、ペギラを放っておく(つまり一般市民を少しの間危険にさらす)という行動を取るのが、一見凄く矛盾していて困惑したのですが、セブンガー出動時に「ヨウコ先輩を助けたい」発言をしていること、セブンガーのロケットパンチをしっかりセッティングしていることなどを考えれば、まぁ十分納得はできるかな、と思ったシーンであります。

 ペギラの冷凍光線の直撃を受けそうになるハルキを、すんでのところで助けるジャグラー。ハルキを助けたことでだいぶヒーロー面していますが、隊長として「部下を見殺しにする」という一番やってはいけないことをやらかしているので、もはや弁明の余地もありません。またも「ゼットライザーを返すんだ!」と叫ぶ主人公が実に滑稽。ジャグラーは、用済みとばかりにウルトラゼットライザーを返すと、去ってゆき、ハルキはゼットに変身。ハルキがゼットに今までどこにいたんだと聞かれ、「それよりあの怪獣を止めないと!」と、ゼットとハルキが隣に並び立つ構図が出てくるのですが、なんというかこのシーン、ハルキの言い方も相まってか、両者が凄く間抜け面で、全然かっこよくない。アルファエッジとペギラの戦いが始まり、空中戦が描かれるのですが、ペギラ、棒立ち。少しくらい、羽や頭、手足を動かしても良いと思うのですが、とにかくペギラがずっと棒立ちのまま飛んでいて、非常に締まらないカット。冷凍光線の直撃を受け、めちゃくちゃに回転して地面にたたきつけられるゼット。スカイダイビングをやっていないのであまり詳しくはないのですが、普通高所から落下するときって、途中で姿勢固定されて、そのまま地面にたたきつけられる気がしませんか?この落下も、少し腑に落ちないシーンでありました。

 ゼット、ピンチに。そこへ、研究所の古代石器が反応し、新たな武器、ゼットランスアローを手にします。

 うーむ、まぁ今回はジャグラーの処理に注力するだけで良いとは言ったものの、ここまで新武器の手に入れ方が雑とは。新武器なのに、劇的さが微塵も感じられない。本当に、ご都合主義の極みみたいな演出でありました。個人的には、まったく乗れない(というか、乗れる乗れない以前の問題)展開でありました。見た目も4年前のオーブスラッガーランスのお手軽改造そのもので、新武器のデザインそのものに斬新さがないだけに、物語で斬新さを魅せてくれるのかと少しばかり期待していましたが、そんなことは全然なかった。

 ゼットランスファイアーで、ペギラは爆発四散。強敵ペギラを一発とは、なかなか、殺傷力の高い武器。

 そこへ、ジャグラー登場。その正体は、ヘビクラ隊長。この瞬間まで、ジャグラーが部下を見捨てる隊長ではないことにワンチャン望みを託していたのですが、叶いませんでした。そうか、ジャグラー、本当に、自分の楽しみのために、部下、見捨てちゃったのか……

 そして、ジャグラーはゼッパンドンに変身。ついにやりおったw 変身するとき黒タイツだったり、ゼットンさん、パンドンさんには敬称、同期のマガオロチはマガオロチ呼び、変身するときに、闇の力、お借りします!発言、BGMにゼッパンドン登場シークエンスと、大変オマージュ(というか、4年前の再現そのもの)が凄く、このシーン自体は、実にかっこいいというか、良い。お待たせしました、という発言も、視聴者に向けての意味合いが強いのでしょうね。このシーンだけで飯が3杯食えるくらい、最高のシーンではあるのですが、既に前述のシーンで好感度ががた落ちしているので、とても複雑な気持ちで見なければならず、悶々とします。

 というか、ゼッパンドンに変身することそのものが大問題なわけですが、それは後ほど。

 突然登場したゼッパンドンに、ハルキは開始早々「何ですかこいつ」発言。いや、どう考えても怪獣だろ。敵だろ。なんとも腑抜けた会話が、主人公の間抜けさに拍車をかけ、一体全体どうしてこうなってしまったのか。直後のゼットランスアローの攻撃で、攻撃を撃つたびにレバーを引いているのが凄く滑稽で、なんだろう、第五話、主人公の魅力がまるでない、なんでだろう……

 ゼットランスアローの攻撃と、ゼッパンドンの火炎弾が相打ちに、ゼッパンドンが消え、どこだ? と探すゼットをゼッパンドンが攻撃、と、ここでゼットランスアローの背面に塗装が施されていないという衝撃の事実が明らかに。いや、いくら玩具がびんぼっちゃま仕様だからって、劇中のまで背面塗装省略する必要はないのでは? やってること、ソフビが背面塗装省略してるからってウルトラマンの背面塗装省略してるのと一緒だからね!?製作陣の志が低い、と思われても仕方がないレベル。そこはちゃんと塗装しようよ、さすがに。

 そして、ここに来てようやく、ハルキはどうやら敵のようだ、と認識。ゼットも間抜けみたいに「ウルトラムカつく野郎だなぁ」発言。さすがに、怪獣災害に対する認識が甘すぎないか、この二人。古参ファンの我々は、ゼッパンドンもといジャグラーにさほど敵意がないのかもしれない、とやや落ち着いて見られはするものの、それは事情をある程度知っているからであって、新参ファンからすればただの間抜けにしか映りません。敵対怪獣との戦いはもう少し真面目に取り組んでいただかないと困るんですけども。ロッソやブルのような初心者ならともかく、仮にもあなた、宇宙警備隊でしょ。どうしてそんな初歩的なことから言わなければいけないのか。

 ゼッパンドンは、手をクイクイと動かし、挑発。これも、オーブオマージュ、というかそのまま再現ですね。懐かしい。ここからゼッパンドンが消えるわけですが、ここで姿の見えない敵に対し、気配を察知して対抗する、というのは、ヘビクラ隊長の指導と絡めていて、良い見せ方。ゼッパンドンは、さすがというか、技がとにかく多彩で、ゼットは大苦戦。ハルキの「いや、たとえ相手がどんなに強くても、俺は諦めない。俺たちは、怪獣退治の専門家だから!」発言に、「そうとも!それがウルトラマンだ」と答えるゼット。

 ここに来て、踏まなくていい地雷をわざわざ踏みに来ました(怒) まず、ハルキの発言。これは、もう三度目になりますが、「俺たちは、人々を守らなくちゃならないから!」ならまだ分かるものの、「俺たちは、怪獣退治の専門家だから!」では、結局仕事人としての側面が押し出され、ヒーローとしての魅力につながらない、という問題があります。そして、一方ゼットの「そうとも!それがウルトラマンだ」発言。いや、違うだろ。ウルトラマンの中でも、怪獣退治の専門家は宇宙警備隊のみ(というか、怪獣退治の専門家と一般に呼ばれるのは初代ウルトラマンのみ)なわけで、他にも医療関係、教育関係、研究者など、ウルトラの国にも様々に職種はありますから、そもそもこの発言は間違いと言わざるを得ません。それに、そもそもこの発言をする意味がないのです。この場面で、ウルトラマンの定義づけをして、一体何のメリットがあるのでしょうか。それに、それがウルトラマンだから、何?って話です。それがウルトラマンだから、ゼットが諦めちゃいけない、というのは分かるとして、ウルトラマンは諦めない、だから俺と同化したお前もそのルールに従い諦めるな!と、若干強制めいたものが含意されており、ちゃっかり好感度を下げてしまう、という事態に。まぁ、ウルトラマンとはどういうものか、というのを、作品全体のテーマとして語るのはやめようと思って、この辺りでサラッと主人公らに発言させておこう、という考えがあったのかもしれませんが(そういう考え自体は否定しませんが)、完全に言わせる場面を間違えた、感が否めません。第五話は、非常に唐突なセリフが多く、それがキャラクターの好感度を上げるどころかむしろ下げているという、なんでそんな発言させた問題が随所にちりばめられていて、大変困惑。また、ここでのハルキとゼットのヒーロー的発言に対し、当のハルキの上司であるヘビクラ隊長が、それと真逆の行いをしているという意味でも、この場面においては場違いなセリフ。

 さて、ゼットの「それがウルトラマンだ」発言にゼットランスアローが反応し(これがやりたいがために先の会話を入れたとしたら、台詞の推敲不足)、流れるオープニングテーマ。本来なら、ウルトラマンが強敵怪獣に挑む!というシーンであり、劇的になるはずなのですが、対峙しているのが主人公とその上司なため、どうも劇的にならない

 そして、ゼットランスアローの名のごとく、弓矢状の氷属性攻撃、ゼットアイスアローでゼッパンドンを撃破、はまぁいいのですが、今回くらい、いかにもオーブっぽい技で倒す、みたいなファンサービスは出来なかったのでしょうか。この必殺技をオーブオマージュにするだけで、かなり画が映えると思うのですが、なぜに弓矢技。それはそれとして、ゼッパンドンが凍って爆発する、というのは、粋な演出でしたね。倒れた後、ドライアイスかな?で冷気を表現しているのも巧い。

 ハルキと通信しながら地面に倒れるヘビクラ隊長。喜びの笑みに続けて、「あ~おもしれ」で、エンディング。

 さて、私が最も書きたい本筋を書くとしますか。第五話でのジャグラスジャグラーの行動について。少し、悪役考察も絡めながら述べるとします。ここから、一番大事

 私は、悪人の悪事は死ぬまで覚えるたちの人間であります。皆さんはもう忘れているかもしれませんが、ジャグラスジャグラーは、もともと、古代のイシュタール文明を滅ぼしたり、魔王獣を召喚し街を破壊したり、最終的には地球を滅亡させようとした、災厄としかいいようがないレベルの悪人であります。その悪事はテレビ本編に収まらず、あらゆる星で暗躍する存在であります。そのジャグラーが、最終話にて、ナオミを助け、また、オーブことクレナイガイの想い人であるナターシャをかつて救っていたことが明らかになり、その心にはまだ光が残っている、ということがわかり、クレナイガイはジャグラーを一発殴った後抱き合って和解。そう、諸々の悪事、文明を滅ぼしたこと、多くの人間を殺したこと、それが、パンチ一発で、和解。これは、当時かなり、反発する人が多い印象でしたね。そもそも、ナオミを助けたと言いますが、ジャグラー自身が放った魔王獣、マガタノオロチから守ったわけで、またナターシャを助けたと言うものの、それもジャグラー自身が召喚した魔王獣、マガゼットンから守ったというだけで、要は、彼女らをそもそも命の危険にさらしたのは他でもないジャグラー自身なわけで、それを、心に光が残っている、と言いきれるかはやや首をかしげるところではありますね。自分も悪役好きとして、描き方に割と抵抗感はあったのですが、なにしろその後のオーブとジャグラーの共闘が熱すぎて、その勢いに飲まれた感があります(笑) また、その後、ジャグラーは改心したらしく、劇場版:絆の力、おかりします! では、完全にヒーロー然とした活躍を見せており、続くジード劇場版:つなぐぜ!願い!!でも、ヒーローとしての活躍を見せました。多くの被害をもたらしたその罪は許されるものではありませんが、その罪を悔い改め、ヒーローとしての道を歩み始めるのであれば、まぁジャグラーを許してやってもいいのではないか、と思わなくはないのです。しかし、それはあくまで「ジャグラーがヒーローとしての道を歩み始めるのであれば」であって、やはり根底には、ジャグラーがしてきた数々の悪の所業は、許されざるものである、という思いはずっとあったわけです。それがあるからこそ、(大反発、とまではいきませんでしたが)ジード劇場版で「飽きた」を理由に戦線を離れるのは、あまりに自己の贖罪に真摯に取り組んでいないのでは、と悶々とした思いを抱いたのは事実です。というわけで、ジャグラーがヒーローとして歩み続けるのであれば全面的に応援するものの、そこに真摯な姿勢が見られないのであれば、これは大問題である、という認識は持ち続けていたわけです。

 翻って今回、まず、ジャグラーは自分の楽しみと部下の危機を天秤にかけ、あまりに簡単に、部下を捨てました。この時点で、人間としてもそうですが、隊長として、大失格です。これまでの全ウルトラシリーズの中で、最低な隊長と言って差し支えないでしょう。

 そして、ジャグラーはゼッパンドンへと変身します。何度も言っていますが、怪獣とは、一種の災害であります。存在していることそのものが、災厄であるのです。戦闘などすれば、被害が出ることは目に見えており、いくら被害が出ないように動いたとしても、市街地でドカドカ戦闘すれば、多大な被害が出ることは目に見えています。ゼットを地面に倒れ込ませている時点で、被害は甚大なものでしょう。ていうか、仮にジャグラーがゼッパンドン変身時、どれだけ市街地に被害が出ないように戦っていたとしても、先のジャグラーの妨害行為によりペギラが暴れる時間が伸びているため、その時間分街に被害が出ているのは明らかでしょう。ジャグラーは、それを承知の上で、自己の快楽のために、ペギラを放置し、また市街地を蹂躙する怪獣へと変化したのです。これではもう、やっていることがただの悪人そのもの。どこにも擁護の余地がありません。この大惨事により、今までコツコツと築き上げてきた、ジャグラーの贖罪ポイントが一気にゼロに、というかマイナスに。ひいてはオーブ最終回のあの感動が台無しに、と、芋づる式にジャグラーの好感度を爆下げしており、なぜ、こんなことをしてしまったのか……もはや弁明の余地が一ミリも残っておりません。「あ~おもしれ」なんて言ってる場合じゃありません。

 また、ジャグラーの評価が下がると同時に、ヘビクラ隊長の評価も下がり、また、今回の作劇のせいでハルキとゼットの好感度も下がりに下がり、そしてナカシマヨウコも唐突な仕事人発言で多少株を下げ、と、非常に大打撃をくらった第五話。今まで皆で一生懸命作り上げてきた砂の城を、ショベルカーで砂場ごと持って行かれたような虚無感にさいなまれました。

 ということで、以上第五話でした。ジャグラーストレイジの面々、新武器、あらゆる要素を台無しに描いてしまいましたね。まぁ正直、日常パートがどれだけダメダメでも、特撮さえ良ければ持ち返すのがウルトラ作品の強みなのですが、大好きな辻本監督にしては気弱な演出が目立ち、そこら中で見かけるようなありきたりな特撮が多く、ほんと、辻本監督は大好きなんだけど、ここ数年の辻本監督回の中で、ぶっちぎりでワーストな回でありました。第四話感想までは、批判をするにしても、一つ一つの台詞を吟味し、細かいことをつらつらと述べる程度で、基本的には全面的にゼットを擁護し、応援しようという気満々だったのですが、こと第五話に限っては、何から何まで純粋にダメダメな作劇だったゆえ、普通にダメ出しさせていただきました。これは、次回までにハードルを二つくらい下げておいた方が良さそうか。

 あ、それから青柳さん、5/1じゃなくて1/5だよ(本人Twitter参照) 一応、理知的なキャラ設定なんだから分数くらいは間違えないでくれたまえよ。

 ジャグラーという劇薬は、さすがに一話で書き切るには強烈すぎたよう。とりあえず新要素や新たな劇薬の投入は避けて、数話かけて丁寧にじっくりと、これからジャグラーを描いていって欲しいものです。と思っていたら、まさかの次回、第二の劇薬ジード投入。さらには第三の劇薬候補、ギルバリス登場と、大丈夫か、ゼット(笑) まじで期待してるからね、頑張れ、ゼット。

 

《補論》

 語りたいことは大方本編で語ったので、少し気になったことを一つ。今回、去年を除けば近年定番となっている、「メインヴィランが持つ、主人公のと色違いの変身アイテム」ポジションのダークライザーを、ジャグラーが持ってしまった、ということ。カブラギシンヤさん、メインヴィラン最大のアイデンティティーを奪われたが、大丈夫か。このままだと、ガチでメインヴィランポジション、ジャグラーに奪われるぞ(笑)

 そもそもカブラギシンヤのシーン、台詞がメインヴィランにしては圧倒的に少なく、存在感もあまりないという問題があり、カブラギシンヤ、ちゃんと活躍して欲しいところ。黒幕ムーブというか、悪役ムーブは完全にジャグラーに取られているので、頑張れ、カブラギシンヤ。

 そういえば、退屈持て余して蔓延る宇宙人、刺激求めて蘇る巨大怪獣ってどっちもジャグラーやないかい!ってツイート見て笑いました。