igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ウルトラマンZ第11話感想 怪獣に父の姿を見る男

 皆さんこんにちは! igomasです。総集編を経ての、第11話、見ていきましょう!

 

 

《本編を見る前に:新型機と、新たなテーマ?》

 第11話では、ついに第三の特空機、キングジョーストレイジカスタムが登場します。新型機の説明回というのもあって、慎重な話運びが必要になってきますが、どうでしょうか。

 それから、第11話ではあまり関係ありませんが、12話以降、キングジョーストレイジカスタムばかりが取り沙汰されて、セブンガーやウインダムの見る影もない、みたなことにならなければいいですね。セブンガーは最近ほとんど姿を見せていないので、かなり懸念点ではあります。第三の特空機が、セブンガーやウインダムとともに、どのような活躍を見せてくれるか、楽しみですね。

 第11話のもう一つの注目ポイントとして、これまで示されてこなかった(というか流されていた部分)、「怪獣側の事情を完全無視して怪獣を倒してしまって良いのか」というテーマに踏み込んだところが大きいでしょう。正直、Zはそういうのはやらない作品だと思っていたので、少々驚き。この展開が吉と出るか、凶と出るか、この辺りも、十分吟味していけたらと思います。

 それでは、第11話、見て参りましょう!

 

《第11話》

 開幕早々、ハルキの「キングジョーストレイジカスタム」紹介パートがスタート。新型特空機参戦を、劇的にかつ慎重な話運びで描くのが難題なら、いっそ主人公に説明させちゃえ!という強引さが、すごくゼット(笑) 今作は、第一話でも、近年酷評を受ける長い変身バンクを、いっそ長々と撮って、ゼットとハルキを絡めるコメディシーンにしちゃえ!と吹っ切っていたりするのですが、そういった強引さが、所々で上手くハマっているのは非常に評価したいポイント。

 しかし、ハルキはシミュレーションの成績から、キングジョー搭乗は見送られるのであった。ハルキはキングジョーを操作できないことを悲しがり、先の紹介パートで、「キングジョーは男のロマン」的な発言をしていたことからも、「ロマン」という一点のみで乗りたがっている感がすごいのですが、このどこか子供っぽい無邪気さが、とてもハルキ。

 ハルキは父の命日のため、実家に帰ることに。同じころ、その実家のある深間市で、レッドキングが活動を始めるのであった、でOP(マジャッパかわいい)。

 第11話の担当は、ルーブメイン監督として有名な、武居正能監督。個人的には、本筋回だろうが単発回だろうが、良さげな回は良さげに纏めるが、ダメな回はとことんダメ、みたいな印象と同時に、「成長のめまぐるしい新人監督」なイメージもある監督ですね。様々な技術面での成長が芳しいものの、ストーリーとして結構危うい回も多いので、注意が必要な監督。今作での采配が、上手く働くかは、楽しみなところ。

↓武居監督がメイン監督を務めた、ルーブの総括記事 

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  ハルキと父の、キャッチボールのシーンからスタート。セリフや動きの端々から、あぁ、父親はハルキにとって、字義通りにも概念的にも、とても「大きな存在」だったのだなぁということが伝わってくる、良い回想シーン。ハルキは、何気ない父との日々に、思いを馳せるのであった。父と子の話を描くとき、何気ない過去のシーンを描く、というのはなかなか出来ることではなく、凡人の作り手なら、「重大な過去シーン」だけを抽出して描いてしまいがちなのですが、こういうナチュラルな描き方は、上手いなぁと感嘆。

  その後のハルキ母とのシーンでも、親子の会話を描いています。「この頃の可愛いあんたはどこに行っちゃったの?」という母の問いに「ここだよ、ここにいるって」と返すハルキが実にハルキらしい。ありがちなフォーマットに乗せつつも、ハルキらしさをちゃんと出すことがしっかりできています。数年前に25話かけて描いた「家族」より、単発回で描いた「家族」の方が上手く描けている、というのはどこか皮肉めいたものがありますが(笑)、それだけ武居監督が成長したということでありましょう。素直に褒めたいところ。

 さて、そこにレッドキングが出現。ヘビクラ隊長が状況を尋ねると、「出現した怪獣はレッドキング。深間市内の採石場で作業中に、地中に眠る怪獣を目覚めさせてしまったみたいで」とオオタユカが答え……もう何度言ったかわかりませんが、オオタユカ、どうしてそんなににこやかに説明してるの? 背景ではビルが崩れ、爆発が起き、人が逃げ惑っているのですが、あまりに不謹慎。しかもその直後、ヨウコ先輩が「深間市ってハルキの実家の近くじゃん」と気づくと、急に真剣な顔になるという……あぁこの人、いわゆるレギュラーメンバー以外がどうなっても全然気にしない人なんだな、と。前回のバロッサ回で、バロッサ星人が基地に侵入したことにあまり反応を見せず、ヨウコ先輩が捕まったと聞いてはじめて焦ったのも、そういうことなのでしょうか。オオタユカ、最近ものすごい勢いで好感度を落としにかかっており、好感度が0を通り越して地中深くまで掘り進んでいるのですが、大丈夫か、オオタユカ。

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  今作のオオタユカは、「怪獣好き」という設定を、製作陣が「怪獣解体が趣味のサイコパス」と履き違えて描いてしまったのでしょうが、「怪獣好き」ってそういう意味じゃないでしょ。これまでも、「怪獣好き」なレギュラーキャラはウルトラシリーズでも散見されましたが、それでも「怪獣は好きだけど、あくまで防衛隊としてのプロ意識は持っている」という描き方が出来ていたはずなのに、どうしてこうなってしまったのか。ウルトラシリーズの隊員で、これほど悪印象を与えてくるキャラは近年では珍しく、かなり困惑しております。オオタユカ、もう復帰は無理でしょうが、せめてこれ以上好感度を下げるのはやめていただきたい。

 ちなみに、レッドキング登場のカット自体は、特撮技術が高く非常に好き

 ヘビクラ隊長はヨウコに、新型機キングジョーへの搭乗を命じます。その後、バコさんにキングジョーの様子を確認。個人的な意見なのですが、バコさんの「最終チェック中だ。10分で終わらせる。よ~し、腕の見せ所だ。やろうども!急ぐぞぉ!」というセリフが、大変「セリフですよ」感が強く、あまり乗れませんでした。おそらく棒立ちで声を張り上げているだけなのが、とても堅い演技に見えてしまったのかも。細かい部分ですが。

 あ、あと「いつでも出せるぞ」とバコさんに言われたヘビクラ隊長が、「キングジョーストレイジカスタム、出撃準備!」と言っているシーン、ヘビクラ隊長の目が泳いでいることから、このセリフが複数人に向けて発せられたことが分かるわけですが、つまりヨウコ先輩とオオタユカ両名は格納庫に向かわずボーッとしていたということになり、う~んそれでいいのか? まぁこれは単純に青柳さんが演技中に目を泳がせてしまったただのミスで、実際はヨウコ先輩は既に格納庫にて準備済みで、オオタユカが会議室にて遠隔で一人準備していた、という設定なのでしょうが、そういう細かなところまで徹底するのが、プロ魂。細かすぎるところなので、もうこのあたりで。

 出撃するヨウコに、オオタユカが特製ジュースを渡すシーン。これ、これよ! オオタユカが好感度を上げ、キャラとして立たせる最後の砦、「特製ジュースを作る女」設定! これをもっと前面に押し出してくれれば、献身的にストレイジを支える人物として好感度が上がっていたかもしれないのに、サイコパス面だけが加速度的に強調されてしまったのは、今作の残念なところ。

 マイクを持たされるバコさん、正直、ダサい(笑) ここはヘッドマイクとかメガホンとかで良かった気もしますが、何故にマイクw まぁ、好みの問題なのでこの辺で……

 キングジョーがストレイジ基地から発射されるのは、その規格外の巨大さも相まってややコミカル感があり、セブンガー、ウインダム両機に比べれば、それほど格好いい発射シーンではありませんでした。

 さて一方私服のハルキは、避難誘導しながらレッドキングの元に向かい、その途中で泣いている子供を発見する。そして、かつて父が命を落としたあの日を、思い出すのであった……ということで、回想シーン。ハルキ母に「ハルキを頼む!」といってハルキを託し、「お前達は先に行け!俺は一人でも多く助ける」と言い、ハルキに「でも!」と返されたハルキ父は、「いいか、ハルキ。お前が母さんを守れ……大丈夫、また会える」と言って、一人怪獣ギーストロンに向かって走り出すのであった。

 このシーン、少し、というかかなり気になるのが、果たしてお父さんは何者なのか、ということ。「皆さんこっちです。パニックにならず落ち着いて避難してください」と発言して言うことから、もしかしたら町内会のちょっとしたメンバー、とかかもしれないな、程度の示唆はあるものの、全体としてハルキ父のポジションがあやふや。「子と妻を残し(父親としての本分を差し置いて)、一人でも多くの人を助けるため死に戦に出る」には、やはりハルキ父が、何かしらその行動が納得できる役職についていなければならず、それが定かでない以上、「この人何やってんだ」状態は払拭されません。深間市の町内会はどういった雰囲気なのか、ハルキ父は何か大きな役職についていたのか、ギーストロン出現現場にはテントが見えるが、一体これはどういう状況なのか、そこに何の説明もなく、ハルキ父の情報が「なんかいい父親」くらいしかない以上、「母子を差し置いて他の人を助けるため犠牲になる」のが唐突すぎて、あまり納得できませんでした。

 さて、泣いている子供を自分の昔の姿に重ねたハルキは、ゼットライザーを手に走り出し、泣いている子供を素通りしてゼットに変身。後で、レッドキングと戦いながら子供を安全な場所へ移動させるのですが、画としてやや拍子抜け。別に人の状態で子供を助け、その後ゼットに変身、で良かった気もするのですが……

 ベータスマッシュとレッドキングAの戦いは、プロレス感が強く、かなり面白いですね。キングジョー参戦後も、火花の散り方とか結構楽しめました。レッドキングのスーツは、ウルトラマンマックス放映時から15年もの間使われており、かなりのベテランスーツ。脇下がけっこうゆるゆるになっており、今回で見納めでしょうか。

 新たに2体目のレッドキングBが登場し、キングジョーストレイジカスタムが対処します。こちらのレッドキングは、レッドキング2代目をモチーフとしており、派生作品のウルトラギャラクシーファイトにて登場した新規造形スーツ。本編にも登場です。

 さてキングジョーとレッドキングの戦いですが、左手のペダニウムハンマー、まさかのコメディ路線だったw あの腕の伸び方は、かなりコミカルですね(笑) とはいえその攻撃力はなかなかのもの。第11話のキングジョーは、ある種「暴れ馬」として描かれており、セブンガーやウインダムとの差別化を図っていますね。一貫してこういうイメージを描ききっているのは評価が高いです。アルファエッジの戦いも、非常に良い。今回の特撮パートは、かなり各形態ごとに見せ場があり、非常に嬉しいところ。

 レッドキング撃退のため、ハルキはメダルを使い必殺技を放ちます。必殺技メダルは相変わらずの不遇ぶりで、ハルキには名前も呼んでもらえない始末。ジャックらの方はまだ光輪技などオマージュが見えるものの、コスモスらの方はほとんどオマージュ感がなく、寂しい。いつかコスモス・ネクサス・メビウスらも(そしてマックスも)、本編フュージョンでの優遇があればいいですね。

 レッドキングAを無事撃破したゼットは、暴れ馬キングジョーの操作に苦戦するヨウコ先輩の応援に駆けつけます。ずっと穴から離れないレッドキングBをよくよく見てみると、自分の卵を守っていたことが判明。レッドキング夫婦が、悪意をもって暴れていたのではなく、卵を守ろうと戦っていたのだと知ると、ハルキは「それじゃ、さっきのやつはただ自分の子供を守るために……」と、先程自分が倒したレッドキングAに、かつての自分の父親の姿を重ねます。

 第11話になって、「怪獣を、怪獣側の事情を考慮せずに、人間側の都合だけで倒してしまって本当によいのか」というテーマを持ってきました。怪獣を倒すことへの根本的な問いであり、怪獣特撮として必要なテーマではあるものの、ゼットでは捨象される部分だと思っていたので、やや驚き。ゼットという作品に、怪獣を倒すことの是非というテーマが絡み合い、物語が重厚になっていけば、それはそれで良いことではありますが、懸念点もありますね。あまりにテーマとして出すのが唐突じゃないか、という野暮な反論はあえてしませんが、唐突に出した分だけ、第12話と合わせていかに丁寧に描けるかは、非常に大事なところであり(失敗すると第11・12話の存在意義がないことにもなりかねないので)、見守りたいところ。

 さて今回の描写はといいますと、う~ん、ちょっと腑に落ちない部分が多々ありますね。第11話最大の問題としてあげられるのは、先述の「ハルキが、子を守ろうとしたレッドキングAの姿に、父の姿を重ねる」というところ。ここで、先の回想シーンを見返してみましょう。ハルキ父のセリフを見てみると「お前達は先に行け!俺は一人でも多く助ける」。そう、ハルキ父は、別にハルキ(子供)を守ろうとしたわけではないのです。子供と妻を差し置いて、他の人を助けようとしていたのです。それ故、レッドキングAに「子を守る父」として、自分の父の姿を見るのは、根本的におかしいのです。

 つまり、第11話では、「倒したレッドキングは親だった」の「親」という要素から(劇中では雌雄は未判別)、「父」を連想した、という程度のゆる~い繫がりしかないのです。だから、このシーンがどこか劇的さに欠けるというか、物足りない印象を持ってしまったというわけです。

 結局、ヨウコ先輩の放ったペダニウム粒子砲をゼットが防ぎ、レッドキングとは和解。驚くオオタユカと、「あぁ、ありゃ持たねぇな」と、自身の過去のあれこれを思い出しつつハルキを心配するヘビクラ隊長。正直ジャグラー自体がその過去が謎に包まれているキャラクターなので、何を思ったかまでは推測しかねますが、しかしジャグラーの軌跡をたどると、まぁ色々と思うところがあったのでしょう。

 ペダニウム粒子砲を止められたキングジョーは、かの有名な倒れ方で倒れ込み、これやってくれたのは、結構嬉しいかも。

 ヘビクラ隊長はオオタユカに、今回の一件の事情を説明し、「レッドキングは卵とともに消えた。次に現れたとき、再び人間を襲うかもしれないという可能性を残してな」と、今後の展開を示唆して、今回の物語は終わります。

 というわけで、第11話感想でした。全体として、家族の描き方(何気ない過去の描写)などは非常に上手く、ルーブ時に比べ「家族」の描き方が成長していることは全面的に賞賛しますが、その分ハルキ父を物語に絡ませるにおいて、ハルキ父の説明が曖昧なものとなり(母子を差し置いて他の人を助ける明確な理由が示されないので、結局「父親としての本分を果たしていない人」になってしまう)、そのハルキ父と「子を守る」レッドキングAを重ねられてもハテナ?となってしまう、という弊害はありました。もう少し、ハルキ父を、何気ない日常から重要な設定までしっかり描ききり、丁寧な物語構築をしていればまた変わったのでしょうが、今回はキングジョー参戦回ということもあり、割を食ってしまったか。

 一方のキングジョーストレイジカスタムは、描写も最低限のことはきちんと出来ており、その性能の紹介(ハルキの冒頭シーン)、他の特空機との差別化(暴れ馬感)など、しっかり描けていました。とはいえまだ別の形態を備えているとのことで、来週も目が離せません。と同時に、次回もキングジョーに尺を割いて、「怪獣退治の是非」というテーマを描ききれない、なんてことになったら、これは一大事ですので、武居監督にはしっかりやってほしいものです。「怪獣退治の是非」が、ハルキの心に大きな成長をもたらすのか、単なる「前々からやってみたいと思ってたんですよ」的な監督の自己満足で終わってしまうのか、次回の山場を、しっかり見届けたいと思っています。

 それでは、今回の記事はこの辺りで。また次の記事でお会いしましょう、igomasでした!