igomasの部屋

どうも、igomasです。ウルトラマンファン。ヒーローより怪獣、悪役が好き。今日も今日とて「悪役」考察♪

ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀 Chapter2 感想

 

【注意】本記事は現在YouTubeで展開中の番組、ウルトラギャラクシーファイトの酷評記事です。普段はオブラート100枚くらい包んで批判することもありますが、今回はオブラート10枚くらいの批判です。そのため、不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。それでもいいよという方のみお読みくださいませ。

 

 はい、始まりました(笑) いや、もう何から手を付けていいか分かりません。ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀 Chapter2、感想記事です。

 前回は、坂本浩一監督の描く「オマージュ」がたくさんの問題を抱えている、なんて話をしておりました。前回記事で紹介した通り、坂本監督は、「オマージュといえばこの人」と言われるくらいに神格化されている人ですが、私igomasの見解としては、坂本監督は「オマージュが苦手で、自分から何かを作り出す方が得意」というイメージで固まっているんですよね。もちろん、細かいことを何も気にせず見られる視聴者の方々には気にならないかもしれませんが、よくよく作品を見てみれば、粗はごまんとあることは、前回記事でもわかっていただけたかと思います。

 

igomas.hatenablog.com

 

 私igomasも、坂本監督がオマージュをさほど得意としていないことは重々理解していましたから、まぁ多少(というには色々やらかしていますが)の粗は仕方がないと割り切って見ていました。しかしながら、今回は坂本浩一監督自身が生み出したキャラ、ベリアルの物語。さすがにここは外してこないだろう、ちゃんと描いてくれるだろうと思って信じて見てみたら

 

な ん だ こ の あ り さ ま は

 

 まぁEpisode5はいつもの雑オマージュ駄作って感じでしたし、Episode6に関してはむしろウルトラ6兄弟の戦いの見せ方は悪くない部分も多かったので、さほど強烈な批判にはならないとは思いますが(それでも批判自体はしますが)、やはりEpisode4が酷い。今回はEpisode4にかなりの尺を割きながら、思ったことをつらつらと述べていこうと思います。

 

 

Episode4

 ウルトラ大戦争がショボい。まぁ前半はただただこれに尽きると思います。ウルトラマンウルトラマン80ウルトラマンメビウスと、長きにわたって綴られた光の国の歴史の中で、最も大規模な戦争として描かれる、ウルトラ大戦争。エンペラ星人と、当時の光の国の精鋭が雌雄を決し、ウルトラの父とエンペラ星人の決闘で幕を閉じた大戦争。それだけのエンペラ星人の脅威も、大規模感も、戦いの重みも、なにひとつ1ミリもまったくもって伝わってこない。グリーンバックで小規模な(それこそそこらの遊園地のヒーローショーより小規模な)軽い戦いを見せられるだけ。まさにウルトラの歴史の冒涜ともいえる絵面のチープさでありました。

 なぜこんなにチープな絵になったか、というのは単純な話で、カメラが終始近すぎる。あちこちで戦いが起こっている、あちこちで怪獣や宇宙人が暴れまわっている、そんな絶望的な様子はみじんもなくて、家族写真を撮るときのグリーンバックくらいの大きさの小さなグリーンバックの中で、キャラクターがわちゃわちゃしている様子を、近くから撮りました、みたいな、そんなカットになってしまっているんですよね。また、グリーンバックの背景も、まさにボイスドラマのそれで、背景自体がとても安っぽい。

 かつて坂本監督が低予算ながらも全力をかけたベリアルの乱。立体的なCGで光の国を描き、ウルトラマンと怪獣の大戦争をかろうじて描き切った。その画を撮った監督と同じとは思えないくらいに、今回の手抜き具合は非常に残念でした。そりゃ予算もない、スーツもない円谷の今の現状なら、あまりに無理がありすぎたのかもしれない。だったらこんな作品作るなよと、そう言いたい。ウルトラ大戦争を撮ることになんの覚悟もなく、ただ低予算の中でウルトラの父とエンペラ星人を戦わせておけばいいという、志の低さが見え見えです。こんなことは言いたくありませんが、Episode4はとんだ恥さらしです。自分は志の低い監督だと書いた大きな看板を背負って街を闊歩するようなものです。反省していただきたい。

 まぁ前置きはこのくらいにして、本編を見ていきましょう。今作Episode4は、ウルトラマンベリアルが闇の力で邪悪な存在になる前の物語、とのこと(参照:『ウルトラギャラクシーファイト』最新作、坂本浩一監督が語る大いなる陰謀「歴代ウルトラマンたちの魅力を再発見してほしい」 (3) (mynavi.jp))。 本ブログでも何度も紹介していますが、悪役において「過去」を描くことは、キャラ付けにおいてなくてはならない要素です。監督によれば、「ウルトラマンベリアルの魅力をさらに高めていくにはどうしたらいいか……と考えて、ベリアルがレイブラッドと同化した状態ではなく、若きウルトラの父(ケン)や母(マリー)と共に怪獣軍団と戦っていた"過去"の姿を描こうという話になった」とのことで、たしかにベリアルという悪役を描いていくにあたって、これまであまり描写されてこなかった「過去」を描こうというアイデア自体は、納得するところがあります。また監督はこうもおっしゃっています、「現在のベリアルを思わせるような描写もあったり」と。大いなる力を得た時、人は二種類に分かれます。その力を善のために使うのか、悪のために使うのか。どちらの道を選ぶにしても、その道を選んだ背景がどこかにあるはずです。その人が育った環境、教わってきた価値観、自分が世界をどのように見ているのか。その一つ一つが積み重なってゆき、最後に善か悪かどちらかの道を選ぶことになる。だからこそ、ただ「今現在の悪役」を描くのではなく、その背景となるような過去を示し、そこに「悪としての道を選んでしまいそうな危険な価値観」や「歪んだ環境で育った背景」みたいなものが見え隠れすると、悪役の魅力が十二分に化けることは間違いありません。このインタビューに書いてあることをもしちゃんと実行できていれば、今作は素晴らしい作品になっていたのかもしれませんね。ちゃんと実行できていれば……

 冒頭、ウルトラの父に許しを請う宇宙人。そこへベリアルが現れ、「お前らはおとりだったってわけかどけ」とウルトラの父を押しのけ……ウルトラの父を押しのけ、宇宙人を焼却します。このシーン、たしかに無抵抗な宇宙人を惨殺するのも大きな問題点ですが、それ以上に問題なのが、同僚を邪魔だと言って押しのける姿。「なぜ撃った。彼らは戦意を失っていた」と意見するウルトラの父に対し、「何を甘いこと言ってやがる」とどつくベリアル。ほーーーーーーーーー、そう描くのか。へーーーーーーーーーーーーーーーーーー(怒りゲージ40%)

 さて、エンペラ星人が光の国に降臨。エンペラ星人とウルトラの父、ベリアルとが戦います。エンペラ星人は、マントがない分やはり貫禄がなくなってしまうので、戦いをかっこよく見せるのにやや難儀したのであろうなと思われます。やはり威厳がそがれる分、エンペラ星人のファイトスタイルに魅力がなくなってしまっている感は否めませんでしたね。まぁ「ただのおとり」しかエンペラ星人軍が描かれていない時点で魅力も何もありませんが。

 ウルトラの父(今更ですが「ケン」よりこちらの方が書きやすいのでこちらで統一しています。厳密にはまだ子供が生まれていないゆえ、「父」と呼ぶのは正しくなかったりしますが)とベリアルは、エンペラ星人の攻撃を受け倒れる女性を逃がし、これがウルトラの父ウルトラの母の出会いだったのだ、ということらしいのですが、え、ウルトラ大戦争で負傷したウルトラの父ウルトラの母が看護したのが二人の出会いじゃなかったんですか(唐突な歴史改変その1)

 ベリアルもこのときウルトラの母と初めて会ったそうで、その時に放った言葉が「いい女だ。俺にふさわしい」。ひっどいセリフだ。まずもってダサい。絶妙にダサい。ウルトラの母ってただ単にエンペラ星人の攻撃で倒れていて、ウルトラの父との会話もほとんどなし。その状態で「いい女だ」って、それ顔しか見てないですよね、べリアルさん。顔だけで判断しましたよね。ここが一番ダサい。第二に、俺にふさわしいって、何様ですかあんた(怒りゲージ60%)。自己中心的で独りよがり、まさに今のベリアルそのものです。闇に落ちるもなにも、もとから悪じゃないですか。それも実にショボい悪。これについては後でまとめて触れます。第三に、そんな素っ頓狂なセリフを入れたことで、エンペラ星人との大決戦前の緊迫感がまったくもってどこかへ消し飛んだこと。これもまた酷い。このセリフを入れたことによるプラス要素が皆無です。

 さてウルトラの父、ベリアル、エンペラ星人の戦い。ウルトラの母が剣を持って現れますが、なんともチープな絵面。先ほども書きましたが、ほんと小さな画角で全部やろうとするので、なんとも「広さ」が足りなさすぎるんですよね。背景はボイスドラマのそれだし、本当に酷い出来。

 ウルトラの父が剣を持つと、角が伸び、髭が生えます(笑) これはメビウス放送時、ウルトラの父とエンペラ星人との決戦を描いたカットが、当時のスーツの関係上、髭が生え角の長いスーツで撮られたことと、ベリアルの乱まで髭の生えていない状態だったという事実とに整合性をもたせるためにやったことなのでしょう。まぁそこに整合性を持たせようとしたという努力は純粋に評価すべきでありましょう。とはいえ一瞬で髭が生えるってのは少し滑稽でもあるのですけれど。

 剣を持って姿が変わったウルトラの父を見てベリアルが一言、「これがケンに秘められた力だと」え、ダジャレですか、だったら面白くないです。まぁそれはさておき、見事ウルトラの父はエンペラ星人に勝利し、平和が訪れるのでした。

 ベリアルはすぐさまウルトラの母のところへ行き、「俺は必ずこの光の国を治めるにふさわしい大物になってやる。そしたら、俺と……」とすぐさま口説きに行くスタイル。だっさーーーーーーーーーーーーーーーーーーい。ウルトラの父が宇宙警備隊隊長に任命されると知ると、ベリアルは「馬鹿な、俺の方が実力は上のはず。力がいる、誰にも負けない力が」と言うのですが、本当に実力がケンよりベリアルの方が上なら、力をそこまで欲することもなかろうに。力を欲している時点で、自分の方がウルトラの父より実力において劣っていると認めているようなもので、発言が自己矛盾。また、力がいる、と思ったベリアルがまっさきにエンペラ星人を思い出すわけですが、まっさきに思い出されるほどの脅威ではなかったぞ、エンペラ星人。もう一度言っておくと、今作ではウルトラ大戦争などと銘打っておきながら、出てきたエンペラ星人の部下は「自称おとり」の雑魚3人のみ。戦いもチープな絵面でボイスドラマ程度の迫力。光の国壊滅の危機と言葉では言っていながらも、さして脅威に映っていませんし、なんならベリアルがそこら辺に倒れていた女性の「顔」だけ見てうつつを抜かす始末。こんなに雑に扱われたエンペラ星人が、「力」の代表格としてベリアルからあこがれを抱かれるというのはさすがに無理がありすぎる。エンペラ星人の悪役としての魅力をめった刺しにし、ウルトラの歴史をコケにした代償がここでまわってきましたよ、監督。

 そしてここでアブソリュートタルタロスが介入。あぁ、ベリアルのオリジンにまで介入するのか。せめてベリアルは自分の意志で悪の道を選ぶくらいにはやる男だと思っていたのですが、全部タルタロスのいいなりに動く始末。陳腐な悪役になり下がりました。ベリアルはその後もウルトラの父との確執に悩まされ、訓練場でも「俺の方が強いはずなのに~」と暴れまわる始末。単純に見ていて、ダサいなって。なんでも自分の思い通りにならないと気が済まなくて、とにかくなんでも自分のものにしたがる。自己中の塊。そんなキャラクターに誰が魅力を感じるのでしょう。否。今作でベリアルの株は地に落ちたといっていいほど、扱いが酷いと言えるでしょう(怒りゲージ70%)

 暴れ狂うベリアルに、強大な力は欲しくないか、と語り掛けるタルタロス。ベリアルはプラズマスパークに手を出します。その後彼はゾフィーウルトラマンたちと戦い……え?……そして自分の足で光の国から立ち去り……え?(唐突な歴史改変その2・怒りゲージ80%)……そのまま転げ落ちるかのように真っ逆さまに岩場に落ちるダサいカット。ええと、本来の歴史ならプラズマスパークの力に侵され苦しんだ状態のまま、光の国を追放されたはずなのですが。なんでここ変えたんですか、なにか変える意味があったんですか。え、坂本監督、あなたが作った設定ですよ? なんで自分が作った設定自分で忘れてるんですか、え?しかもウル銀なら、追放され岩場に墜落した際、ザーっと地面に体を引きずって不時着したような跡があるのですが、どうして今回真っ逆さまに落下するダサいカットに変えたんですか。ウル銀なら、プラズマスパークの力に苦しみながら、追放されているわけですから、地面に体を引きずらせ墜落するのも納得できますが、なんで自分の力で光の国を脱出できるくらい体の制御ができる人が足滑らせて真っ逆さまに落ちた人みたいに岩場に叩きつけられているんですか。なんでこんな雑に撮って満足してるんですか!(意味不明な歴史改変その3・怒りゲージ100%)

 さて、タルタロスから未来の自分の姿を見せられ、自分の息子に討たれる最期とは、とんだお笑い草だとあきれるベリアルに、タルタロスは、お前の運命を変えてやる、共に来いと誘います。ベリアルは「おもしれぇ」と言って、タルタロスの下につくことを決めたのでした。(怒りゲージ120%)

はっ

お笑い草なのはベリアルの人生じゃなくてEpisode4のすべてだ!

 Episode4の何が一番悪いって、坂本浩一監督自身が、自身の生み出したキャラであるベリアルを、ことごとく無味乾燥なキャラに貶めたということです。いかにしてベリアルが魅力のない陳腐な悪役になってしまったのか。3点に分けて説明したいと思います。

一点目、本作Episode4は、「ウルトラマンベリアルが闇の力で邪悪な存在になる前の物語」だったはずです。しかしふたを開けてみるとどうでしょう。ベリアルはプラズマスパークの力を得る以前から、レイブラット星人の遺伝子を受け継ぐ以前から、ただの「悪」でしかなかったのです。悪役になる、ではなく、最初から悪だった者がより悪になった話、でしかないのです。つまりなんですか、結局のところEpisode4が伝えたかったのはつまり、悪は生まれつき悪ってことですか。犯罪者は生まれつき犯罪者。聖人は生まれつき聖人ってことですか。ベリアルは犯罪者の遺伝子を持って生まれたから犯罪者で、ウルトラの父は聖人の遺伝子を持って生まれたから聖人と、そう言いたいわけですか?ウルトラマンは聖人君子の遺伝子を持って生まれた宇宙人だから宇宙の平和を守るのだ。ウルトラマンは生まれつきいい遺伝子を持った「光の使者」なのだ、生まれつき犯罪者のベリアルはみんなで追い出せ、そういうことなんですか?反吐が出るね!

 え、じゃあジードが「運命を覆した」ってのは単純に、「犯罪者の遺伝子だから犯罪者になるしかないけど意外にも良いことをしたから運命を覆した」って、そんな陳腐なレベルの話だったってことですか?そうだとしたら非常に悲しいですね。

 ウルトラの長い長い歴史の中で汚点となることは間違いないですし、ウルトラマンという存在そのものを愚弄しているかのよう。坂本浩一監督にとってウルトラマンってのは、遺伝子的にたまたまいい人の遺伝子がたくさん含まれているラッキー集団程度の認識なわけでしょうか。もしそうだとしたら悲しくて仕方ありません。その人が善か悪か、というのはその人がどう生き、どんな人と同じ時を過ごしてきたのか、環境や価値観によって大きく左右されるものだと思っています。生まれつき善悪が決まっているなんて価値観をウルトラマンに持ち込まれること自体が不愉快です。

 この点に関してですが、まぁさすがに坂本浩一氏も「生まれつき善悪が決まっている」なんて危険思想の持ち主ではないでしょう。単純に悪役の過去を描く力量がなかった、ただそれだけのことなのでしょう。悪役の過去を描けないにも関わらず、無理してベリアルの過去をストーリーに組み込んでしまった。これが大きな失敗でしたね。大失敗・無理をしたのはもう一つあって、それが二点目。

 二点目、坂本監督は「現在のベリアルを思わせるような描写もあったり」とおっしゃっています。「現在のベリアルを思わせる描写」をところどころにスパイスとして入れることで、「これから悪役になってしまうであろう心の不安定さ」だったり、「悪の道を歩みだす予兆」といったものを表現したいと思ったのでしょう。

 しかし、実際の映像を見ると、「現在のベリアルを思わせるような描写もあったり」ではなく「現在のベリアルを思わせるような描写」しかありません。もはや最初から最後まで現在のベリアルそのもの。まったくもって作品のスパイスとして機能していない。とにかく坂本監督は中庸を知らなさすぎる。「現在のベリアルを思わせる描写」は0でも100でもなく、ちょうどいい塩梅で入れなければならない要素なのです。それが今回全くできていない。端的に言えば

下手

 三点目、無駄な歴史改変が多い。ベリアルが初登場したウル銀は坂本監督自身が手掛けたのにもかかわらず、なぜここまで描写が異なるのか、理解できません。ベリアルの行動そのものが変わっているほか、タルタロスにあっさり従い服従したり、レイバドスやジュダといった悪役たちと和気藹々とチームを組んでいるあたり、単身光の国に乗り込み銀河帝国を作り多くの部下に慕われたかつてのカリスマ性はどこにも見当たらず、魅力を大きくそいでしまったのは問題であったと思います。なぜベリアルの魅力をここまで下げ、自己中心的かつダサくて陳腐な悪役になってしまったのか。ただ一つ考えられることは、アブソリュートタルタロスのやってきたこの宇宙はパラレルであって、正史の時間軸とは異なる時間軸であるから、キャラクターの性格も行動原理も何から何まで違うということ。すなわち今作のベリアルはこれまで我々が見てきたベリアルと全く別の存在であるから、過去も現在も未来も、なにもかもが正史と異なる存在と、そう考えでもしなければ微塵も納得できません。せめてアーリーベリアルを一度でも、たった一度でも一瞬でも、かっこいいと思いたかった。ウルトラの父と肩を並べるほどの戦士じゃなかったんですか。今作で描かれたベリアルは、ただのダサいおっさんです。正直、ベリアル関連については改悪しかなかった。

 以上三点。他者のオマージュ下手に飽き足らず、自身が作り上げた人気キャラクターですら、その魅力を加速度的に急降下させ、歴史改変を通して大いに改悪し、「悪は生まれつき悪だ」と言わんばかりに愛のない悪役描写、バランスのなっていない「現在のベリアルを思わせる描写」、雑でチープなウルトラ大戦争、なにより、志の低さが見え見えの作劇。間違いなくウルトラマン史上最低最悪の駄作です。

 私は、坂本浩一監督のアンチではありません、信者でもありません。良いと思えば褒め、悪いと思えばけなす、ただそれだけです。坂本監督は、ちゃんと全身全霊をかけて取り組めば、いい画を撮れるポテンシャルは十分に持っている方だとは思っています。そう思っているからこそ、なんでこんな駄作を世に出したのか、残念でなりません。無能な人間に、できないことを強制するほど私は馬鹿ではありません。坂本監督ならできたと思います。他人のオマージュならまだしも、自分が作り出したキャラくらい、まともに描ける人だと思っていました。それすら手を抜くなんて、いやむしろ手を抜くより酷い出来になっているなんて、ほんと心底がっかりです。あきれました。

 ということでEpisode4感想でした。まぁなんというか、こんなに何一つ褒めるところがない作品ってのも珍しいなと。記憶から消したい、正史から消したい、そんな一作でした。

 

Episode5

 さて、ここからは平常運転です。再びオブラート100枚仕立てで感想記事を書いていくと致しましょう。Episode5は、トレギアの過去に関する話。冒頭から、アーリートレギアが現れ、おなじみ構えのカット。このカットを見て、スーツアクターの方がChapter1のコスモスの人と同じだと思ったのは私だけでしょうか。前傾姿勢かつ重心が右に傾いており、やはり体幹がぶれているように見えます。コスモスのフォームとこうも変わらないとなると、やはりウルトラマンの無個性化につながりますし、もう少しトレギアのファイティングスタイルは試行錯誤してほしかったですね。というか、そもそもトレギアにファイティングスタイルがあるのが違和感。トレギアの戦い方なら、そのファイティングスタイルは取らないんじゃないか、と思うのですが、まぁこれは「宇宙警備隊に入るのに失敗した時のフォーム」と取っておきましょう(笑)

 トレギアがのちの「タイガスパーク」の設計図を眺めているところへ、ヒカリ長官が現れ、素晴らしい発想だとほめたたえたのち、「まさに絆をつなぐアイテムだな」というのに対し、「ものを開発することしかできない自分が情けないです」と悩みを吐露。ヒカリはそれに対し、「自分ができることに誇りを持てばいい」と語り掛けます。今回に限らず近年のウルトラマンは、実に「絆の安売りバーゲンセール」が広く行われており、都合のいい単語として「絆」を多用しがち。かたい絆を結んでいく過程をすっとばして、「俺達には絆がある」発言が唐突に飛び交う作品ばかり。「絆」というそれっぽい単語をいれておけばなんとなく視聴者が自己保管して感動してくれるだろう、という考えが見え見えで、あまり好きな言葉ではありません。「絆」というのは近年ウルトラマン界隈においてある種のキーワードとなることが多く、たった一度でもいいからせめてどこかで定義づけして欲しい言葉であります。粗雑に「絆」という言葉を使い、(絆なんてないのに)「絆があればなんでもできる」理論で、ストーリー上描かなければならない最低限の描写をあれこれ飛ばしまくっているのは、はっきりいって雑な作劇です。今回も、なにかしらの説明を一言でも入れてほしかったですね。

 つづいてタロウとヒカリのシーンに入ります。タロウが「光の使者としての任務完了」とガッツポーズを見せます。この「光の使者」というのも今作のキーワードとしてたびたび登場するのですが、この言葉ももう少し慎重に使ってほしいですね。まるで「いつだって自分たちが正しい光の化身だ」と言わんばかりの自己肯定的な言葉。とてつもなく押しつけがましい言葉であり、非常に不愉快。そもそもベリアルのような悪がすでに誕生しているわけで、ウルトラマンは光の使者、という考えそのものが既に揺らいでいるはずなのですが、そんな発言をさせてしまっていいのか。発言しているタロウ自身が、トレギアに悪を振りまいている時点で、「光の使者」なんて大層な台詞言わせて言い訳がありません。もう少し言葉は慎重に扱ってほしいなと思いました。

 トレギアはタロウに言われ、のちの「タイガスパーク」の設計図を見せ、「絆に関するデータが足りない」と言います。え、絆に関するデータって、何?「絆」に関して何の定義づけもないゆえに、どんなデータか皆目見当もつきません。というか絆って、データ化できるような、数値化できるようなそんな陳腐なものなんでしょうか。だとしたら個人的には嫌ですね。

 タロウは「このデバイスに名前をつけよう」と言い出し、「タイガスパークなんてのはどうだ?僕たちの絆の証だ」と、押しつけがましくも人様の発明品に勝手に名前をつけます。ちなみに、今作以前に発表された、トレギアが主人公の小説では、タイガスパークの名はトレギアが考えたもの。トレギアが悪に堕ちてからもなおもタロウは親友トレギアのことを思い続け、自分の子の名前をつける際に、トレギアの考えた名である「タイガ」を名づけた、という展開になっています。タロウが、闇に堕ちたトレギアをなおも親友として慕っていたという結構粋な裏設定だと思っていたのですが、どうして改変してしまったのか。改変したことで、タロウはただの「人様の発明品に名前をつける出しゃばり」になってしまい、せっかくのいい話が台無し。別にここを変える必要は全くなかったんじゃないかな、と思うのですが、どういう意図があったのか、謎。

 つづいてヒカリの失踪。ちなみにこのヒカリの失踪理由についても、今回改変があった模様。細かい話になるので説明は省きますが。細かいことを言うと「ヒカリ」という名はメビウスの時代に地球で名づけられ、この時代にはヒカリ、という名ではなかったのではないか、とか突っ込みたいのですが、まぁそんなこと言っていたらキリがないのでここも省略。

 ヒカリ失踪の連絡を受け、惑星アーブに向かうトレギア。え……ヒカリサーガにはいなかったんですけれども。じゃあなんですか、ヒカリサーガではトレギアが消されてたってことですか。わざわざ過去作を改変してまでこのシーンを描く理由がまったくもって皆無で、ほんとオマージュ下手だなぁと痛感させられます。

 ボガールを倒すため、ヒカリは怨念を身にまといハンターナイトツルギになるのですが、ハンターナイトツルギになった瞬間、「邪魔をするならば、お前とて切る」と言ってトレギアに襲い掛かるツルギ。いや、邪魔してないじゃん。これではただただ他人に見境なく襲い掛かる野蛮人にすぎません。トレギアがヒカリ長官と呼びかけると、「今の私は復讐のために生きる、ハンターナイトツルギだぁ」とツルギは答えるわけですが、じゃあ見境なく暴れるんじゃなくて、ちゃんと復讐に生きてくださいよ。

 ハンターナイトツルギって、悪のウルトラマン、とはまた違う存在だと思うんですよね。実際悪のウルトラマンという認識は円谷にもないでしょうし。ツルギは、あくまで惑星アーブを救えなかった自分の無力さを呪い、アーブを滅ぼしたボガールを追う復讐の鬼となりました。確かに、ボガールを倒すためには手段を選ばない、そんな残忍な性格をも持ち合わせていましたが、その行動原理はただ一つ。ボガールへの復讐。そしてそのボガールは、言わずもがな星を滅ぼす絶対悪。目的は正しくとも手段は正しくない、それこそが、ダークヒーローとしてのツルギの魅力なのではないでしょうか。それが、今回、ツルギは怨念を取り込んでからは右も左もわからないくらい見境なく暴れる暴徒と化しており、まったくもって魅力がなくなってしまいました。

 飛び立つツルギを見て出てきたトレギアの感想が、「ヒカリ長官でも、闇の力には抗えないというのか」。え、そんな話だったっけ?まぁ、ヒカリ長官のような聖人でも、闇に堕ちてしまう危険性を誰しもはらんでいる、みたいなことが言いたいんでしょうが、そうだとしてもこのセリフがあまりよくないなと。言葉だけ聞いていれば、「闇の力と戦ったヒカリ長官が負けて闇の力に堕ちた」みたいに聞こえるのですが、別にそうでもなかろうに。劇中描写だけ見れば、ヒカリは全く持って怨念だったりそういう力に抗おうとして負けて闇の姿になったのではなく、自分の意志でそうなっているわけで。なんというか、セリフの言葉選びがあまり気に入りませんでした。本作では特に重要な、テーマにかかわる台詞なので、細かいところですがもう少し吟味してほしかったかな。あぁそれから、あまりに描写不足すぎて、トレギアがどれくらいヒカリ長官に信頼を寄せていたか分かりませんし。なにせトレギアは「ものを開発することしかできない自分が情けないです」などと「ものを開発する」ことを軽く見ているような発言をしているわけで、そんな奴が果たして科学技術局長官としてのヒカリをどれほど尊敬していたかははなはだ疑問ですw

 光の国に戻ってからも、悩むトレギアに対し、馬鹿の一つ覚えみたいに「光の使者」を連呼するタロウもタロウで、やはり「光の使者」という言葉の持つ重みをまったくもって理解していないのではないかと疑いたくもなります。トレギアの去り際に「心配するな、僕が君を闇から守る」と、無意識のうちにまるで自分の方が立場が上で、守ってやると言わんばかりのデリカシーのない発言は、普通にタロウの評判を落としているなと。

 タロウとともに調査に向かったトレギアは、アブソリュートタルタロスから自分の未来を見せられます。今回これはあくまで私自身の価値観なのですが、トレギアほどの人物ならば少しくらい、「今見せられているのは偽の未来かもしれない。タルタロスの都合のいいように偽の未来を見せられているだけかもしれない」だとか何かしら一瞬でも疑うそぶりを見せるものではないかとも思うのですが、なぜこうも誰もかれもホイホイ、タルタロスの部下になることを志願するのか。それこそトレギアは、他者を操り思いのままにすることを喜びとしていたはずが、タルタロスにいいように使われるだけの「都合のいい手下」に成り下がっているのが、まったくもって残念だな、と。それはレイバドスにも言えるしジュダにも言えるし、前作のルギエルやエタルガーにも言えること。坂本監督がやっていることは悪役の魅力を高めることではなく、むしろ悪役の魅力を地に貶めていることだとそろそろ気付いてほしい所存。

 タロウがトレギアを引き留めようと発した言葉「この世に闇がある限り、我々ウルトラ族が闇を消し去る光となり、照らし続けるんだ」も実に独善的でチープな発言。とてつもなく押しつけがましく、今作ヒカリに限らずタロウもかなり株を落としましたね。

 ということでEpisode5感想でした。翻って今回見直してみると、トレギアの魅力はさほど半減していませんが(それもそのはずトレギアについて全く描けていないから)、一方でハンターナイトツルギの魅力がガタ落ちしてしまったな、という印象。トレギアの過去を描こうとしたら、ヒカリが風評被害にあった。ただそれだけのEpisode5であったな、と感じました。Episode4に続き、褒めるところが一つもない話でしたね。

 

Episode6

 ウルトラ6兄弟とジュダ兄弟が面と向かって話しているところからスタート。面と向かっているところからスタートなのに、会話の途中で「モルド、ジュダ!」と驚くタロウはやはりワンテンポ遅れているというか、なんというか(苦笑) せめて惑星に着地するや否やジュダの姿を認め、「モルド、ジュダ!」と驚くならまだしも、とりあえず言わせてみた感の強い台詞でありました。台詞回しがもう少しナチュラルなものになるといいですね、坂本監督。

 ここから、ウルトラ6兄弟とジュダ兄弟との戦い。この戦い自体はテンポ感も良くよかったですね。細かい動きを一つ一つ見ていけば賛否両論分かれそうなものですが、自分は割と見ていていいなと思った戦闘シーンですね。無難ではありますが、いい具合に合体光線や技が連発され、熟練のウルトラ兄弟とジュダの戦いは、これはこれで見る価値あり。ジュダとモルドがわりかししっかり動けるのも、かっこよかったです。

 戦いの途中でタロウはウルトラ兄弟に、「こうなったら兄さんたち、コスモミラクル光線を使います」と進言します。え、「こうなったら」って、何?「こうなったら」とはすなわちコスモミラクル光線を使わなければ勝てないようなそんな状況だから、ということでしょうか?どう見てもコスモミラクル光線使うような脅威じゃないんですけれども。わざわざ合体するまでもなく優勢なのですが。とりあえずテキトーに流れで合体させておけばファンは喜ぶだろう、という考えの甘さを前面に押し出したコスモミラクル光線は、見ていてなにもワクワクしませんでしたね。熱い展開とは、熱い展開に至るまでの過程をしっかり描いてこそワクワクするのです。過程をすっとばして結果だけ見せられても、それはチープなファンサービス。「コスモミラクル光線を放つほどの脅威」くらいやろうと思えば簡単に描写できるでしょうに、まったく。

 ジュダとモルドが倒れたら、次はベリアルとトレギア。タルタロスに与えられたと思しき力を使い、ウルトラ兄弟を圧倒。そこへ、満を持してのゼロ登場。ベリアルの姿を見るや否や、驚いた反応を見せ、ダメ押しとばかりにゼロの「ムカつく性格は持って生まれたものらしいな」発言。Episode4で触れた、「悪は生まれつき悪」ともとれるひっどい作品観がここにも顔を出しています。ゼロはベリアル、トレギア相手にも善戦し(タルタロスに力を与えられたとはいえ、なんの鍛錬も積んでいない頃の経験薄弱な二人ですから、もっと善戦してもいいくらいなのですが)、最後にタルタロスに吹き飛ばされます。タルタロスの必殺技を受けてもなお、ウルトラ兄弟とは異なりカラータイマーが点滅すらしないゼロはさすがだなと感心しますが、それはそれでやはりChapter1でレジェンドに変身するほどの脅威ではなかったのではないかとも思ったり。

 タルタロスに、ザ・キングダムに向かうぞと言われ去るベリアルとトレギア。去り際、ベリアルがタルタロスに、「タルタロス、お前のくれたこの力、感謝するぜ」と、まるで飼い主に従順な飼い犬のようになついているのですが、ベリアルよ、あのカリスマ性はいったいどこへ行った。

 ということでEpisode6の感想でありました。ウルトラ6兄弟の戦い自体はスピーディーでテンポ感も良く、かっこいいバトルだとは思ったものの、締めのコスモミラクル光線にいたる過程がてんで駄目だったな、という印象。

 

まとめ

 以上、Chapter2の感想でした。まぁ、一言でまとめると、Chapter1が様々なキャラをたくさん出してそれぞれのキャラに小さな傷をたくさんつけていったのに対し、Chapater2はピンポイントで人気キャラの魅力を大胆に削いでいっただけの話だったな、と。特にベリアルなんかは大爆死。ヒカリ、タロウ、エンペラ星人あたりも大きく格を落とし、はっきりいって全くいらなかったChapter2。全体的に過去世界の描写が雑で、ダイジェスト形式なのは大問題。少なくともたかだか100分前後の番組の中の10数分で話すような話ではないでしょうに。だれか、ちゃんと描ける監督、10年後とかでいいのでウルトラ大戦争まともに描きなおしてください。

 言うまでもなく、坂本監督史上一番の駄作でしょうし、ウルトラマンの歴史においても最低レベルの駄作。練るべきところは、冗談抜きで五万とあったはず。こんな作品ばかり作っていたら、数年後には円谷死に体になりますよ、気を引き締めていただきたい。Chapter3は、とりあえずタルタロスをサクッと倒すだけですから、さほど大爆死もしないでしょうし、頑張っていただきたいですね。それでは、また次の記事でお会いしましょう、igomasでした!

2021年の抱負

皆様、明けましておめでとうございます!

 どうも、igomasと申します。ブログを始めてはや8か月ほど。2021年になってしまいました。いやはや、時の流れははやいものですね。今年もよろしくお願いします。

 

 思い返せば昨年は、なんだかんだで様々な記事を投稿した一年でありました。ブログ開設当初は、ニュージェネレーションウルトラマンの考察記事を書き進めていましたね。個人的にはウルトラマンXの記事における「相性」論がお気に入りだったりします。ブログ記事なんて書いたこともありませんでしたから、初期はほんと文章力がなさすぎる記事が多かったのですが、その中でも割とコンパクトに纏まっていてくどくないのが好き。

 

igomas.hatenablog.com

 

 ニュージェネレーション記事を一通り書いてからは、いろいろと小ネタをまた書いていきましたが、中でも思い出深いのは、ウルバト1.5周年記念の記事。過去実施されたすべてのイベントクエストをまとめた本記事は、我ながらなかなかの力作で、相当骨が折れました。本ブログ始まって以来の大型記事ということもあり、かなり張り切っていたのを覚えています。

 

igomas.hatenablog.com

 

 ウルトラマン系の記事がいったん落ち着き、続いて始まったのが悪役考察シリーズ。ウルトラマンの悪役はもちろん、ペーパーマリオオリガミキングや、ウルトラマンZ(のメインヴィランセレブロ)といった、未公開作品の悪役を、事前に考察するシリーズなんかは、書いていて非常に楽しかったです。このあたりの記事は多く反響をいただきましたね。

 

igomas.hatenablog.com

 

 以降は、記事内容を考えあぐねいろいろと迷走した時期もありましたが、ちょうど夏ごろに、ウルトラマンゼット放送開始にあわせて、各話記事を書くことを決意。それからは、本ブログもとりあえずメインとなる軸が決まったように思えます。ウルトラマンZ、既に最終回を迎えていますが、書くべき記事はまだまだ残っており、急いでかき上げねばと焦る日々。既に2話分くらいはだいたいの構想が固まっておりますので、もうじきサクッと投稿できるかと。ウルトラマンZ感想記事シリーズは、それはそれで十分思い出深いのですが、アルファエッジとゲネガーグ(ゲネちゃん)のソフビ雑談記事とか、ゲネガーグは次世代のハンドスピナーであるとか、ところどころぶっ飛んだサブ記事もお気に入りだったりします。特にゲネガーグは次世代の(略)については、自身のソフビ観を交えながらコミカルかつ真剣に書かせていただいた記事であり、お気に入りの一作。

 

igomas.hatenablog.com

 

 さていろいろ書き進めたウルトラマンZ記事ですが、中でも好きな記事は第9話。今作は、初期の物語はすべて円谷のベテラン監督陣が撮り進めており、ここにきていきなりの新人監督を投下。結論から言いますと、私はこの中川監督、なかなかに好みで、見ていても良いシーンがたくさんあったのですよね。一方で、メインキャラクターの解釈や動かし方に少々難ありな描き方も見受けられました。この、「褒めるべきところは褒め、ダメなところはダメと言う」のバランスが程よくできたかな、と思ったのが本記事。

 

igomas.hatenablog.com

 

 ウルトラマンZの記事を書きながら、同時並行でウルトラマンマックスや、ウルトラマングレートの感想記事も更新。これがなかなかのハードワークで、現在もやや停滞気味なのですが、グレート感想はサクッと終わるとして、マックス記事はゼットがひと段落ついてからかな、と思ったり。まぁこの辺りはリアルの忙しさとの兼ね合いで調整していく所存です。

 後半になるとどんどん大型記事が増えてきて、結構なハードワークの連続でありました。結構な反響をいただいたのが、仮面ライダーゼロワンの総括記事。まぁかなり作品(作品?)批判していますので、興味のある方は見てみてください(笑)

 

igomas.hatenablog.com

 

 ウルトラマンの大型記事で言えば、最近だとウルトラギャラクシーファイトの記事ですかね。やはりChapterひとつ分の内容量が多いので、触れるところ、突っ込みどころが満載で、書いていて記事が終わる気配が一向にないという、なかなかの修羅の道でありました。またすぐChapter2の感想記事が出ますので、お楽しみに。

 今年全体で言えば、2019悪役グランプリは自分の中でも一番時間をかけた記事ですし、一つのキャラに一番字数をかけた記事でもあります。なにせ一位の解説には約1万字使ってますからねw もう、魂が抜け落ちるくらい全力で書いた記事であります。というかそれ以前になんで今頃2019年だって話ですが(笑)

 もともと、この2019悪役グランプリを書くつもりで本ブログを書き始めたんですよね。書きたい記事がたくさんあったり、なにせ文章量がとんでもないことになっていましたから、あれよあれよと引きずって、ついに2020年の年末に投稿することに。2020悪役グランプリは、全体でも2019版の4分の1にも満たない分量になりそうなので、割とサクッと更新できるかと思います。ぜひそちらもお楽しみに。

 

igomas.hatenablog.com

 

 ということで、サクッと2020年を振り返ってみました。サクッと、といっても結構な分量になりましたが。

 タイトルにもある「2021年の抱負」、すなわち今年やりたいこととしては、まずもってZの各話感想記事を完走させること。それからウルトラギャラクシーファイトも早々に感想を書ききっておきたいですね。マックス、グレートもしかり。

 そのうえで、2020年悪役グランプリだったり、ウルバト2周年、2.5周年を祝う記事であったり、ウルトラマン初心者に向けてのウルトラマン解説記事だったりも書いていきたいですね。

 そして本ブログにおいて、今年最も重きを置きたい新企画が一つあります。かなり大規模な企画となっておりますので、そちらもお楽しみいただければ幸いです。

 さて前置きはこのくらいにして(前置き長っ)、こうやって過去記事を振り返っていったわけですが、私igomas、どの記事が良い記事だったのか全然わからない

 いや、もちろん自分ではこの記事が良かったなぁと思う記事はありますし(そういう記事を上に紹介したつもりですし)、ほとんどの記事に全身全霊で当たっていっているわけですが、翻って見るに、読者の皆様の視点から、どの記事が良かったのか、というのはイマイチピンと来ていないんですよね。

 たしかに、はてなブログには、その日にどれくらいのアクセス数があったのかがわかる機能がついており、その日どれだけ記事が見られたのかはわかりますから、書いた記事にどれくらいの反響があったのかは知ることができます。しかしながら、反響があるイコール良い記事、とは必ずしもならないわけであって、果たして読者にとって最も読みたい記事ってどんなものだろう、というのは気になるわけです。

 またこれは、2021年記事を書き進めていくにあたって、どういったところに注目して記事を書いていくか、ということにも大きく直結する部分でありますから、読者の皆さんに聞いておきたいことなのです。

 ということで、読者の皆さん、もしお時間がありましたら、コメントに、2020年の本ブログの記事で、どういう記事が面白かったかとか、どういうところが面白かったかとか、いろいろ意見くださるとありがたいです。

 それから記事のネタも順次募集しておりますので、記事にしてほしい、考察してほしいことがありましたらこちらもコメントへお書きくだされば幸いです。必ず記事になる、という保証はしかねますが、もしかしたら記事になるかもしれません。

 ということで、今年も読者の皆さんにはお世話になります。なにとぞ今年も、よろしくお願いします、igomasでした!

2019年悪役グランプリ

 皆さんこんにちは、igomasです。今回は、2019悪役グランプリと題しまして、2019年、igomasが出会った『作品』(映画、ドラマ、アニメ、漫画、ゲーム等)全ての悪役を振り返る企画です。また最後には、心にぐっときた上位3名をランキング形式で表彰したいと思います。

 毎年igomasは、個人でランキングを作っているのですが、昨年は本当に大収穫の年で、ぐっときた悪役が多すぎてランキングをトップ10まで拡張して作りました(しかも、愛染マコト、美剣サキ、新条アカネの三大円谷悪役はランク外という激戦ぶり)。トップはほとんどマーベル勢がしめ、参考までに1位はエージェントオブシールドシーズン4フレームワーク内のレオポルドフィッツ博士(長い)でした。かのサノスが4位であることからも、いかに厳しい戦いか理解していただけると思います。

 なお、各悪役の評価、ランキングは、ある程度客観的考察に基づくものの、あくまで個人の感想です。ご承知ください。また、悪役に触れるということは多少なりともネタバレはありますので、ネタバレが嫌な方は適宜、段落を飛ばして読むなどしてください。

 

 

 《2019年を振り返って》

 2019年初期から、「電光超人グリッドマン」のカーンデジファー&藤堂武史をはじめとして、多くの悪役が乱立していました。映画「スパイダーバース」は、悪役一人一人に重きを置くストーリー構成ではなかったものの、とても個性あふれる悪役軍団が見られました。作品全体の完成度としても、かなり高かったと思います。また、漫画「ストロボエッジ」は、悪役がいないながらも面白い作品で、悪役のない作品の可能性を見せてくれました。

 さて、そんな初期、具体的には3月の末頃まで、トップの座をキープし続けていたのは、「スターウォーズ・ローグワン」のオーソン=クレニック。労働者階級出身の悪役で、指揮官としてのカリスマ性を持ちながらも、主人公らの攻撃・上司の裏切り・ベイダー卿のお叱り・雨にうたれて倒れているシーンなどなど、数々のシーンから溢れ出るヘタレ感をも併せ持つ、実に素晴らしい王道悪役でした。

 他に良かった悪役は、「ウルトラマンガイア」のアグル。キャラづけや人間関係、誕生の描写などもしっかりしており、主人公ガイアの対立項として、悪役としてすばらしい活躍を見せてくれました。最終的にサブウルトラマンとして活躍しましたが、人間を見捨てようとしても見捨てきれない、葛藤しながら戦う悪役としての姿もなかなかよいものだな、と。

 東京ディズニーシージーニーのマジックシアター」のシャバーン。とても魅力がある悪役だったのですが、さすがディズニースタッフというべきか、あまりにも人が良すぎて、「憎めない悪役」を通り越して「もはや悪人とは思えない」まで行ってしまった感。むしろ、やってることはジーニーの方がひどいw

 「キャプテンマーベル」は本当にいい映画でしたね。スプリームインテリジェンスは王道で好き。ヨンロッグの絶妙なヘタレ感も好き。でも一番魅力的なキャラクターはスクラル人のタロス。演技力もあいまって、非常にいいキャラクターでしたね。ちなみに俳優のベン・メンデルソーンは先述のローグワンのオーソンクレニックも演じています。……すげぇな、このままだと今年の上位ほぼベン・メンデルソーンになるぞ、と危機感を覚えた春でした笑

 さて、この辺りでついに、3月末までの大本命である、「レイトン ミステリー探偵社~カトリーのナゾトキファイル~」より、ルーファス=アルデバランが登場します。レイトン教授シリーズの悪役というのは、悪役となったその理由や立ち居振る舞いからして、非常に魅力的なキャラクターが多いのですが、さてルーファス=アルデバラン、実に初登場時の掴みが完璧な悪役でありました。探偵でありながら、富豪の犯罪を見破ったうえで、その富豪と取引してその犯罪を隠蔽し、多大な見返りを受け取る。非常に洗練された悪役像で、これは今年の優勝候補か、と思われたものの、秘宝レリクスの一件ではそれほど強敵という感じはなく、動機も劇的なものではなく、良くも悪くも「レイトンっぽい」止まりだったのは少々難点。論破のされ方、敗北の仕方はレイトンっぽさではなくしっかりカトリーらしさを追求した展開で素晴らしい見せ方でしたが、飛び抜けた面白さまでは至りませんでした。確かにとても好きな悪役に違いありませんが、惜しくも上位は逃したという感じですね。

 仮面ライダージオウには、様々な思惑の敵が登場しましたが、中でもお気に入りは白ウォズ。黒ウォズとの役し分けが巧く決まり、差別化ができているとともに、行動原理もしっかり分かるので、色々悪巧みをするたびに「この人何がしたいんだ」みたいな詰まりがなかったのも、スムーズに視聴できて良いポイント。衣装も近未来的で興味深いキャラでした。白ウォズの一番惜しいところは悔しがる描写。芝居がかりすぎていた印象がありましたね。悔しがり方は悪役の大きな見せ場。

 さて、2019年はこの作品の年と言っても過言ではないほど影響力を持つ作品、「アベンジャーズ/エンドゲーム」より、サノス。前作では、全宇宙の生命を半分にすることに対し、曲がりなりにも理屈は通った考えを持ち、自信も多くのものを失いながらも目的を実行しようとするその姿勢に、共感する人もいましたね。まぁテーマや構造を鑑みるに、サノスが悪であることに変わりは無いのですが、それでも前作のサノスはあまり横暴というか、攻撃的な面が多少削がれていた印象がありました。今回のサノスは精神的にまだ成熟していない頃のサノスで、まさに暴君といった暴れぶりでしたね。ガチのスーパーパワー使いという訳ではないけれど、フィジカル、軍事力が圧倒的に強すぎる。キャプテンアメリカがサノス軍を前に一人立ち上がる、その絶望感は、えもいわれぬ最高に研ぎ澄まされた演出でした。これぞ悪役、といえるようなその存在感、絶望感は近年まれに見るカリスマでした。

 今年見た悪役の中でも思い出深いのは、「ペット」より、スノーボール。もうなんていうか、ザ・典型的な悪役、という感じで、何から何までこういう展開になるだろうな、と予想がついて、本当にその通りに行動するほどの典型ぶりだけど、そこに愛着が湧くというか、どこか懐かしさを与えてくれる、素晴らしい悪役でした。なぜ彼が、人間と仲良くするペットを毛嫌いするのかという背景設定、彼が持っている価値観はどんなものか、仲間手下への思いはどういうものか、決して根が悪いという訳ではなく、重要なところで活躍するその正義感、主人公たちが飼い主を慕う気持ちを、悪役ならではのツンデレっぽさがありながらもどう理解していくのか、そしてその後どのような人生を歩んでいくのか。悪役として必要な、あってほしい要素が全部詰まっていて、非常に丁寧な描かれ方をしていました。悪役の初歩の初歩、でもとても大切な部分を思い出させてくれる、良い悪役でした。悪役学を始めたい人はまず今作を見よう。

 「ウルトラマンタイガ」は、非常に不思議な作品で、なんというか、メインヴィランウルトラマントレギアが、変身した後と変身する前の霧崎とで若干別人かと思えるほどキャラ付けが異なっていました。前の記事でも述べましたが私igomasは、トレギアと霧崎を別々に評価することにしていて、霧崎のランキングはまぁまぁ高いですね。とてもキャラや仕草が立っており、タイガ登場人物の中で、彼に最も魅力を感じたというファンが多いのも納得。

 今年の映画界を激震させた作品の一つに、「ジョーカー」がありました。それぞれの映画が絡み合い、影響し合って進んでいくMCUの作品群とは異なり、単発の映画を作るという路線に転換したDCの贈る、素晴らしい一品。観客の心を鷲掴みし、大ヒットを成し遂げました。今年の悪役を語るなら、このジョーカーは絶対外せません。しかし、とても難しいところではあるのですが、私igomasは、こと悪役としての秀逸さという観点で見ると、ランキング上位には来ないのではと判断しました。今作のジョーカーは、他の追随を許さないほど洗練された個性を持っている、というわけではなく、どちらかというとごく普通の一般人って感じなんですよね。悩める一般人が、犯罪者となり、やがてはゴッサムの町を覆いつくさんとする犯罪者たちの王となる。そんな風に映りました。犯罪者に祭られる犯罪者、という印象が強く、カリスマ性を持った悪役、というには足りない印象。作品としてはよく出た作品なんだけど、では果たしてジョーカーが魂を奮わす「悪役」かと言われると、ちょっと違うかなぁと思うわけです。

 今年公開の映画ではありませんが、幸運にも映画「ナイトクローラー」を見る機会がありまして、いやぁ、この映画には震えましたね。主人公のルイス・ブルームを演じるのは、今年だと「スパイダーマンファーフロムホーム」のミステリオ役でも有名な、ジェイク・ギレンホール。彼の怪演が実に見事で、1カット1カットの魅力的な撮り方も相まって、非常に素晴らしい悪役として映っていました。この作品自体が、どれも芸術的センスの光るカットの連続で、ジェイク・ギレンホールが内に秘めたる才能を、これでもかと引き出してくる映像美はほんと素晴らしい。

 エージェントオブシールドシーズン5には、まさかのレオポルドフィッツ博士が再登場。彼が登場したたった一話の物語、「悪魔コンプレックス」は、ドラマとしての完成度が非常に高く、悪役の魅力も、登場人物の苦悩・苦難も、主人公らの関係が少しずつ歪んでゆく不調和も、なにもかも見せ方が見事でありました。もう今年も彼が一位でいいのではないかと何度も思わされたほどに素晴らしい悪役でしたが、さすがにそれではランキングにならないだろうという、私に残ったわずかな理性によってそれはなくなりました(笑) それにしても実に魅力的な悪役でしたね、彼は。

 さて、今年も色々な悪役と出会い、実に楽しい悪役ライフを過ごせたわけですが、しかし、ここで問題が。私の作る悪役ランキングってかなり厳正なもので、「真に心にぐっときた悪役」しか最後のランキングに載せない、ということを徹底してるわけなんですけれども……こんなに良い悪役が沢山いるものの、「真に心にぐっときた」と胸を張っていえるのはたった2人だけであったのです。これはまずい、トップ3が発表できないのは非常にまずい、と思い、年末駆け込みで、悪役好きのための究極の作品を見るという暴挙に走り、滑り込みでトップ3が確定しました。とその前に…

 

<審査員特別賞>

審査員特別賞 「映画 傷だらけの悪魔」より 小田切 詩乃

 今年は、第三位を超えてランキングに入る悪役はいませんでしたが、審査員特別賞と題し、この悪役を称えたいと思います。小田切 詩乃は、非常に気に入った悪役ではあったのですが、登場映画そのものの出来があまり良くなく、惜しくもトップ3を逃しました。せっかく良い悪役なのに、ランキングに載せないのはちょっと申し訳ないなと思い、この賞を特別に設立した次第であります。

 今作、傷だらけの悪魔は、いじめをテーマとした作品です。この小田切 詩乃という人物は、かつて中学生のころ主人公にいじめられており、不登校になり、諸事情で改姓し田舎へ移り住みました。その後主人公が偶然にも同じ田舎へ移り住んできて、転校生として同じ高校にやってきます。小田切はそこで、突如発作気味になりながら中学の頃主人公にいじめられていたと暴露し、結果主人公は、いじめっ子は制裁すべし、とクラス中から攻撃されることに。実際は暴露した際の発作は小田切の演技であり、その後もあらゆる手段を使って、クラスの主人公へのヘイトが高まるように画策。主人公を追い詰めていきます。自分は手を下さず、周りの生徒を巧みに操って主人公に復讐する。それが、小田切という人物の悪役像であります。

 先ほど、主人公にいじめられていたと暴露する際の発作は演技、と言いましたが、だからといって小田切が中学の頃のいじめを克服したかというと全然そんなことはなく、劇中でもマジモンの発作を起こしたり、過去のトラウマに悩まされたりと、かなり病んでいる描写もなされています。演ずる女優の江野沢愛美さんの演技が非常に秀逸で、完全に病んで精神ギリギリの状態で復讐してくる小田切のキャラが、綺麗に確立されていました。一挙手一投足、動きのすべてが洗練され、ぐっときた悪役ですね。

 ただ今回、諸々の話の畳み方がすごく雑で、最後のシーンとか、メッセージ性が非常に浅いというかパンチが弱く、全然鮮やかに決まっていないなぁというのが正直なところ。もっと考えに考え、最後のシーンを制作陣が作っていれば、もっと良い映画に、もっといい悪役になれたのに。まぁ原作の漫画はもっと話も長いし完結もしていないらしいので、この時点で実写化するには無理があったというのもあるのかも。

 以上、審査員特別賞でした。演じられた江野沢愛美さん、おめでとうございます。人を魅了する素晴らしい演技力だったので、今後注目したい女優さんですね。

 

<2019年悪役グランプリ:トップ3>

 さて、ここからトップ3の発表です。これから発表される3名は、2019年の荒れ狂う死闘を制し、狭き門をくぐり抜けた最高の悪役たちです。私igomasが、自信をもって紹介する、後世に残したい至極の悪役。温かい目で迎えてあげてくださいませ。

 

第三位 「ダークナイト」より ジョーカー

 先述の、「滑り込みでトップ3を確定させるために見た映画」というのが、このダークナイト。悪役好きには外せない映画の一つですよね。かのスターウォーズを代表する悪役ダースベイダーに並ぶほどの人気を誇る、悪役界の王、ジョーカー。今作はクリストファー・ノーラン監督の描く、バットマン3部作の二作目にあたる作品です。一作品としての完成度が高く、他のシリーズ作品を未視聴でも十二分に楽しめましたね。

 アメコミのヒーロー映画といえば、スーパーパワーを持ったヒーローと悪役との戦いが描かれることが多いわけですが、今作のヒーローであるバッドマンも、言ってみれば防弾スーツを着た一般人であり、悪役であるところのジョーカーも頭の切れる悪党というだけで、特にスーパーパワーを持っていない、というのは、ヒーロー映画としても斬新でしたし、臨場感もまた素晴らしかったと思います。

 本作に登場するジョーカーは、犯罪界の王として名をとどろかせ、悪役としてのカリスマ性と他を畏怖させる不気味さを兼ね備えた悪役であります。冒頭の銀行強盗のシーンではその悪役としての魅力が存分に発揮されています。小悪党らを操り陰から操る闇の帝王かと思いきや、実行の最終段階、最後の詰めの部分だけは自らの手で行うという周到さには、初見で心をぐっとつかまれること間違いなし。悪役の初登場シーンとしてこれ以上ないくらいに不意打ちで、象徴的なシーンとして今なお語り継がれるシーンですね。

 ジョーカーは他にも魅力的なカットが多数存在し、そのどれもが素晴らしい。札束の山を焼いて金に群がる小悪党どもを鼻で笑うシーンとか、警官に扮して市長のスピーチに参加し発砲した後足早に逃げるカットとか、爆弾のピンを指で示しながら後ろのドアを蹴り開け去っていくシーンとか、パーティーに乱入してサクランボみたいな実をむしゃむしゃ食べるところとか、ヒロインの顔にリンゴの皮むきのようにナイフを突きつけるところとか、バットマンに負けそうになって子分を盾にして足のつま先に常備したナイフでバットマンを蹴り上げる小悪党感満載のカットとか、バットマンにトラックを転倒させられワイヤーを払いのけよろけながらバットマンに俺をやれるもんならやってみろと迫るシーンとか、捕まって自分を逮捕した警官が皆に称賛されているときにジョーカー自身も手をたたいて警官らが不気味がるシーンとか、バットマンに尋問され痛がりながらもバットマンが何もできないことを嘲り笑うシーンとか、病院爆破とか、まぁともかく印象的なカットがこれでもかと詰まっているのがまた魅力でありましょう。

 特に、ジョーカーが最も魅力を発揮するのは、悪事をしているその時ではなく、バットマンと対峙しているシーンというのがまた、素晴らしい。悪役としてただ完結してしまうのではなく、主人公との対比の中で輝くというのは、悪役として素晴らしいスキルであります。中でもバットマンとの尋問シーンは実に愉快軽快爽快で、見ていて大変楽しめましたね。キャラクターとしても画角としても、なるほどジョーカーはバットマンがいるからこそ輝けるのだな、というのが非常に鮮明にわかるよう構築されていましたね。いやはやほんと、素晴らしい。

 本作のジョーカーは、当時恋愛ものだとか、そういうピュアな映画の主人公ばかり演じていたヒース・レジャー氏が演じており、キャスト発表時には原作コミックファンから、「恋愛映画の主人公にジョーカーが務まるわけがないだろう」と多々クレームがあったそうですが、公開するやいなやそんな意見は、まったくもってなりをひそめたとか。その恐ろしいほど鮮烈な演技力は見るものを圧倒し、物語の世界へと引き込んでいきます。ぜひともこのジョーカーの魅力は、実際見て確認していただきたいものですね。

 

第二位 「文豪ストレイドッグス(第三期)」より フョードル・D

 第二位にランクインしたのは、実際の文豪をモチーフとした名の登場人物らが、実際の作品名をモチーフとした能力「異能」を使って戦いを繰り広げるアニメ文豪ストレイドッグス第三期より、フョードル・D。いわずもがな元ネタは、フョードル・ドストエフスキー

 先述の通り、今作は異能を用いたバトルアクションアニメなわけですが、様々な異能を使って各人が戦いを広げる中、フョードル・Dだけはなんの能力を使うこともなく、話術と知略だけで切り抜けているのです。主人公らがどう行動するのかそのすべてを見極め、登場人物らを駒のように動かすその知能は、主人公らを破滅、瓦解させるに十分な脅威でありました。

 初登場時にて、横浜を統べる大組織にして主人公らと敵対するメインの敵組織、ポートマフィアの5大幹部、A(エース)を殺害するという鮮烈なデビューを飾りました。彼はAに自らのもつ情報を賭け、トランプでのハイ&ロー勝負を挑みます。トランプの扱いに長けたAはあっさりとそれを承諾するのですが、無類の知性を誇るフョードルに圧倒され、言葉の幻術や偽の情報に惑わされるうちに、自分は異能を見せられているのだという錯覚に陥ったAは、最終的に「合理的な結論」として、自らの命を絶つのです。Aもまた優れた観察眼を持ち知略に長けた幹部であったものの、彼の信じた情報はフョードル自身によって流された偽の情報であり、すべてフョードルの手のひらで踊らされていただけだった、という悲しい最期でありました。自らは一切手を汚すことなく、ラスボスの一角をさもあっさりと殺害したその手口には、視聴当時度肝を抜かされました。悪役の魅力がこれでもかと詰まった、そんなデビュー作。文豪ストレイドッグス第三期29話はオススメの一作ですね。この一話、たった30分で今年の2位に上り詰めたといっても過言ではないくらいに、完成された一話でありました。

 フョードル・Dはそれ以降も暗躍し(というかそこからが本領発揮なわけですが)、嘘の情報で人を惑わし、翻弄し、横浜のあちこちで戦乱の火種を蒔いたり、また部下の異能力を用いて、主人公組織「異能探偵社」のボスそしてポートマフィアのボスを両方戦闘不能に追いやり横浜に混乱と戦火を巻き起こすなど、その悪行は数知れず。異能探偵社とポートマフィアが手を組みフョードルのアジトへと攻め込んだ最終決戦では、なんとフョードル自身一度もそのアジトに足を運んだことはなく、すべてフェイクだったという大どんでん返し。最終的には太宰治の機転も相まって、内務省異能特務課そしてギルドの力を借りようやく捕縛することができました。しかしながら、一連の事件が終わって後なおも、フョードルのもつ「異能」は結局謎に包まれたままというその不気味さも、悪役の魅力に一役かっています。今後再登場し、さらなる脅威となるやもしれませんから、目が離せないキャラクターですね。

 フョードル・Dを演じられた石田彰さんは、声優界に名をとどろかせる大御所であり、「黒幕の声と言えばこの人」との呼び声も高いわけですが、その魅力的な声が実にこのフョードル・Dの雰囲気とマッチしており、最高の配役だったなとしみじみ。

 

第一位 「スパイダーマンファーフロムホーム」より ミステリオ

 2019年悪役グランプリ、栄えある第一位を獲得したのは、主演にトムホランドを起用し新たに始まったMCUスパイダーマンの2作目、スパイダーマンファーフロムホームより、ミステリオ。

 ミステリオは、原作コミックでも人気のヴィラン。SFX技術やバーチャルリアリティといった技術を駆使し、幻覚を見せるなどして、幾度となくスパイダーマンの前に立ちはだかります。スパイダーマンのクモ糸を酸性溶液で溶かしたり、結構原作でも理知的な戦い方をするヴィランですね。

 ミステリオの代名詞とも言えるのが、金魚鉢のような丸っこいヘルメットで、その独特の風貌も人気の理由ですね。映画に登場したミステリオは、コミック版のそれを踏襲しながらも全体的にブラッシュアップされ、非常に格好いい造形に仕上がっていました。

 映画の予告編では、そんな大人気の悪役ミステリオが、今作ではヒーローとして登場するという設定が明かされ、評判を呼びました。ミステリオは本当にヒーローなのか、それともやっぱり悪役なのか。放映前から数々の憶測が飛んでいましたね。

 本編冒頭、「顔のある砂の怪物が暴れた」との報告を受けたニック・フューリーとマリア・ヒルの二人の前に、ミステリオが降り立ちます。ミステリオはMCUで展開された世界とは全く別の異世界マルチバースからやって来たヒーローで、故郷の地球にて、エレメンタルズなる怪物らと戦い、家族を亡くした悲しい戦士でありました。四大元素をモチーフとする怪物、エレメンタルズは次第にその勢力を拡大し、ミステリオことクエンティン・ベックのいた地球は滅んでしまったのです。

 エレメンタルズはなおも進行を続け、次なる宇宙すなわち、MCU世界へとやって来たのでした。ミステリオは故郷の星と家族の無念を晴らすため、そして新たな世界を守るため、日夜戦っていたのです。フューリーとヒルの二人は、ミステリオと協力しエレメンタルズと戦います。ミステリオは魔術師のような技の数々を使い、宙を飛び回り、手から魔方陣を出し強力な攻撃を放ち、エレメンタルズと戦います。そんな折、ヴェネチアの街に水の怪物ハイドロマンが現れます。現場にいたスパイダーマンはそこでミステリオらと出会い、自らもエレメンタルズとの戦いに参戦するのでした。最終的に、二人はエレメンタルズの中でも最も強い強敵、モルテンマンと戦い、辛くも勝利。共闘関係を続けていくうちに、ミステリオはスパイダーマンと師弟関係のようになってゆき、ミステリオをアイアンマン亡き後の地球を任すに足るヒーローだと考えたスパイダーマンことピーターは、とあるバーにて、彼にアイアンマンの形見である超高性能メガネを託すのでした。

 しかし、ピーターが去るやいなや、店の風景は一変。ミステリオことベックはニヤリと微笑み、店にいた客らが歓声を上げ、ここでネタばらしが入るのです。まず、ミステリオなどというヒーローは存在しません。ミステリオというヒーロー、ミステリオの放つ魔術めいたもの、そのすべてが、高性能ホログラムによって映された幻覚だったのです。また、ミステリオことベックの地球が、エレメンタルズによって滅ぼされたという上記の物語はすべて嘘。エレメンタルズもまた、ミステリオの作り出した幻覚に過ぎません。そう、すべてはミステリオの仕組んだ大規模なマッチポンプ計画だったのです。

 クエンティン・ベックは、アイアンマンことトニースタークが社長を務める、スタークインダストリーズの元社員で、高性能ホログラムの開発者でした。トニースタークはこの発明を記者に発表する際、自虐の意味をこめて酷い発明だと言い、この技術を「BARF」(ゲロ)と呼称し、せいぜいセラピーマシンぐらいにしか使えない技術に大金をはたいてしまった、と発表しました。開発者のクエンティンは、自身の発明をコケにされたことに憤慨し、夢の技術であると社長に直訴しますが、トニースタークは彼を狂っていると言って解雇。ベックは路頭に迷うこととなるのです。ベックは同じくトニースタークによって自身の尊厳を否定された被害者らを集め、チームミステリオを結成。各人が作業を分担し、皆で協力して虚構のヒーロー、ミステリオを作り出し、トニースタークへの復讐を図っていたのです。ある人はヒーロー然としたミステリオの衣装をデザインする役目、ある人はニック・フューリーを騙せるような物語(上記の嘘物語)を考える役目、ある人はミステリオの活躍にリアリティを持たせるためのサポートの役目、と各人が各々の役割を担っていました。まさに劇団ミステリオともいえるこのチームが作り上げる虚構のヒーロー、それがミステリオだったのです。

 彼らの目的はただ一つ。アイアンマンの形見である、超高性能メガネを手に入れること。そのメガネは、世界中のありとあるインターネットにアクセスし、どんな情報も意のままに手に入れることが出来るほか、何百もの軍事ドローンを操作できる禁断のアイテムだったのです。このドローン軍団とホログラム技術を使い、大規模な破壊活動をする、さらに強大なヴィランと、それに立ち向かうヒーロー、ミステリオの存在を世界に知らしめ、アイアンマン亡き地球における「次のアイアンマン」になろうとしていたのです。当然、強大なヴィランの破壊活動を再現するため、軍事ドローンを用いた大規模破壊がなされ、大勢の人が死ぬことになります。真相を知ったスパイダーマンはミステリオを止めるため、彼に立ち向かうのでした。

 ミステリオの正体が明かされた中盤のバーのシーンは、未来永劫語り継がれるべき、映画史に名を残す圧巻の出来。スパイダーマンの師匠として数々の困難に立ち向かうヒーロー然とした前半から、私利私欲のため大勢の被害をいとわず破壊活動を行う残忍かつ狂った悪党である後半への、がらりと変わる演技が非常に巧く、当時見たときはその演技力に心底震え上がりましたね。もうなんというか、涙がボロボロボロボロ出てきて、こんなに悪役の登場シーンで感動したのは未だかつてありませんでした。演じたジェイク・ギレンホール氏は、心優しい主人公からイカれた狂人まで、幅広く役をこなすカメレオン俳優で、今作のクエンティン・ベックの持つ二面性をも見事に演じてくださいました。

 ジェイク・ギレンホール氏が、バーの演説のシーンにて、トニースタークの動きを参考にしたというのは有名な話。クエンティン・ベックはチームミステリオを率いるリーダー的存在であり、先導者でありますから、彼は観衆の目を引きつけ、心を掌握するようなそんな魅力的なスピーチをしなければなりません。その際に無意識のうちに、自身の最も憎むトニースタークの演説力を取り入れているという皮肉。シビれます。

 一方で、スパイダーマンを演じたトムホランド氏もまた、演じるに当たってトニースタークの動きを参考にしているのです。スパイダーマンはアイアンマンの意思を受け継ぐヒーローの一人でありましょうから、それを意識してのことなのでしょう。主人公悪役両方が同一人物の動きを参考にし、それぞれにそれぞれのキャラクターの物語性が見えてくるのが、絶妙だなと感心しましたね。

 ミステリオは、ホログラム技術以外にも、大きな武器を一つ持っています。それは、「話術」です。クエンティン・ベックは、フューリーやヒルをその巧みな話術で騙した上、スパイダーマンの心をも掌握し、彼から敬愛と尊敬のまなざしで見られるようなそんなヒーローを見事に演じきり、見事彼からアイアンマンの遺産を手に入れます。正体がばれ、スパイダーマンと対峙するようになってからは、スパイダーマンが心に抱える不安につけいり、自己肯定感を下げさせた上で、心理的に追い詰める。徹底的なまでの話術は、ミステリオの持つホログラム技術の幻覚と相乗効果をなしてスパイダーマンに襲いかかり、大変な脅威となりました。

 スパイダーマンに正体がバレたと判明したシーンの狂人っぷりも、実に素晴らしかった。ウィリアムの不手際でスパイダーマンに自身の悪行の証拠が渡ったと知ったとき、ウィリアムに向かってはなった言葉 “One day, after I’ve had to kill Peter Parker because of this, I hope you remember that his blood is on your hands!” ってめっちゃ最高のセリフじゃないですか? まずもってジェイク・ギレンホールの演技が冴え渡っていましたし、クエンティン・ベックが、ウィリアムのミスに並々ならぬ怒りを持っていること、スパイダーマンを殺すことをやむなしと考えていること、本当ならスパイダーマンは騙し相手というだけで殺したくはなかったこと、そのすべてがこのセリフに詰まっており、絶妙なミステリオの立ち位置を巧みに表しています。

 本作中盤のスパイダーマンとミステリオの戦いは圧巻でありました。ミステリオは、言ってしまえばホログラム技術を見せるだけでなんの攻撃手段も持ち合わせていないわけですが、スパイダーマンに、柱に映し出した幻覚を殴らせ逆に腕を痛めさせたり、幻覚で追い詰め線路の上に誘い出し列車事故に巻き込んだりと、幻覚を使った一種のカウンターアタックが見事でありました。またミステリオの作り出す、右も左も分からなくなるような幻想的な幻覚の数々と、上記カウンターアタックの絶妙なマッチが見事。またミステリオの幻覚の何でもあり感も、見ていて実にすがすがしいものでした。ミステリオが幻覚を使ったときに、マイクを使ってか、ややこもった声でスパイダーマンに囁きかけるのですが、その声が実に魅力的で、ミステリオの世界にのめり込んでしまいます。中でも最後の “I control the truth. Mysterio is the truth!” は、後述の「人は見たいものを信じる」というミステリオの行動原理も相まって、非常に好きなセリフ。

 ミステリオは本作終盤、イギリスロンドンにてスパイダーマンとの最終決戦に挑むのですが、スパイダーマンの持つ能力「スパイダーセンス(攻撃を察知し避ける “第六感”)」が復活したことで、倒されてしまいます。この最終決戦は、前述の幻覚戦闘のシーンとはガラッと異なり、大量の軍事ドローンとの対決とやけにリアリティがあり、良い対比になっていたと思います。 “Fire All The Drones Now!” と鬼気迫った表情もかなり好きなシーン。最終的に、ミステリオはスパイダーマンに敗北し、彼からだまし取ったアイアンマンの形見の高性能メガネを返します。と思いきや、「メガネを返そうとしているベック」もまた幻影であり、隙を見て横からスパイダーマンの頭を銃で撃ち抜こうとしていたベック。スパイダーマンはそれすらもスパイダーセンスによって見破り、ベックは倒れるのでした。最後の最後まで意地でもスパイダーマンを倒そうとする周到な悪役であり、幻覚使いとして申し分ないキャラ造形に唸らされました。

 これでミステリオの暗躍も終わりか、と思いきや、なんとエンドロール後の映像にて再登場。ミステリオは死の間際に一本のビデオテープを残していました。それは、「今回の軍事ドローン騒動はすべてスパイダーマンが仕組んだことであり、自分はそれを止めようとしたヒーローである」という内容。マスコミを使ってこの情報を大々的に報じさせ、死んだ後でさえなおもスパイダーマンを苦しめるその手腕は、恐ろしい物がありました。そしてさらにミステリオは、スパイダーマンの正体を写真付きで明かし、いやはや、どうなってしまうのかというところで映画は終了します。悪役としての存在感が大きく、最後の最後まで手を抜かずスパイダーマンを引きずり落とそうとする、狂気の悪役でしたね。

 ミステリオの魅力を語る上で、MCUの歴史は欠かせません。スパイダーマンファーフロムホームは、23作品に渡る大長編映画シリーズMCUのサーガ1最後を締めくくる物語であり、アベンジャーズエンドゲームの後の世界を描いた物語です。アベンジャーズエンドゲームもまた、MCUシリーズの集大成、というべき作品ですので、まずはさらっとMCUをおさらいしておきましょう。その中で、ミステリオの魅力にも触れていければと思います。

 MCU(マーベルシネマティックユニバース)シリーズの1作目となったのが、アイアンマン。当時からマーベルの中でもビッグ3と呼ばれるくらいには人気でしたが、世界的な認知は(スパイダーマンや、他社のコミックヒーロー:スーパーマンバットマンに比べ)さほどなく、なかなかに奇をてらったキャラクターチョイスでありました。これはおそらく、アイアンマンの持つリアリティによるものが多いのではないか、と思っています。アイアンマンは、米軍の軍需産業を担うスタークインダストリーズの社長トニースタークが、テロの誘拐にあい、テロ組織の基地にて自社のミサイルを多数発見し、自社製品が横流しされテロ活動に使われていることを知ります。自らの手で人々を守るため、彼は自らが戦うヒーローとなるため、装着型のアーマーを作り、自らがそれを着て戦うのです。これが、アイアンマンの誕生です。テロ組織や軍需産業、この辺りの設定は、現代人にもすんなり理解できますし、パワードスーツというフィクション要素を除けば、非常にリアリティある設定となっています。またトニースタークは酒癖や女癖の悪い中年男性といったキャラクター像で、これもまた、一般人により近い立ち位置のヒーローを描いています。マーベルは、超人的な力を持った超越的存在としてのヒーローではなく、人として葛藤を抱え続ける人間味あふれるヒーロー像を確立するため、よりリアリティを求めた設定のアイアンマンから、このシリーズを作り上げたわけですね。そうした下地を作った後で、MCUは視聴者層のもつ「リアリティ」の幅を徐々に拡大していきました。第二次世界大戦を舞台に「時代」の拡張を行ったキャプテンアメリカ、科学技術の失敗により生まれた「怪物」を描いたハルク、宇宙を舞台に「場所」の拡張を行ったマイティーソー、宇宙と地球の大戦争を描いたヒーロー大集合映画アベンジャーズ。そしてそれはどんどんシリーズを進めるごとに加速してゆき、ドクターストレンジのミラー次元やアストラル次元、アントマンの量子世界、サノスの持つインフィニティーストーンと、もはや何でもありの世界。少しずつ視聴者の「リアリティ」を拡張しながら、物語を描いてきたわけです。

 そんな、観客の持つ「リアリティ」観が麻痺したところに登場したのが、このミステリオというヴィランです。結局のところ彼は、キャプチャースーツを着て指示を出すただの中年男性、なんの特殊能力も持たない一般人に過ぎません。しかしながらその卓越した技術と話術で、劇中登場人物だけでなく、観客すらも騙してみせたのです。

 ミステリオことクエンティン・ベックは、スパイダーマンに言います。「人は信じたいものだけを信じる」と。MCU世界の人々からすれば、世界の半分を失ったその空白の5年間という辛い時期は、暗く悲しい期間であったはず。その反動もあってか、「人々を守ってくれる万能のヒーロー」ミステリオが登場すれば、ミステリオという虚構の存在を、自然と信じたくなる、という心理をついた発言です。しかしながらこれにはもう一つの意味があって、それはすなわち、我々観客すらも、「信じたいものを信じる」のだということですね。ミステリオというキャラは、魔術飛行能力なんでもあり。そんなリアリティの欠片もないヒーローだけれども、10年以上にわたりMCUを見、感覚が麻痺しまくった観客にとって、ミステリオは信じたいヒーロー像であり、思わず味方だと騙されてしまうような、そんな造形が、素晴らしい悪役でした。

 ミステリオの魅力の大きな一要素として、それまで作り上げてきた物語を、その根底からひっくり返した、という点が挙げられるでしょう。MCUの立役者、アイアンマンことトニースターク。演者のロバートダウニーJr.についての話は、有名でありましょう。彼は父親の影響で若いうちから薬物に手を染め、刑務所にいたのです。当時彼がトニースターク役として抜擢されたのは出所して間もないころでしたから、周囲は彼を疑問視していました。しかしながら彼は、アイアンマンというキャラを、トニースタークというキャラを見事に演じきり、好評を博すこととなるのです。というのも、トニースタークというキャラ造形が、非常にロバートダウニーJr.自身の生い立ちとよく似ている、というところがありました。トニースタークは、偉大な父親を持ち、その子供ということで周囲からの期待が重圧となって推しかかっているような、そんな人物でありました。自社の武器が横流しされテロ活動に使われる、という大いなる過ちを犯した彼は、更生を誓い、ヒーローとして第二の人生を歩み始めます。時には酒依存やパワードスーツ依存といった依存症に悩まされながらも、成長していく姿が描かれています。一方のロバートダウニーJr.もまた、ロバートダウニーという偉大な父を持つことから来る重圧に苦しめられた人物です。薬物に手を染めたという過ちを正し、俳優という仕事に真摯に向き合い始め、薬物依存や酒依存にも悩まされながらも、役を通して成長していったわけです。アイアンマンとは、トニースタークの更生の物語であると同時に、ロバートダウニーJr.の更生の物語でもあるのです。

 そんなトニースタークも、劇中では時には償いきれない過去の負の遺産が首をもたげてきて、自分の悪しき過去が生んだヴィランと戦うこともあります。彼は自己中心的で、女癖が悪く、人の尊厳を平気で踏みにじるようなそんな人間でしたから、多くの人から反感を買い、敵をたくさん作った人物でもありました。いつだって敵と戦うときは自分のやって来たことの尻拭い。人のため世のために自己犠牲を払うことなど、当初は考えられないような人物でありました。そんな彼が、最後にはサノスとの決戦にて、自己の命と引き換えに地球を救うのです。自己中心的で独善的だった彼が、最後には世界の平和のため自らの命を落とす。先のロバートダウニーJr.とトニースタークとの重ね合わせも相まって、最後のこのシーンは「トニーそしてロバートダウニーJr.の成長譚の集大成」といった様相をていしており、アイアンマンは最期に「真のヒーロー」になった、とも言える感動的なシーンでありました。

 しかし本作は、この感動のラストを、22作品を締めくくる壮大な物語を、その根底から覆したのです。ミステリオことクエンティン・ベックは、先述の通りトニースタークの元部下であり、彼によって尊厳を否定された被害者の一人。しかもベックがトニースタークの被害に遭ったのは、トニースタークがアイアンマンとして、ヒーローとしてバリバリに活躍している時期。アイアンマンのヒーロー性というMCUのテーマを根底からひっくり返す一撃。アイアンマンのヒーロー性を描いたアベンジャーズエンドゲームと、真っ向から否定したスパイダーマンファーフロムホーム。この対比が見事で、試みが実に大胆。あくまでアイアンマンを「最高のヒーロー」として描くことなく、最後まで「人間くさいヒーロー」として描くMCUの危ない綱渡りが功を奏した例と言えましょう。この大胆さには、単純に賛辞を送りたい気分。

 アイアンマン関連で言えば、劇団ミステリオの一員、ウィリアム。彼はMCU第一作アイアンマンのヴィラン、オバディアの部下として登場し、その後一切登場していないモブキャラのような存在でしたが、まさかの再登場。オバディアに加担したことであっさり解雇されたということなのかもしれませんね。彼はいわば、オバディアに叱られていたダメダメな部下。アベンジャーズエンドゲームが、ヒーローヴィランともに洗練されたビッグネームによる総集編とすれば、司令官であるところのフューリーやヒル、タロス、ハッピーやそして敵ならばウィルソンといった、最前線から一歩退いた者たちによる裏総集編といった趣を呈している印象。エンドゲームでは描ききれなかった23作品分の厚みが込められていた配役は、嬉しいものでした。ウィリアムはほんとなんの活躍もしないモブ中のモブでしたが、オバディアに叱られているシーンは印象に残りやすく、不意打ちの登場にもかかわらず皆が覚えているような、そんな絶妙な役どころを持ってきたのは名采配だったと思われます。

 インフィニティーウォーのラスト、サノスのスナップによって宇宙の半分の生命が死滅し、ヒーローもまた半分になってしまったアベンジャーズ。彼らがいかにしてヒーローらを復活させ、サノスを打ち倒すのかについては様々な憶測がなされていました。マーベルスタジオは、作品の情報を一切漏らさず、映画のタイトルすら公開しないという徹底ぶりでありました。パパラッチを通して撮影現場の状況がリークされ、これまでMCUに登場したキャラクターたちが再登場するということが明かされるとともに、これまで「死んだ」はずのキャラクターまでもが出演するという情報が流れてきました。ここから様々な考察がなされていったのですが、その中でも最有力だった二つの説が、「アントマンの量子世界の技術を使い過去にタイムトラベルし、どうにかする中で過去キャラが登場する」という説と、「シビルウォーに登場したホログラムマシンで過去キャラが映し出される、という形で再登場する」という説。どちらも真実味がある説でしたが実際の答えは、前者でありました。そう、クエンティン・ベックのホログラム技術というのは、アベンジャーズエンドゲーム予想にて非常に話題に挙がった技術だったんですよね。エンドゲーム公開によって答えが明らかになると、「ホログラムマシン」の存在は観客の頭から一瞬なりを潜め、もう再登場することはないのかなと忘れられかけていたところで、本作の再登場。あれだけ話題に挙がっていただけに、ミステリオと関係がありそうと予想できなくもなかったのに、まんまと騙された、というのがまた、面白かったですね。本作は裏エンドゲームの様相を呈しているというのは先程も話したとおりですが、エンドゲーム予想で槍玉に挙がった技術がここで登場する、なんて上記の話を加味しても、実に裏エンドゲームな作品と言えるのではないでしょうか。

 ミステリオこと、クエンティン・ベックを演じたジェイク・ギレンホール氏は、こんな言葉を残しています。「ヒーローたちに教訓を与えるのが、いつもオビ=ワン・ケノービのようなキャラクターである必要はない」( https://theriver.jp/ffh-jake-last/2/ )と。スパイダーマンは、誰にでも優しく、敵をも憎まず助けようとするそんな清らかな心を持ったヒーローです。そんな彼が、人を騙し、殺し、惑わせ、それを悪いことだとも思わないような残忍な、それでいて人間味のある悪役に出会ったとき、スパイダーマンは新たな一歩を踏み出すのだと思います。そういう意味で、ミステリオは他でもない「スパイダーマンに教訓を与える存在」であり、またそれが師匠弟子としての関係でなくてもいいのだ、というのは、納得。そして、主人公を成長させる、それこそが悪役の存在理由にほかならず、「悪役」学の基本となる考えを、改めて思い出す機会ともなりました。

 いやぁ今年はとにかくミステリオの年でしたね。夏にこの映画が公開されてからは、ネットでミステリオのイラストを探したり、ミステリオのBGMを常に聞いていたり、ミステリオのデフォルメお絵かきをしたり、映画館に再び赴いたりブルーレイを見返すなどしてミステリオの魅力に何度も触れたりと、実にミステリオにのめり込んだ一年でありました。また今年は、ミステリオというキャラそのものだけでなく、演者であるジェイク・ギレンホールにハマった年でもあり、彼が出演した映画を幾つもあさっては見ていましたね。先に紹介した「ナイトクローラー」もその一つで、今作でミステリオにハマった方には特におすすめです。

 とにかく、スパイダーマンファーフロムホームをまだ見たことがない方には絶対に見てほしいですし、ミステリオを既に楽しんだ方も、またもう一度、その魅力に触れてほしいなと思う、素敵な作品、素敵な悪役でありました。来年もまた、素敵な悪役に出会えることを、楽しみにしています。

 それでは、最後にこのセリフでお別れしましょう!igomasでした!

 

   Mysterio is the truth!

 

・悪役グランプリ、ノミネート悪役リスト

電光超人グリッドマン」より、カーンデジファー&藤堂武史、怪獣

「劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!」より、ギャラクトロンMK2、ギルバリス、バリスレイダー

「スパイダーバース」より、キングピン、プロウラー、ドクターオクトパス、スコーピオン、トゥームストーン、グリーンゴブリン等

ブギーポップは笑わない」(初回三話で断念)より、マンティコア、早乙女正美

インフェルノ」より、『犯人』その他悪役(ネタバレのため名は明かしません)

スターウォーズ・ローグワン」より、オーソン=クレニック

ソードアートオンライン=アリシゼーション」より、整合騎士、チュデルキン、アドミニストレータ、ソードゴーレム

「エージェントオブシールドシーズン5」より、クリー人 カサイアス、シナラ、ルビーヘイル、ヘイル准将他

「UNFIX」より、特外

モブサイコ100 II」より、組織「ツメ」、悪霊たち

ウルトラマンガイア」より、アグル、根源的破滅招来体、怪獣

「キャプテンマーベル」より、ヨンロッグ、スプリームインテリジェンス、ミンエルヴァ、タロス、スクラル人他

ジーニーのマジックシアター」より、シャバーン

レイトン ミステリー探偵社~カトリーのナゾトキファイル~」より、アリアドネ、ルーファス=アルデバラン

仮面ライダージオウ」より、タイムジャッカー、アナザーライダー、白ウォズ、オーマジオウ他

ルパン三世(TVスペシャル)ハリマオの財宝を追え!!」より、ラッセル、ゲーリング
アベンジャーズエンドゲーム」より、サノス
文豪ストレイドッグス(第三期)」より、フョードルD、蘭堂、イワンG、プシュキンA他
「ドクターストレンジ」より、カエシリウスドルマムゥ
「劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!」より、ガオウ
「劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド NEOジェネレーションズ 鬼ヶ島の戦艦」より、クチヒコ、ミミヒコ
「ペット」より、スノーボール、リッパー、タトゥ
スパイダーマンファーフロムホーム」より、ミステリオ、エレメンタルズ
ウルトラマンタイガ」より、霧崎、ウルトラマントレギア、ヴィラン・ギルド、怪獣
「ジョーカー」より、ジョーカー
仮面ライダー01」より、滅亡迅雷ネット、怪人(マギア)
ナイトクローラー」より、ルイス・ブルーム
ダークナイト」より、ジョーカー、トゥーフェイス

「映画 傷だらけの悪魔」より、小田切 詩乃

バーフバリ 伝説誕生」「バーフバリ 王の凱旋」より、バラーラデーヴァ他

ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀 Chapter1 感想

 皆さんこんにちは、igomasです。普段はウルトラマンZの感想記事、悪役考察記事などを投稿しています。さて、先日方、YouTubeで展開されるウルトラマンの最新作、ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀Chapter1が更新されましたね。

 ウルトラマン界隈でもかなりの話題を呼んだシリーズということもあり、本ブログでも取り上げていきたいと思います。ウルトラギャラクシーファイトは、様々なウルトラマンが一堂に会して、宇宙のあちこちで戦いを繰り広げる群像劇で、前作ではニュージェネレーションウルトラマンに加え、マレーシア展開のウルトラマン、リブットの参戦が話題を呼びましたね。今回はさらに登場人物を増やし、中にはウルトラマンとはある種異種族のアンドロメロスなど、個性的な面々が登場します。グレートやパワード、コスモスやジャスティス、ネオスやセブン21といった、今まであまりフォーカスされてこなかったキャラクターが登場したことは、ウルトラ界隈でも大きく話題を呼びましたが、一方で各キャラへ描き方が雑になってしまわないだろうかという懸念の声も各所で挙がりましたね。この辺りの議論については、以下の記事に詳しく書いてあります。

igomas.hatenablog.com

  さて今作のメイン監督を務めるのは、かの坂本浩一監督。前作のウルトラギャラクシーファイトからの続投ですね。彼は、ウルトラマン監督の中でも抜きん出て、過去作品のオマージュを多く手がけており、「過去作品のオマージュならこの人」と、ある種神格化されるにまで至っていますよね。だからこそ、数々のウルトラマンが登場する今回の作品でも、監督として起用されたのでしょう。

 しかしながら、私igomasの坂本浩一監督に関する評価は世間のそれとは真逆。「坂本浩一監督は、オリジナル作品が得意で、オマージュが苦手」というのが、ブログ開設以降一貫した私の意見であります。まぁ、苦手というだけで、時にはよく見えるカットも撮られるのですが(事実ウル銀や、Zの第6話で第5話の辻本監督の大ポカを修正したりとか、所々素晴らしい仕事もしていたりしますが)、基本的には、オマージュが苦手なのだろうと見て取れます。一方で、まったくなにもないところから、一から物語を積み上げていく力はありそう、というのが現状の私の見解です。

igomas.hatenablog.com

  そんな私だからこそ、今回の新作は、幾分か温かい目で見られましたね。どうせ坂本浩一監督がオマージュ下手なのは分かっていますから、多少の粗はやむなしですからね。ある程度本記事でも、オマージュ不足の問題には触れていきますが、少なくともChapter1に関しては、さほど怒っているわけではないのでご理解くださいませ。

 それでは、Chapter1感想記事、始めて参りましょう!

 

 

Episode1

 惑星ミカリトの急激な衰え、その原因を探るため派遣された、文明監視員マックスとリブット。マガオロチの卵を発見するも、マックスは「マガオロチは既に封印されたはず」と言及します。ところで私igomas、今作がいつ頃の時間軸なのか、イマイチ把握できていないのですが、マガオロチは既に封印された、というこの発言からオーブ後と捉えてよいのでしょうか。それともこの台詞はオーブ以前に封印されたマガオロチのことを指しているのでしょうか。なにせ、Chapter1の時代設定が、「ウルトラマンリブットが文明監視員だった時代の物語」としか説明されていないので、物語の根幹そのもの(いつの時代か)があやふやで、見ていてストレス。劇中でなにかしら時代背景を示してほしいものです。

 一応、時代考察の鍵として、いろいろ考察要素はありますね。グレートの動きがテレビ当時と比べやや上達しているように見えなくもないことから、グレート後ではあるのだろう、とか、惑星カノンに木が生えていることからオーブオリジンサーガ前だろう、とか。とはいえそういった考察要素も、坂本監督がオマージュ不足なだけなのかちゃんとした考察要素なのか判別がつかないので、なんともいえません。というかそれ以前に、やはり「いつ」の情報が明示されないのは作品の作り手としてまずかろうとは思いますね。作り手として時代背景を明記することは、あまりに基本中の基本です。

 ヘルベロスが登場し、マックスとリブットは応戦しますが、そこへスラン星人が現れ、戦いのさなかマックスの体内に、ゴーデス細胞が打ち込まれてしまいます。ここでゴーデス細胞と来ましたか。これを意識してのYouTube配信だったということでしょうか。なるほど過去作の要素の使い方が豪快。

 ところで、ゴーデス細胞がなぜそんなにもナチュラルに存在しているのでしょうか。ゴーデスってすでに倒されているはずで、ゴーデス細胞自体どこからも収集できないはずなんですよね。のちに、スラン星人は実はアブソリュートタルタロスからゴーデス細胞を得ていたとわかるわけですが、それにしてもタルタロスさんはどこから調達したのか。過去に戻って回収した、なら分からなくはありませんがそれだったら過去でそのまま暗躍していればいいわけで。マガオロチの調達も同じくですね。ここらの描写がしっかり描けるようになると、物語に臨場感が増してより面白くなると思うのですが。過去要素をただ出してみた、感が強く、まぁいつもの坂本監督。

 一方惑星カノンでは、ユリアンとソラがイザナ女王と面会していました。ソラ、というのはウルトラマンフェスティバル2018のライブステージにて登場したキャラクターですね。仲睦まじく話す二人に、突如ルーゴサイトの攻撃が。ソラがバリアーを張りユリアンを守ります。ソラ、ルーゴサイトくらいの攻撃ならかろうじて防ぐことができるということで、そこそこ強いことが判明しましたね。結局、ルーゴサイトは駆け付けた80によって撃退され、彼方へと逃げ去っていきます。ルーゴサイト、R/B本編ではロッソとブル2体のウルトラマンを圧倒したわけですが、まぁロッソとブルはあくまで新米ウルトラマンですから、熟練の80一人で対応できる、というパワーバランスは悪くないように思えます。ちなみに当の80の動きは、正直言って微妙でしたね。80といえばスピーディーな戦いのイメージがあるのですが、全体的にもっさりしていましたし、動きも本編のそれとはやや違いのっぺりしていた印象です。このあたりも坂本オマージュの限界が見えます。
 ウルトラの星光の国に戻った一同は、スラン星人の計画、ルーゴサイトの暴走を報告。それぞれに対策部隊を編成することが決まり、ゾフィーはヒカリに、マックスの状況を尋ねます。ヒカリはマックスがいくら対抗したとしても、ゴーデス細胞の浸食を考えれば、もってあと三日だろう、と報告。ヒカリは3日以内に必ずや抗体を開発すると言い、とここでひとつ疑問なのですが、なぜマックスは3日くらい放置してゴーデス細胞に犯され続けてもいい、と皆が納得しているのか
 せめてリブットが若気の至りから今すぐにでもマックスを助けないと!と言って、タロウが、いまの君では到底太刀打ちできない、しかし君の才能なら、あの2人のウルトラマンに鍛えてもらえれば…とパワード、グレートの展開に持っていくとか、何かしらの会話は欲しかったところ。妙にマックスを3日放置することに皆が冷静なのが、どうも乗れず。抗体云々は仕方がないとしても、救出くらい早めに行ってもいいのでは、と誰も思わないのは、ちょっと。

 というかゴーデス細胞の抗体くらい、感染者が出る前から作っておけよと。一度は地球を滅ぼしかけた怪獣細胞ですから、こんな事件が起こる前からあらかじめ抗体は作っておくべきでは?なんて思ったりしますが。このあたりにもご都合主義が見え隠れして、まったく乗れず。

 さてリブットは、マックスを助けるための力を得るため、K76星に向かいます。そこで待っていたのは、グレートとパワード。二人がかりで、リブットを鍛えることに。

 

Episode2

 グレートとパワードの特訓からスタート。両者色々な技を決めるのですが、パワード批評はより詳しい方に任せるとして、グレートの動きが元と違うのが気になりましたね。一見ものすごく脇が甘く、体幹も悪いのに、なぜか隙が無くて必殺技が強力で芸達者、なところが一種グレートの良さというか味になっていると思うのですが、そういうオマージュは一切なし。今回全編を通して思うのは、「スーツアクターが当時の映像を確認していないんじゃなかろうか」と思えるようなカットが多々あるということ。坂本監督いわく、「グレートには空手の有段者がスーツアクターを務めていたこともあって、空手が動きの基本となっています」ということで、空手の動きを入れればある程度再現できると考えていらっしゃるのかもしれませんが、なんというか現場で、「当時のスーツアクター吉田沙保里レスリングの動きを使っているから浜口京子を使えば大丈夫」みたいな安直さがなければいいな、と思っています。同じ競技内であっても、人によって動きは全く異なりますし、その細かな差を再現するのがスーツアクターの仕事だと思っているのですが。今回はグレートがグレートに見えませんでしたね。コアなファンであればあるほど、こういった、「なんだか動きが違う」ところにいちいち引っかかってしまって、安心して見られないのではないか、とも思えます。まぁ坂本オマージュの限界というのはこういうところで出てくるのだな、と納得。

 一応、「ゴーデスとの戦いの後だから、前よりグレートの動きが上達しているのだ」なんて言い訳もできるかもしれませんが、それにしてもあまりに動きが似ていないように思えます。またそもそもこの戦いが「テレビ本編のグレート後」であるという説明もない上に、今作がテレビ本編後なら先述の議論、ゴーデス細胞をどこで手に入れたのか、なぜゴーデス細胞の抗体を作っておかなかったのか、などの問題も浮上してきますから、問題が山積み。

 場面は変わり、ルーゴサイト迎撃。ネオスとセブン21が、怪獣ルーゴサイトに自己紹介しますうん、なぜ? まぁ、自己紹介しないと視聴者がわかりませんからね、見せ方云々の話は置いておきましょうか。ネオスとセブン21、80の三人が、ルーゴサイトと戦います。そこへアブソリュートタルタロスとレイバトスが現れ、レイバトス、太った? さすがにこれは擁護しがたいレベルでダサくなっており、思わず失笑しました。レイバトス、もう少し大悪党かと思っていたのですが、「やれ」と言われて従うレベルの小悪党だったようです(笑) 残念。

 舞台はK76星へと戻り、とそういえば今作は監督曰くスペースオペラとのことですが、星から星へ移った時のワクワク感とか、皆無ですね。うむむ、どの惑星もただの平地で代わり映えがしないってのも、考え物。

 さてグレートとパワードの特訓シーン。リブット覚醒、一瞬。文字で「リブットが覚醒しました」と言われても大差ないくらいの淡白さ。しかもリブットのある種象徴ともいえるような武器でさえ、グレートパワード両人からもらったものだったという。なんの盛り上がりもなければワクワクもない強化。一応、リブットって主人公だった覚えがあるのですが、この扱いの雑さはなんなのか。

 場面が変わり、80先生、ギマイラに苦戦。80先生、まさかの弱体化。80ファン悲しむだろうなぁ。そこへ助けに来たのが、コスモスとジャスティス。80は、「君が慈愛の戦士か」と感心し、出た、「慈愛の戦士」だから戦士じゃないんだって笑 コスモスは、怪獣を退治しない、共存を目指す作風が特徴的で、そのスタンスから、「慈愛の勇者」の二つ名をもつウルトラマンです。それが、なぜか坂本監督がオマージュするといつも「慈愛の戦士」呼び。二つ名を間違えてどうする坂本監督。
 コスモスとジャスティスはルーゴサイトと交戦。二人はフォームチェンジし、コスモスはなんとフューチャーモードに変身します。スペースコロナモードとフューチャーモードは、なぜか本編終わって以降まったく姿を現していなかったので、久しぶりに見られたのは良かったですね。コスモスとジャスティス、二人が並び立つカットが入り、ちょっと待ってフューチャーモード待って体勢前のめりすぎないか

 分からない方にもわかりやすく書きますと、コスモスって基本太極拳の動きがもとになっていて、太極拳のもっとも基本的な要素の一つに、体幹がしっかりしている、というのがあるんですよね。常に体は地面と垂直まっすぐでなければならなくて、試しにインターネットでコスモスのフィギュアを調べてみてください、そのほとんどが、面白いくらい背筋がピンと張ってまっすぐなはずです。太極拳スタイルのコスモスにとって、体幹がしっかりしているのは基本中の基本。それが、コスモスを紹介するこの象徴的なカットで全くできていない。体勢は前のめり。こぶしを突き出しすぎてやや姿勢が右に傾いている。これは、さすがに素人の私でもわかります、ひどい。自分はオマージュができませんと大声で言っているようなものです。さすがにこのシーンは看過できませんでした。
 コスモスって全体的に戦闘シーンを撮った後、その映像をスローにしてコスモスの独特の動きを作っている、というのをメイキングで見たことがあるのですが、そういったオマージュも一切なく、とにかくウルトラマンがショーのようにわちゃわちゃしているだけ。いうまでもありませんが、戦闘中のコスモスの体幹は、実にひどいものでした。

 まぁ、この程度のオマージュだということは始まる前から分かっていたことなので、別に私は怒ってはいませんが、それにしてももう少しやり方はあったのでは、と言いたい。

 

Episode3

 ルーゴサイトは合体光線で倒れ、アブソリュートタルタロスが現れます。

 一方リブットはマックスに抗体を打ち込み、マックスは回復しますが、マガオロチが復活してしまいます。マックスのもとへゼノンが駆け付け、マックスにマックスギャラクシーと光の力を与え全回復。マックスとゼノンが、ともにマガオロチに立ち向かいます。

 ここからいつものごとく、主題歌、光線打ち、怪獣がたいした応戦もせず的状態、怪獣倒れる、というお決まりのパターンなわけですが、マックスの戦闘で主題歌が流れたことってありましたっけ。なにぶん記憶にないため、ものすごく違和感。テレビ本編全話通してみても、マックス戦闘中にマックスの主題歌が流れたことって結構少ないんじゃないでしょうか。ゆえに主題歌を流してもどこか疎外感があるという、オマージュをしようとしてオマージュできてないというか、なんというか。

 コスモスサイド。アブソリュートタルタロスの攻撃を防いだコスモスとジャスティス。二人が合体しウルトラマンレジェンドに。光線技を放つや否や、これでは分が悪いと思ったのかタルタロス。早々に逃げていきます。が、そもそもタルタロス、わざわざレジェンドが出るほどの脅威なんでしょうか

 アブソリュートタルタロス登場からレジェンド変身までの流れがあまりに走り気味で、実は80先生らがもうちょっとじっくりしっかりがっつり戦っていたら結構善戦していたんじゃなかろうかとか、そういう余地がかなり残っており、レジェンド登場のインパクトが薄れてしまった感はありますよね。80先生らがギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って、それでもどうにもこうにもならないそんな時にウルトラマンレジェンドが出てきたら、見てる側は純粋におぉ〜と楽しめるのですが、アブソリュートタルタロスがどれほどの脅威なのかというのがいまいち不鮮明なままレジェンドが出て来てしまったがために、どちらかと言えば伝説の安売りに見えてしまった感は否めません。

 マガオロチ方面のウルトラマンたちも、各種光線技で怪獣らを殲滅し、無事作戦は終了。光の国に戻ってきた一同。リブットとソラはギャラクシーレスキューフォースに入隊を命じられ、そこでイザナ女王、アンドロメロス、グクルシーサーと出会い、Chapter1終了。

 グクルシーサーは、地球の、日本の、沖縄の守り神なわけですが、なぜギャラクシーレスキューフォースに入っているのか、なども描かれるとよいですね。

 

〈まとめ〉 

 ということで、Chapter1でした。見返してみると結構粗も目立ち、オマージュもところどころひどいものでしたが、まぁこんなものでしょう。コスモス、グレート、パワードあたりの、どうも動きに癖の強いウルトラマンは、だからこそこれまで他の監督人が手を付けてこなかったわけで、それを率先して無理に描こうとすると、どこかで破綻が生じてしまうのも致し方ないことなのかもしれません。オマージュができないなら、そっとしておいてあげましょう。

 とはいえ、過去怪獣のスーツの状況などを知ることができたのはありがたかったですね。一時期ホロボロスはグクルシーサーの改造ではないかなんて言われていた時期もありましたが、グクルシーサー、しっかり残っていましたね。それからイザナ女王も残っていて、良い。ギャラクシーレスキューフォースとして、いろいろ今後の作品でも展開できそうですよね。アンドロメロスなどのマイナーヒーローはほんと、焦点が当たることすらなかったので、今後どう描かれていくか楽しみです。今回ほとんど盛り上がりもなかったリブットも、次回作以降主人公としてまともに描かれてくれると嬉しいです。

 本編と思わず遊園地のヒーローショーとしてみてみれば、結構しっかりした出来で、とにかくマイナーヒーローの活躍が見られたのも微笑ましい。80とギマイラの画はぜひとも見てみたかったので、これが見られたのもうれしいポイント。それから、思いのほかソラが魅力的に描かれていたように思えます。まったくの戦闘民でないにも関わらず、あのルーゴサイトの攻撃をしのいだわけで、結構おいしいところ持っていきましたね。ヘルベロスは、いかにも番犬といった出で立ちなので、今後も雑に用心棒として使えるいいポジションを確立しています。レイバトス、太ったのが少し気になりましたが、過去編などには今後も出しやすいのかなと思いますね。

 さて次回、いよいよ本番Chapter2。今回のように甘くはいきません。良いところはいい、悪いところは悪いとはっきり言わせてもらう所存です。ご覚悟を。

 とりあえず現状、坂本浩一監督に最も送りたい言葉は、

歴代ウルトラマンたちの魅力を再発見してほしい

参照:『ウルトラギャラクシーファイト』最新作、坂本浩一監督が語る大いなる陰謀「歴代ウルトラマンたちの魅力を再発見してほしい」 (1) | マイナビニュース (mynavi.jp)

ウルトラマンZ第15話感想 劇薬てんこ盛り

 皆さんこんにちは、igomasです。ウルトラマンゼット第15話感想、やっていきましょう。今回登場する怪獣は、虚空怪獣グリーザ

 グリーザは、ニュージェネレーション3作目、ウルトラマンエックスのラスボスを飾った怪獣で、その圧倒的な強さにより、視聴者に強烈な記憶を植え付けた、伝説級の怪獣です。その存在は虚無。無ゆえに、こちらからの攻撃は通らないが、グリーザからの攻撃は通る、近くにいるだけで、無のオーラ(ダークサンダーエナジー)で並の怪獣が発狂して暴れ出す、と、設定だけでもかなりの強豪。劇中では、UNVERネバダ支部を一瞬で破壊、Xio海上艦隊をも軽々と撃退し、主人公達のいるXio日本支部を襲撃。最後にはウルトラマンエックスを倒し、サイバーゴモラや戦闘機などの援軍もあっさりと退けたその絶望感は記憶に新しく、まさに平成のゼットンとも言える大活躍を見せてくれました。

 またグリーザはその奇妙な動きと多彩な技の魅せ方が素晴らしく、特撮面でも高い評価を受けた怪獣です。グリーザの光線はかのスペシウム光線を描いた飯塚定雄氏が手がけており、圧巻の出来となっています。また本編でも述べますが技が非常に多彩で、中には胸部から無数の手が伸びてくる、といった奇妙なものもあります。この技の数々が、グリーザの魅力を押し上げていると言って良いでしょう。

 そんなグリーザは、私igomasがニュージェネ世代で最も好きな怪獣の一体で、それだけ思い入れもある怪獣です。並の画では満足しませんよ、田口監督。素晴らしいグリーザ戦を見せてくれることを、期待しています。

 今回は、かの第7話を越える劇薬てんこ盛り回ということもあり、どれだけ上手くこれらの要素を捌いていけるかが、鍵となりそうですね。それでは早速、本編を見て参りましょう!

 

 

《第15話》

 冒頭、朝倉リクのカットからスタート、宇宙船がグリーザの異常な数値をキャッチ。一方地球では、工事員が雑談中、不敵な笑い声が響き渡り、いよいよ満を辞して、グリーザ登場。OPが始まります。今回の監督は、先述の通りメイン監督の田口監督。前回ブルトン回でたぐいまれなる日常パート力を見せつけてくれたわけですが、今回はどんな画で魅せてくれるのか。
 OP明け、ストレイジではハルキとヨウコ先輩の腕相撲シーン。「筋トレが、筋トレが足んないんだぁ〜」とハルキがダンベルを掴むや否や、ヨウコ先輩もダンベルを手に取り、楽しげ。隊員達ののほほんとした雰囲気、というのは、一つには主人公達のキャラ付けという役割もありますが、後から現れる脅威、絶望との対比、という役割も持っていますよね。和気藹々とした楽しげな雰囲気が、一転して絶望へと変わる。ウルトラマンレオシルバーブルーメ回に代表される演出の仕方ですが、こういう強豪怪獣登場回とは相性が良い。
 ユカは作業中の工事員の失踪をヘビクラ隊長に報告。ヘビクラ隊長もまた、この失踪事件を重く受け止め、捜査の必要性を感じます。
 更なる筋トレのため外に出たハルキは、地下駐車場のようなところで、リクからの通信を受信。ブルトンを倒した影響で、宇宙の穴、グリーザが出現したことが判明します。

igomas.hatenablog.com

 直後、空中に第一形態のグリーザが現れ、第二形態に変化し着地。グリーザ、着地とともに周囲のビルをなぎ倒す様が、実にかっこいい。
 一方のストレイジも、このグリーザ出現を観測。キングジョーは未だ復旧せず。「ならウインダムで出ます」というヨウコをすぐさま静止し、「死ににいくようなもんだ」、と言うヘビクラ隊長のその顔つきからも、グリーザのヤバさが伝わり、好演出。
 言わずもがなですが、今回のグリーザ特撮がもう最高で、第二形態の不気味な飛び方、時には第一形態へと変化しながらビルを破壊してゆき、と凄い特撮技術。やはり惜しみない破壊は良いですね。
 到着したリクとハルキは、グリーザ迎撃に向かいます。この同時変身もまた圧巻で、ゼットとジードの変身カットを上手く融合させた良演出。ゼットの変身カットにジードの変身カットが割り込んだと思ったら、今度は逆にゼットの変身カットが割り込んできて、と、めくるめく凝った演出が素晴らしい。
 続けてグリーザ第二形態との戦闘シーン。これもまた圧巻ですね。その存在が「無」ということもあってか、ゼット、ジードの攻撃をいともたやすくかわし、これまた謎の背中からの攻撃。グリーザは背後への攻撃も強い、ということを一目で示せるのは良いですよね。強者たるにふさわしい、良い技だと思います。平成ならではのグニュン、とした瞬間移動もかなり好きで、平成怪獣のいいとこ取りみたいな技のチョイスがほんと良いんだこれが。
 実態が全くの無、とは言いながらも、時折ウルトラマンの攻撃が当たったりするのがまた謎ですね。存在理由も発生原因も、生態も何もかもが不明で、まさに「怪獣」と形容するに相応しい。ちなみに、今回エックスの時よりかはウルトラマンの攻撃がグリーザに当たっているように思えましたね。これは意識してのことなのか、気のせいなのか。
 圧倒的な強さのグリーザに、全く歯が立たないゼットとジード。とそこへ、ジャグラーが参戦。ゴルザ、メルバ、超コッヴのメダルを使い、トライキングへと変身します!
ですよね〜
 以前の記事でも書きましたが、プレバンのダークライザーにファイブキングを構成する怪獣のメダルがついてくるのは、つまりそういうこと。

igomas.hatenablog.com

  突然のジャグラー(ファイブキング)参戦に対し、ジードがあっさり、「あの怪獣は、手を貸してくれるのか?」と仲間と認識。
 この辺りの、味方の怪獣がいるのか、みたいなテーマはグリーザ編が前後編だともう少しじっくり描けたのでしょうが、兎に角今回要素がてんこ盛りなので、一部省略している箇所があってもやむなし。ちなみに補足すると、ここでこのセリフをハルキではなくリクに言わせたのは良い演出だと思っていて、つまりジードは怪獣と共闘したことがある(グルジオレギーナ)からあっさり納得できた、ってことですよね。気配りがいい。
 とはいえ3人がかりでもてんでだめで、またまたグリーザさんお箱の豪音波攻撃で圧倒。ジャグラーさんは、闇の力、もうちょっとお借りするぜーっ、とガンQ・レイキュバスのメダルでファイブキングへと変身。グリーザを吸い込もうとするもこれも全く歯が立ちません。
 ジードはゼットに自身のメダルを託し、「宇宙の穴を塞ぐにはそれを縫う針が必要、それはあの穴の中にしかない」と言ってグリーザの中へと飛び込むのでした。ジードが怪獣の中に取り込まれるのは、キメラベロス以来ですかね。
 ジードがグリーザの中へと飛び込む直前、地味に大爆散を噛ましているジャグラーもといヘビクラ隊長。ボロボロのヘビクラ隊長が、ストレイジに帰還。心配がるヨウコ先輩とユカに、「階段で転んだ」とごまかしてますが、ごまかし切れないくらいかなりダメージ受けてまいす。
 このままではジードを助けられない、と危機感を抱く一同。悩むハルキ。とそこへ、ゼットのインナースペースが出現。驚いて飛び上がるハルキが、かわいいですね笑
 ゼットはグリーザにどう立ち向かえばいいかについて、ハルキに話します。グリーザを縫う針は、グリーザの中にしかない、グリーザの向こう側の、無の世界に行けば、ジードを助けられるかもしれない。ハルキは早く無の世界に行ってジードを、リクを助けようと言うが、ゼットはそれを静止します。「そんな簡単じゃない。無に飲み込まれないためには、理屈を超えたパワーが必要だ。それこそゼロ師匠とジード先輩、あとは、先輩のウルトラやばい父親、ウルトラマンベリアルのメダルを、組み合わせるとかな」ん?「この中には?」「ない、そもそもベリアルのメダルなんて存在しない」「じゃあ、無理じゃないすか」んんん?ここが今回の話の一番まずい部分で、いつの間にか、話の方向性のすり替えが行われているんですよね。グリーザを倒すためには、理屈を超えたパワーが必要。それに対し挙がったゼロ、ジード、ベリアル、というコンボは、あくまでゼットが提案した一例でしかなく、他にも理屈を超えたパワーを生み出すコンボはあるはずなんですよね。先例を挙げるなら、コスモスとジャスティス、とか、ゼロ・コスモス・ダイナとか、メビウスウルトラ兄弟一門とか、理屈を超えた力の組み合わせは、いくらでもあるのでしょう。本来の流れなら、グリーザを倒すために理屈を超えた組み合わせが必要→一例としてゼロ・ジード・ベリアルはどうか→ベリアルのメダルはない→じゃ持っているメダルで別の組み合わせを考えるか、と普通なるはず。しかしながらいつの間にか、ゼットとハルキの間で、ゼロ・ジード・ベリアルの組み合わせしかない、ベリアルのメダルなしにグリーザには勝てない、ということになっている。これが、話の方向性のすり替え、というやり方です。なぜこんなことをするのか、というのは考えてみれば実に簡単なことで、こうすることで「ジャグラーと一緒にベリアルのメダルを取りに行く」という後のシーンとの接続がスムーズになるからなんですよね。ゼットとハルキが、持っているメダルで究極のコンボを作り出す、というのは正直絵面的にあまり盛り上がらず、それならジャグラーと一緒にカブラギからメダルをカツアゲする流れの方がいっとう面白く、そこに接続するためには無理にでも話の方向性をすり替えて、「ベリアルのメダルがないと勝てない」かのように描こうと、こういった逆算的な考えが働いたのだと思います。こういう手法はよくやるし、あまり批判するのも酷ではありますが、とはいえこの方向性のすり替えが、今回やや露骨に思えました。もう少しスムーズな流れなら、ベリアルメダル争奪戦もより面白いものとなっていたのかも。とはいえ、尺の都合によりこうせざるを得なかった、という製作側の事情もあるでしょうから、これ以上深掘りするのは避けておきます。
 インナースペースから出てくると、そこにいたのはジャグラスジャグラージャグラーに誘われて、ついて行くことに。ハルキとジャグラーが同じ車に乗ってるのは、ちょっと、シュールですね。ジャグラーがカーナビみたいになっていたのも、コミカルで面白かったです。
 2人が向かった先は、カブラギシンヤの研究室。銃撃戦の後、あっさり捕まるメインヴィラン(笑) そして割と簡単にベリアルのメダルを渡して去るという、なんとも味気ない敗北。本人は楽しげに笑っていますが、完全にジャグラーの手の上で踊らされているわけで。所詮奴はメインヴィランの器ではなかったか……
 手に入れた3枚のメダルを手にすると、ライバル同士のメダルが共鳴して、ウルトラパワーアップ。3人のメダルが光り輝きます。ゼロビヨンド、ジード、ベリアルアトロシアス。これらを使い、ハルキは新形態へと変身しようとしますが、案の定ベリアルメダル、変身拒否
 一方ジードは無の世界にて宇宙の針に触れ、というか宇宙の針に刺されます。それに反応してか、グリーザが活動を再開。グリーザのレッキングバーストが炸裂。これがまた凄いですよね。オーブのフラフラ演出を彷彿とさせますが、ジードがゆらゆら揺れて、グリーザと共にレッキングバーストを放つ。その破壊力からも脅威が見て取れます。このシーンはかなり好きなカット。
 ハルキはゼットと共になんとかベリアルのメダルを装填し、新たな姿、デルタライズクローへと変身。凄まじい力の余波でジードがグリーザから引き離されます。
 引き離されたリクが、デルタライズクローを見て「黄金の、嵐」と急にポエマーになるのが、とてもジード。
 デルタライズクローとグリーザとの熱いバトルが展開。ゼットはグリーザの胸部から体内に手を入れ、取り出したのはなんとベリアル!ではなく、ベリアルの頭をした武器、ベリアロク。Twitterでもかなり物議を醸していた、異色の武器ですね。
 ゼットはベリアロクを手に戦おうとするも、剣が地面に突き刺さって抜けない!ゼットが「早く抜けやがりなさいよ」と言うのに対し、「一緒に戦う仲間だから」とハルキが律儀に挨拶すると、ベリアロクは再び「俺様を手にしてお前は何をする」と問い、宇宙の穴を切る、という試みに興味を持ったのか、やる気を出して共に戦います。この辺り、尺の都合もあってかベリアロクの離反とかそういう話は後回しの模様。
 グリーザ、光線を放つも、ベリアロク、食べた!ベリアロクは光線を跳ね返し、グリーザに当たって爆ぜます。この爆発も、青色の火花を使っており、綺麗な演出。ほんと綺麗な青色が出てますよね。原料は銅化合物なのかガリウムなのか非常に気になるゲフンゲフン。
 グリーザ撃退専用武器ということもあってか、ベリアロクの効果は絶大で、切られた傷口がぱっかりと開き、グリーザが余計に意味不明な怪物になってましたね。必殺攻撃をくらい、虹色の光を放ちながら爆散するカット。着地がまた美しい。
 シーン変わり、ジードライザーが修復したことで、リクはプリミティブの力を取り戻し、メダルをハルキに託すのでした。ジードが去った後の地球は、こうしてまたゼットへと託され、ハルキは使命感を胸に、エンディング。

 というわけで第15話、劇薬てんこ盛り回でした。グリーザの脅威、ジード参戦、ジャグラー参戦、新たな力デルタライズクロー、新たな武器ベリアロクと、要素があまりにすさまじく、若干強引なところや端折ったところも見受けられましたが、全体としてとても良くまとまった逸品でありましょう。今回特にグリーザの脅威が魅力的に描かれ、エックス戦に負けず劣らずの大迫力バトルでありました。エックス当時では市街地での戦いがなかったものですから(グリーザがそもそも市街地戦を装丁してデザインされた怪獣でもないのでしょうが)、今回昼夜の市街地グリーザ戦が見られたことは非常に嬉しかったですね。まぁなかなか現状では田口監督にしか描けない怪獣ということもあり、またテレビで見たい気持ちが半分、下手に使って欲しくない気持ちも半分、といった心境です。少なくとも昭和のゼットンや、平成のハイパーゼットンのような、明らかな格落ちだけは今後避けたい怪獣ですね。

 グリーザを倒す鍵となった、宇宙の穴を縫う針、ベリアロクですが、言わずもがな、これと同じ役割を果たすのが、エックスのエックスラッガーということなのでしょうね。宇宙の穴を縫う針が、エックスの因子に触れ合えばエックスラッガー、ベリアルの因子に触れ合えばベリアロク、といった形で実体化し、それによりグリーザが倒せるようになる、ということですね。恐らくは現状この「宇宙の穴を縫う針」がなければグリーザは撃退できないわけで、これもグリーザが今回強豪怪獣であり続けられた要因なのでしょう。また、エックスでは第三形態となったグリーザ、今回は第二形態の時点で、第三形態を残して敗退ということで、今回のグリーザも、展開によってはまだまだ強くなり得たと考えると、なかなかに脅威ですね。

 今回個人的にはデルタライズクロー登場時の、ジードの「黄金の、嵐」発言がツボで、結構ポエムチックな語りが劇中入ってくるジードテレビ本編を彷彿とさせ、なかなかお気に入りの台詞。個々のキャラを上手くキャラに合いそうな役回りにさせるという采配は、見習いたいところ。

 次回、新怪獣(といっていいのか、ほぼハリボテ怪獣ですが)メツボロス登場。ルーブ本編からは久しぶりの登場となりますが、次回どんな風に魅せてくれるのか、楽しみです。ベリアロクとの掛け合いも、楽しみ。

 それでは、また次の記事でお会いしましょう、igomasでした!

 

【補論】ベリアロク

 さて、今回登場したベリアロクでありますが、Twitterでも非常に物議を醸し、発表当時は様々な論争が繰り広げられていましたね。ウルトラマンベリアル自体は、初登場時から、様々なバラエティー番組でコミカルな一面を見せたり、円谷公式のウルトラマン列伝などでも、コミカルな言動があったりと、割と緩さも兼ね備えたキャラではあるのですが、それにしても今回やり過ぎではないかと、一部から叩かれていたようすね。そもそも剣に顔がついている、という絶妙なダサさが、仮面ライダー系のアイテムを彷彿とさせ、仮面ライダー特有の(良い意味でも悪い意味でもある)一種の悪ノリが、ウルトラマンにも浸食してきているのではないか、という意見もあったものです。仮面ライダーのノリは仮面ライダーで、ウルトラマンのノリはウルトラマンで、という棲み分けが大事、というのは納得。まぁさすがに今回の一件は、仮面ライダーのスタッフがウルトラマン玩具に関わったとか、そういった大きな問題ではないのでしょう。これといった確証もないですし。

 また玩具版では、ベリアロクに喋る機能がついていて、「寝る前にはこれだ!デスシウム歯磨き!」といったネタ台詞も収録されている、というのも話題になりましたね。デスシウム歯磨き、なんとも面白い響きです(笑)

 ちょっとネタに走りすぎた武器、ということで論争になったベリアロクですが、私の意見はウルトラマンギンガの頃から変わっていません。私の基準は「武器としてまともならオッケー」。

 というのも、ギンガSのシェパードンセイバーの頃から、玩具展開と足並みを揃えようという販売戦略が見え見えで、どうも劇中で使われている武器が、武器でなく玩具にしか見えない。玩具が劇中武器のデフォルメなのではなく、玩具に合わせて劇中武器をデフォルメしている。シェパードンセイバーも、剣というよりかは、結構玩具っぽかったですもんね。それ故、ウルトラマンが武器を手に戦っていても、正直玩具で遊んでいるようにしか見えず、悶々とした日々を過ごしているわけです。最新作のウルトラマンゼットでも、前にバロッサ星人回で、「武器として使っているゼットライザーの裏面の塗装省略が安っぽい」と言ったように、どうもウルトラマンの劇中武器が、安っぽい玩具に見えてしまっています。ですから、現状の私は、とにかくウルトラマンが劇中で持っている武器が、玩具ではなく武器として認識できればもはやデザインはなんでもオッケーで、ですから今回もベリアロク発表時はベリアルの頭ではなく刃の方のとがり方を見ていましたw 玩具展開に合わせて刃長が短いものの、切れ味自体は悪そうでもなく、まぁある程度は武器として見られそうだからだいたい満足、といった感じでした。

 あれっ、おかしいな。「ベリアロクのベリアルの頭についての論争」の話をしていたのに、私が頭ではなく刃の方を見ていた、という話からいつの間にか「ウルトラマンの武器の商品展開論」の話に移り変わっている。あっこれが話の方向性のすり替えか!というところで、今回の補論でした(笑)

 

ウルトラマングレート感想7~9話

 皆さんこんにちは、igomasです。かなりあっさりとですが、グレートの雑感7~9話。

 ゴーデス及びゴーデス細胞の脅威が去った後の地球でも、絶えず怪獣災害は発生しており、後半では人類の悪行やら環境問題やらの方向性で進む様子。ゴーデスがあまりに重大なポジションを占めていたが故に、後半に苦労が見えます。

《第7話》

子供は驚くほど強い生存本能を持ってる by隊長
 え、隊長ってそんなこと言う人でしたっけ?今作、隊長の立ち位置が未だ掴めず、第七話。
 文化の違いからなのか何なのか、隊長が堅物なイメージと隊長らしいイメージとが混在しており、どう捉えていいのか分かっていません。
 怪獣のデザインは、嫌いでもないが好みでもない、みたいな感じ。

 

《第8話》

グレートとの会話、他の隊員に筒抜け
 しかも仲間からは独り言扱いって……笑
 グレート視聴の中で1番楽しみにしていた回、マジャバ回。昆虫怪獣の代表格でもあり、グレートを代表する一体ですよね。どことなくマジャバの名がマガジャッパやマジャッパに似ていることもあり、親近感があります。
 冒頭、農薬に対する問題提起的な始まり方。環境問題重視のグレートらしい展開。直後、飛行機の横をビュイィンと、いやほんと、ビュイィン以外の擬態語が思いつかないくらいビュイィンと、マジャバが登場。あまりに高速で動くもんで笑ってしまいました。

 違法農薬により巨大化したイナゴがマジャバの正体なわけですが、友人の死を悼み協力しようとしてくれる、農家の太っちょさんが、使用者から絶えず妨害されるってのがこう、可愛いけども、それで尺稼ぎされてる感があって複雑。
 卵を守ろうとするマジャバが大変印象的で、けなげでしたね。巨大化戦闘は今日もあっさり目。グレートはグレートで、若干体幹が良くなった印象。

 

《第9話》

 電脳植物との対決回。とにかく展開が早く、早々にして黒幕が誰なのか、敵が誰なのかがあっさり分かってしまうのも、実にグレートらしいです。

 今回の話、電脳植物に洗脳され、特殊な酸素のもとでしか生きられない、ベゴイドという名の植物人間が多数尖兵として登場するのですが、彼らのタンクトップ姿が実にシュールで、印象的でした。ジャックシンドーにもあっさり負けるし、外の空気を吸えばすぐ倒れるしで、ウルトラシリーズでも珍しくとことん弱い尖兵。

 巨大化した電脳植物、バイオスはかなり特徴的な見た目で、グレートソフビの中でも、バイオスのソフビはかなりの異彩を放っていた思い出。

 

 以上、あっさりグレート感想7~9話でした。ゴーデス亡き後の話の展開にやや苦労している様子が見え隠れ。グレート先輩の体幹が少しずつまともになってきているのは、見ていて微笑ましいですね。

やり残したゲームの話

 皆さんこんにちは、igomasです。普段はウルトラマンZ等の各話感想や、悪役考察記事を書いています。今回は少し箸休め、ゲーム雑談です。いやはや、こういうサックリ記事はストレスフリーに書けるため、作業の合間にサッと書いてしまいがち。

 ゼット各話感想記事も、少しずつ書き上げておりますので、もうしばらくお待ちくださいませ。

 さて、普段は悪役考察も勧めている私ですが、特にゲームは、悪役の宝庫。各ステージのボス、雑魚キャラ、ありとあらゆる悪役が跋扈するゲーム業界は、私も毎年注目している一大メディアであります。今年も、あつもりやペーパーマリオオリガミキング、スーパーマリオ3Dコレクションやポケモンのソードシールドダウンロードコンテンツクラッシュバンディクー4やモンハン新作など、あちこちで賑わいを見せていますね。

 私も、そのゲーム業界の波に乗ろうと奮起したはいいものの、Switchは売り切れ、結局新作は遊べず。仕方がないので部屋の奥に埋まった過去のゲームを発掘し、昔クリアできず断念したゲームを再プレイしたりしておりました。今回は、その雑感記事みたいなものとご理解ください。昔懐かしのあのゲームや、かなりマイナーなものまで、ちょっぴり難しいゲームの数々を、振り返って参りましょう。

 

 

マリオカートDS

 何気に50ccをチンタラ走ってただけで投げ出していたマリオカートDS。せっかくなので100cc,150ccどちらも一位フィニッシュでエンディングを見たいな、と思い再挑戦。DS版はミニターボ操作がやりやすく、面白いものの、結構どのレースもシビアなもので、150ccはかなり何度も諦めかけました。なにしろ青コウラがほんと、タイミングよく来るんですよね。Wii版はやったことがあったのですが、それに比べ道の横幅も狭く感じられましたし、とにかくアイテムが飛び交って、1位をとるのが難しかったですね。ルイージの掃除機カートを使い始めてからは安定し、なんとか無事クリアできました。

 

ヨッシーアイランドDS

 言わずと知れた鬼畜ゲーム。100%クリアどころか、ストーリークリアすら至難の業と言われるゲームですね。赤ちゃんのマリオ、ルイージなどを背中に乗せたヨッシーを操作する、というゲームなのですが、ダメージを受けると赤ちゃんが泣きながらどこかへ飛んでいき、時間内に回収しないとゲームオーバー。赤ちゃんの泣き声がほんと不協和音的で、トラウマです。中には即死ゾーンもたくさんあって、いやこれは、マリオ系で出していい難易度ではない(笑)

 ワンワンが追いかけてくる即死ゾーン、ダメージを受けてなかなか上に登れない、時間制限つきの滝登りゾーン、なまずみたいなやつに食べられると即死のイカダゾーンなど、数々の難所が勢揃い。当時の私は先述の滝登りゾーンでつまづき、放置していた模様。なんとか滝登りゾーンをクリアし、その後の難所も次々と攻略、無事ストーリークリアとなりました。さすがに全クリを目指す気力は、ないですw

 翻ってみるに、結局一番の難所は滝登りゾーンだったなと。敵の配置が秀逸で、いかに登らせないか、が最適化されていました。いやはや、恐ろしいゲームでした。

 

スーパーマリオ64DS

 かの有名なマリオ64のDS版。64と異なり小型機ということもあってか、操作性がやや悪く、かなり難しくなっています。64版ではマリオしか使えなかったプレイアブルキャラが4体に増え、マリオ、ルイージワリオヨッシーが操作可能となりました。ヨッシーが操作可能とは、いやはや珍しいソフト。ミニゲームも多彩で、こちらもかなりの人気を博していましたよね。

 ボスもやや増えステージもやや増え、かなりボリュームのある作品となっています。

 全スタークリアは少し遠い道のりだったので、取り敢えずストーリークリアを目標にプレイ。当時はボム兵の戦場すら大苦戦していたわけですが、今となってはサクサクとクリア。1番辛かったのは、たかいたかいマウンテンでしょうか。操作性が難しく、すぐミスになってはスタート地点に落っこちて、何度も何度もやり直していました。

 ステージもキャラも多彩で、追加要素も満載。非常に楽しくプレイさせていただきました。

 

ブルードラゴンプラス

 超マイナーなゲームですね。皆さんご存知でしょうか?主人公達は自分の影から生み出される「影」というモンスターを使役しており、影を使いながら悪の勢力と戦う、というのが大まかなストーリー。

 今作は前作の続編であるらしく、ストーリーも前作を前提としたものになっています。ちなみに、初心者への配慮は一切ないので、ストーリーも登場人物の紹介もほとんど省略されており、プレイしている自分もまるでちんぷんかんぷんでした(笑)

 操作は、20人程度のキャラを一度に操作するというなかなか作業量の多いもので、常に各キャラに目を配りながら操作せねばなりません。操作するキャラをタッチペンで囲むのですが、刻一刻と過ぎていくバトルの中で冷静にキャラを囲めるはずもなく、またキャラが壁の後ろに隠れておりそもそも上手く操作できなかったりと、操作面でのストレスは馬鹿になりません。画面も勝手にぐるぐる動くのでやっていて混乱してきますし、ワープゾーンのあるステージでは各キャラがワープするごとにムービーが挟まるというなかなかのもっさり仕様でありました。

 さらには、主人公の拠点が敵に襲われるとゲームオーバーとなり、セーブを間違えると完全に詰んで最初のステージからやり直し、という酷な仕様。なんども挫けそうになりました。ちなみにゲームクリアしてもなんの実績(ストーリークリア、とか)もなく、なんの追加要素もなく、ラスボスに挑む前に戻されるという悲しい仕様。

 と、色々書きましたが、20人規模のチームをリアルタイムで操作し敵を捌いていく、という作業のワクワク感はとてつもなく、大変楽しめました。

 敵キャラも豊富で、キャラ図鑑を埋めていくのは楽しかったですし、隠しキャラやミッションも面白いものでした。

 かなりキャラメイク要素が強いので、色々と試行錯誤してみると面白いかもしれません。

 

エレメントハンター

 こちらもややマイナーなゲーム。化学の世界のモンスターハンター、と言うと分かりやすいでしょうか。各地に大小様々なQEXなるモンスターが出現。QEXを攻撃すると元素が吸収でき、各元素から武器を生成して戦います。大型のQEXを倒すのがゲームの目標となるわけですが、この大型QEXが強いのなんの。

 このゲームには防具強化、という概念がなく、敵の攻撃も、2連続で喰らうと死ぬ、一撃で死ぬ、といったアバウトなものとなっています。ちなみに一撃でと書いた通り、作中には攻撃を喰らうと即死の大型QEXも登場し、これを捌くのがなかなか大変なんですよね。一撃必殺技持ちのQEX、その名もオンソク。特徴はその驚異的な速さ。主人公の最高スピードでも全く追いつけない高速移動で翻弄し、最後に一撃必殺で決めてくるという強敵。高速移動故にこちらの攻撃はほぼ当たらず、一撃必殺技がバンバン飛んでくるというハードワーク。恐ろしいのはこのモンスターが登場するのが最序盤ということ。ゲームを買って初日で投げ出す、ということが十二分に起こりうる恐ろしいゲームとなっております。

 実際、私もオンソクが倒せずリタイアしていた模様。剣系の武器よりもガンナー系の武器の方ががこのゲームでは強いことに気づき、メイン武器をガンナー系に変え突破。

 他にも、ある特定の武器を持っていなければ対処しづらい大型QEXが多く、一種死にゲーといいますか、倒されながら対策を考える、というのが必要になってくるゲームかと考えます。

 ストーリーはあってないようなもので、セリフも無機的、主人公や登場人物に感情移入のしようがなく、物寂しい雰囲気となっています。というか主人公がダメージを受けたときに発する声がかなりストレスを与えるものとなっており、不評なようです。アニメもやっているそうで、第一話だけ見たのですが、これも登場人物がなかなかに無機的で、ある種味のある作品となっていました。

 さて、数々の問題児QEXを突破したものの、結局私は途中で断念してしまいました。というのも終盤頃に登場する、オオカゼノリュウで熱が覚めてしまったのが原因です。このQEX、ほとんど空中、それもガンナー系武器では攻撃が通らないほど上空を飛行しており、地面に降りてきて攻撃を当てられるタイミングがほぼほぼありません。銃系の武器に相当慣れれば、特定のポイントから的確に弾を打つことにより、辛うじてオオカゼノリュウに弾を当てることができ、辛うじて地上で攻撃可能ですが、それでもかなり体力の減りは遅いです。また、時には銃系の武器が当たらないほど上空、時にはマップ外に逃げるため、攻撃の当てようがありません。これが結構な頻度であるため、かなりストレスが溜まります。また、このゲームには時間制限があるため、それを超えると強制的にゲームオーバー。もうお分かりかと思いますが、オオカゼノリュウ攻略にはあまりに時間が足らず、本来の制限時間の3倍は欲しいと思うほど。とにかく時間もかかるしストレスもたまるし、別にこのゲームを苦労してやる必要もないと思いリタイアした次第であります。

 まぁ、今からこのゲームを始めるという方は、頑張って下さい。

 

 ということで以上、やり残したゲームの話、でした。いやはや、思い返すとなかなかストレスの溜まる高難易度ゲームばかり挑戦していたのだなと、驚きです。どれもやってみるとなかなかに面白く、ワクワク感の詰まった作品でありました。皆さんも、機会があればぜひ、部屋の奥底に埋もれてしまったゲームを再発掘してはいかがでしょう。それではまた次の記事で、igomasでした。